風化
3月19日
フラワーパークからの帰路、気になる神社があるので寄ってみた。
八龍神社。カッコよい名前の神社が、交差点のすぐそばに鎮座している。
一歩踏み出せばそのまま引き込まれてしまいそうな、荘厳な樹木のトンネルが信号機のすぐそばにあるというギャップ。たまらん。
社殿の中は、仄暗い。とくに看板があるわけでもないので、歴史も何もわからない。
しかし、その何も語らぬ、見せぬ姿勢がかえって神々しく思える。
鳥居の前に停めておいたバイクに戻ってくると、「でっかいバイクだねぇ」と褒めてくださるおばあさまと出会った。せっかくなので神社について聞いてみたが、やはり何を祀っているとか、詳しいことはわからないとのこと。
「夏になるとね、この神社でお祭りするんだよ。八龍会の人たちが、神輿をかつぐんだよ。子どもも担ぐんだぁ。」
と聞く限り、由来はわからないが神社は地元民たちに大事にされているらしい。
だが。
「ただ、子供神輿は去年で辞めちったんだよ。子どもの数が少なくってさぁ。
大人は東京に出て行っちまうし、若い子も子ども作んないでしょ。」
耳が痛い。
「小学校もね、1、2…3小まであるんだよ。ほら、神社の奥にも見えるあれ、学校なんだよ。」
指の先には、たしかに立派な校舎が建っていた。
立派…なのだが、あの中にはいる生徒は今、数えるほどしかいないのだろう。
「もう、学校もなくなっちまうわなぁ。」
ばあさんは決して悲し気に語ってはいなかったが。それでもその後ろ姿を、この交差点を見ていると。切に思ってしまう。
“ここもいつか…この神社もいつか……そうなるんだろうな。”