風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

クジラなまち

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前回より

 

 

鮎川港へ到着。

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看板にクジラの絵が象ってあったので予想はしていたが、ここはかつてクジラ漁で栄えた場所らしい。

「昔は3つクジラ会社がここにあったんだけどね、ぜんぶなくなっちった。規制もそうだけど、エサがないからクジラ自体の量も減っちまったもの。」

と地元のおじさん。

 

政府が商業捕鯨撤退を宣言した昭和60年以降は、ギンザケの養殖業や小型漁船漁業に方針を転換したという鮎川は、近くに佇む島・金華山の玄関口としても栄えてきた。

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左に見えるのが金華山。金華山沖100マイルでは今も調査目的の捕鯨が行われるそう。

 

金華山とは、金をつかさどる金山毘古神などを祀る金華山黄金山神社を擁する島である。日本五大辯財天(べんざいてん)の霊地ともされるとかで、かつて女人禁制なども敷かれていたとか。

 

 

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陸にはかつての捕鯨船である第十六利丸が。

 

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ここに来たら食べておきたい鯨肉。これは、ミンク鯨の刺身定食を頂いた(1,200円予算オーバー)。

赤黒い赤身はローストビーフを少しやわらかくしたほどの歯ごたえがあり、少々臭みがある。しかし付いてきたからしを載せて食べると、爽やかな風味にかき消されかなりの美味になる。

 

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鯨の各部位は工芸品としても使われているようす。

だが、その場にいた鯨歯工芸の職人によると

「ここ33年はさ、マッコウ鯨がまったく手に入らない。だから、歯も手に入らない。今はストックしてる歯で造ってるけど、それもいつかなくなるよね。

 私は3代目だけどさ、後はもう…、わからんもん。」

とのこと。

 

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漁港を見渡すベンチでこの文を書いていると、一帯はかなり静かな場所なのだと気付く。

聞こえるのは、東日本大震災で被った被害を直す工事の音がほとんどだ。

半島の先端だからか、鯨漁が減ったからか。震災の影響か、はたまたコロナのしわざか。

釣り人こそいるものの、賑わう…。と言うことはできない場所である。

…であるのだが、不思議と私は、この状態でいい、と思ってしまった。目に収まりきらない、広い港を流れる、ゆったりとした時間。まるで鯨を見ているようなこのひと時を、また次に来たときも味わいたいのだ。

 

半島は、こういう雰囲気だから好きだ。

地元の人は、どちらを選ぶんだろな。

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