風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

時代

63

 

「ぶっちゃけて言うと、これはお母さんに取りに来てもらうしかないわ。」

「そう…ですか……。」

 

私は、とある警察署にいた。

 

 

油断していた…といっては聞こえが悪いだろうが、実際そうだった。

とある道の駅で、見回りの警察に背中にしょった居合練習刀を指摘され、署で事情を話すことになってしまったのだ。

 

「なんで今まで尋ねられなかったか、不思議ですよ。」

言われてみればごもっともだ。

強いて理由を挙げてみるとすれば、都会はそれこそ居合刀や弓を持って街を歩く人がけっこういるが、田舎では物珍しい…といったところか。

 

 

私の愛刀は、もう持ち歩けない。

 

 

「私も武道やってるからね、どこでも鍛錬したい気持ちはすっごくわかる。でもね、やっぱり道場に行くって正当な理由がない場合は、銃刀法違反になっちゃうんだ。ごめんね。」

警官の一人が、そう諭してくれた。

心のどこかでムッとしていた私も、なんとか冷静でいようと努力する。

「もし、誰かが練習してる木村君を見て通報した場合、刀を持った人に対しては30人ぐらい警官がワッと押し寄せてきちゃうんだよ。そうしたら木村君がかわいそうなんだ。ただ稽古してただけなのにさ。だから、変な話だけど今回はこれで幸運だと思ってほしい。」

まぁ…それはたしかに、そのとおりだ…。

 

 

「正直言うとさ、世知辛い時代だよね。野宿もそうだけどさ、人の目がほんとに厳しい。最近は。

 この前なんか、銃持ってる人がいる!って通報があったから駆け付けたら、エアガンで遊んでる中学生だったりさ…。」

警官が同情する演技をしている可能性も、邪推すればあるのだが。

その態度は、たしかに世知辛いと思っている様子だった。

実際、罰を課せられるところ、事情を考慮したうえで厳重注意にしてくれたあたり、手心はあるみたいである。

 

いわきからここまでは、少なくとも2時間以上はかかるであろう。

警官との会話は続く。

 

「木村君はさ、武道を研究したり、夢のため文の修行をしたりしてさ。立派だと思う。自分の可能性を信じててさ…。正直、旅人じゃなければ警官としてスカウトしたいぐらいね。」

…正直褒めすぎだと思うが、すぐ甘んじて受け入れてしまうあたり私は調子がいいのだろう。

 

だが、次の一言は言い得て妙だった。

「時代に合わせてさ、やり方を変えなくちゃいけないんだね。

今回のこともさ、修行の一つとして、乗り越えてほしい。」

…そうだ。よく考えなくてもわかる。この平和な時代に、刀を持って歩く人がいるのは恐怖である。

だがそれでも、人は刀に惹かれる。技を磨きたくなる。恐怖の対象であっても。この時代にとって、無意味と思えることであっても。手に取ってしまう。

それはなぜなのだろうか。意味があるからではないだろうか。

今現在今日の、力の、正しい使い方は、なんなのだろうか。

この時代で、剣士はどう生きるべきなのか。何をすれば、人類発展に貢献できるのか。

それを見出すのも、この旅の一つの目標となったわけだ。

 

 

変に反抗して、また捕まるのは、カッコ悪い。

それよりも、いざというときはその辺の物を利用して、対抗する。そんな技を磨いた方が、この時代ではよっぽど有意義だし、カッコいいと思った。

 

取り調べ開始から約4時間後

朝別れたばかりの母と姉に、愛刀を預けた。

今回特に残念なのは、家族の手を煩わせたことに尽きる。

 

IMG_9321.jpg

この旅のために作成した刀だ。寂しい気持ちを、隠し切れないが。

それでも、私は今後の皆のため、この時代においての刀の道を探さなければならない気がしたのである。

 

 

 

それにしても余談だが。

やはりカツ丼は、今の時代差し出してはいけないらしい!!

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