風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

解凍

「ああ…香取にある昔の街並みも見たかったな…。」

「そういえば、チバニアンお勧めされたのに、行けなかったな。」

道の駅『季楽里あさひ』にて、ハイウェイマップを手に取ってここ一週間を思い返す。

思えば、雨で思うように動けなかった。少し、悔いが残る形となってしまった。

 

 

雨の中。テントの中に座り、虚を見つめている。

安売りで買ってきた弁当は目の前にあるのに、食べる気が起きない。

何かして、この雨の日の時間を潰したいが、何もする気が起きない。

 

いや、何もする気が起きないのではない。しなくていい、と思っていた。

 

—雨粒が規則的とも、不規則的ともいえるテンポで天幕を叩き、音を鳴らす。

—ときたま風が音を立て、シートを揺らし影を躍らせる。

 

私は、この状況を楽しんでいるのだ。ただ一人。誰の干渉も受けず。ただ、ただ、自然を感じている。

 

 

~~

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「さて…この橋を渡れば……。」

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茨城だ。

銚子大橋。千葉と茨城の県境。

インカムで『NNRブレイクダウン~サニーに捧ぐ~』を聴きながら、立ち乗りで利根川を渡った。

 

 

 

寒い。

天気は非常に良好なのだが、昨日の冬に逆戻りした寒気が残っているのか。脚が固まり、指の感覚が奪われてゆく。まさに身を切る、といった感覚だ。

 

普段ならどこかで一服いれるところだが、今回はただ、ひた走り続けた。走り続けたい理由があった。

 

 

100㎞以上走っただろうか。

場所は、『国営ひたち海浜公園』近く。

LINEでメッセージを送る。「つきました。」

ほどなくして、目の前の民家から。短髪に細い目、私より背の高い若者がのらりと出てくる。

「なんかうるせぇ音がすると思ったんだよ。」

 

そう、茨城では、友人が待っていたのだ。

 

 

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我が友人、あだ名を「シジミン」。

 

 

家の敷地へロケットⅢを停めさせていただくと、彼の父が、母が、そして祖母、その妹さんがたまたま居合わせたりして。

「どこから来たの?」「何してるの?」「なぜその恰好なの?」「何㏄なの?」などなど

いろいろと尋ねられて、お話をさせていただいたが。

最後には「ゆっくりしていきなさい」と、言っていただいた。

 

到着して早々、お母さんにお昼や飲み物を提供していただき、少々たじろいでしまう。

こんな施しを賜っていいのか? いくら息子さんの友人とはいえ、見ず知らずの私を、ここまで…。

「客人なんだからゆっくりしてろよ。」

そう考え込んでいるうちに、私の布団を用意していただいたり、荷物を入れていただいたり。

ああ、ヤバイ。たかだかまだ2週間ばかしだが、独りぼっちでぶらぶらしていた私には処理の追い付かない展開。

 

 

凍てつき始めていた心が、忙しなく、毛布でしわくちゃにくるまれるように。

温もりを与えられ、溶かされているのを感じた。

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