風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

追憶②

20164月ごろ。

 

 

「言っとくけどさぁ、あなたが入ってきても私ら、何も嬉しくなんかないから。」

全くの未知の地、九州は大分で、私は朝っぱらから上司に叱責されていた。ホテルの目の前で。

 

羽振りがよさそうな会社を…。ということで、私は高専の教授づてに、相模原に位置するとある医療機器メーカーに就職した。

この会社の機器は全国に分布しているため、それを保全するために私が配属されたSE(サービスエンジニア)部は遠方へ出張することもあった。

 

それで、入社して間もない頃。九州へ行く際、「せっかくだから自分で航空券取ってみなよ」と先輩に言われたので、取ってみたのだが、なにせ飛行機なんか乗ったことない身。とりあえず格安の観光用券などを買ってみたのだが、それを指摘されてこのザマとなっている。

他にもパソコンを持ってきてないとは、遊びに来てるのかとかなんだとか…。だったら、最初からそう指示すればいいものを。件の先輩もだんまりだ。

 

 

現地の病院での研修を終えた段階で、「俺らはあと1日いるけど、もう帰ってもいいよ」と上司。二つ返事で、「帰らせていただきます」と答えた。

あの日、済生会日田病院の正門から眺めた、海へと続く道を忘れたことはない。

もしこの道を、誰にも縛られず、どこにも帰る必要のないまま、進み続けられたら…。

どんなに幸せだろうか。

賃金を稼ぐために会社に繋がれるのは当たり前。それは理解していた。

しかし、それにしたって。私はこんなところで、毎日叱責されながら何年も過ごしていかなければならないのか。

 

どれが福岡空港行きかよくわからないまま、バス停を目指して季節外れの夏日の下を歩き。高速バスに揺られ、空港を漂い、一人、飛行機に乗る。

 

「なんてとこに入ってしまったんだ…。」

そこにあったのは、ただただ、逃げ出したいという願望。

憧れの機内で、私は涙をこらえていた。

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