ヒーロー②
前回より
いちライダーとしては、やはりここを訪れておきたかった。
石ノ森萬画館。仮面ライダーの生みの親だ。
“遊びをせんとや 生れけむ”。そんなフレーズを愛した石ノ森章太郎。
『サイボーグ009』や『仮面ライダー』などを描いた偉大な漫画家は、23歳時に70日間の世界一周旅行にも出たことがあるそうだ。ある意味私の大先輩でもあるのだろうか。
彼が青春を過ごしたトキワ荘の模型もバッチリ。
石ノ森氏との関係は薄いが、連載30周年を記念してボクシング漫画『はじめの一歩』の企画展が開催されていた。
打撃戦の疾さ、鋭さ、重々しさを描いた森川ジョージ氏の芸術と数々の台詞は、仮にも格闘家である私の心にジンときた。
“努力した者が全て報われるとは限らん。しかし! 成功した者は皆すべからく努力しておる!!”かぁ…。
サイボーグ009。様々な国籍、年齢、思想の主人公が居てもいいんじゃないか、主人公は独りじゃなくてもいいんじゃないか、という発想が斬新だったとのこと。
そして我らが仮面ライダー。
サイボーグ009もそうだが、一度悪の手に堕ちたものが正義の心を手にするという物語が胸熱なのである。
いつだかの24時間テレビで放送された、石ノ森氏の再現ドラマで由恵さんが発していたセリフが思い出される。
“人は大人になるにつれて、善良だった心が少しずつ黒く染まっていってしまうもの。そんな中で、改めて正義の心を取り戻したいと思っている人は多いんじゃないか。そんな人に、人は憧れるんじゃないか。”
みたいなことを言ってた気がする。
私もウルトラマンや仮面ライダーを長年観ていた身として、彼らヒーローへの憧れは今だに抱いている。
生まれ持った才能や、正義が全てだという幼稚な思想を振りかざす子供のような大人ではなく、努力し、苦悩しながら、自分なりの道を探していった、経験を積んだ本物の大人のヒーローに、憧れているのだ。
そんな気持ちを反芻していると、ふと思い出す。
そうだ。そんなヒーローたちに少しでも近づきたくて、辛いとわかってても旅に出たんだった。
旅の目的を一つ、この場のおかげで思い出せた。
ちなみにだが、私は平成仮面ライダーを13作品は全話観ている。世代的にはクウガ・アギトだが、最初に全話観たのはオーズだった。クルーザー系バイクに憧れたのも彼のシャドウファントムに由来する。
戦火で散った命も、復興のため捧げた命も。夢を与えたヒーローも。みんな、自分なりに人々のためだと信じた道を貫いた、英雄だ。
私もいつか、そうなれるだろうか。
玄関には仮面ライダードライブの愛車トライドロンが。
駐車場で警備員に
「そのバイク、2,300㏄もあるんだ! 大変そうだね~バックギヤはないのかい?」
と言われたから、言ってやった。
「私のバイクに、バックギヤはないんですよ。」