ひと手間入魂
3月16日
晩御飯に朝ご飯、果ては洗濯物まで手を煩わせていただいた。
このままただ居候するということのほうが、まさに苦行、身の裂ける思いってやつだろう。
というわけで、「出かけてもいい」とシジミンには言われたが。ビニールハウスの解体作業というものを手伝わせていただいた。
彼の家は農家だ。聞くところ、米と芋—干し芋を作っているらしい。
その、芋を干すためのビニールハウスが、時期が終了したので解体されるとのこと。
ビニールハウスの中、土の上に敷かれた藁。の上に敷かれた、細かな目の網を取り除く作業をさせていただく。
今はもう姿がないが、さらにこの上に柱を組み合わせて机を作り、たくさんの干し芋を干すらしい。
「なぁシジミンや。この網ってさ、やっぱ取らないとダメなんでしょ?」
「このビニールハウスの下の土、トラクターで耕すからね。見てみぃ、雑草もめちゃくちゃ生えてるじゃん。これを処理しとかんと、エラいことになるからね。」
確かに、網の目から雑草がニョキニョキと生えてきていて、網を固定する楔と化してしまっている。ただでさえ網を固定する杭を抜くだけで腰が痛くなるのに、そいつらのせいでより手間がかかる。
いくつもの杭を抜き、網をたたみ。また杭を抜き…を繰り返す。
もしかしたら、このビニールハウスを1年中放置して、干し芋やら何やらを作っているところもあるのかもしれない。それもできるのかもしれない。
ただ、ここを含め多くの農家はそうなのだろう。こうして、手間暇を惜しまない。作物を作ったら、毎回きちんと整地をして。最大限の栄養だとか、旨味を引き出した”作品”を作り上げて、それを人に提供する。
土仕事だなんだと軽く見る人もいるが。農家もまた、陶芸家なとど同じく。己の納得のいくモノづくりを、ひたすら実践し続けている職なのだろうなぁ。