風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

初めての四足歩行

車が欲しい。

 

 

 

 

 

キックボクシング(ムエタイ)という休日の愉しみも得たわけだが、それでもなんか、こう……。仕事行って、寝て、鍛えて、寝て、仕事行って………って。クソ真面目か私は。

せっかく異国の地まで来たのだから、ちょっとは肩の力を抜いてもいいだろう。ワーキングホリデーなんだから。

 

「せめてバイクでもありゃなー。」

しかしながら良い状態のバイクはそこそこの値段がする…というのは前Nerang(ネラング)に行ってわかったし、ならばネットはどうだっ、と指先を動かしてみても、安い物はなんというかシックリこない…。

もともと、バイクはカッコいいから乗る物。妥協した値段では、格好がつくたまはそうそう見つからないだろう。私はもうロケットⅢ並みのインパクトがないと無理なのよ……。

 

「ん、待てよ。じゃあ車はどうなんだ。」

趣味で楽しむ人もそこそこだが、大多数は日常ユースに使うクルマ。つまりは、便利だから買う物。趣味とは違う、必需品。それなら、安くてもそこそこ良いのがあるんじゃないか…。

早速オーストラリアのマーケットサイト、ガムツリーやカーセールスで検索してみると、けっこう出てくる。

「もともと車にはそんなにこだわりないしな~…。いいじゃん、考えてみよう。」

そんなこんなで、ここ2週間ほどは車探しに没頭するのであった。

 

 

 

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ちなみに免許証は、11月にクイーンズランド州のものに切り換え済みだったりする。国際免許証は、オーストラリアの場合3ヶ月までしか有効でないのだ。

NATTI翻訳者をネットで探し、日本の免許証を翻訳。いただいたPDFを印刷したものと、住所証明書として銀行で発行してもらう、バンクステイトメント。さらにクレジットカードや学生証など写真付きのIDを持って、トランスポートアンドメインローズセンターに行けば、無事切り換えられた。

 

~~

 

 

 

こだわりがないと言いつつも、ネットの海を漁っていると、自分なりに好きなスタイルというものが見えてくるから面白い。

初めに気になったのは、プジョーのCC(クーペカブリオレ)。フランス生まれの、ハードトップコンバーチブルの先駆け。お高い印象のオープンカーなのに、抑えめな価格なのが〇。

「バイクには乗れずとも、風を感じられるオープンカーはイケてますな。」

しかしいくつか売り手を見つけたものの、あまり評判の良くない販売業者だったり、返事が曖昧過ぎる出品者だったりで、断念。

 

その流れで次はスポーツセダンに的を絞ってみたわけだが、通勤途中に車種を覚えるがてら、道行く車を眺めてみると……。

「同じのばっかやな…。」

とりわけ、ホンダのシビック、マツダのマツダ、ミツビシのランサーがとかく多い。これだけ多いと、なんだか購入意欲が失せてくる。

一応、一台のランサーを見学に行ってみたのだが、よく動くのだけど妙に普通すぎて、やはり惹かれなかった。それよりも久方ぶりにマニュアル車を運転したのに、難なく動かせた自分を褒めたい。

 

「あ~~~~やっぱり上手くいかないな。」

仕事がよく入るようになって、クリスマス祝日の時給2倍デーもあり。収入はかなり増えたのだが。それでも車に多額はかけたくない。それが目的ではないのだし。

3000ドルから、4000ドルぐらいで探したい…。安すぎないかって?オーストラリアでは、20万キロ、30万キロ走破した車が何台も走っているから、それくらいの値段で取引されることも珍しくないのだ。

20万キロぐらいで探したいな…加えて、個人的なこだわりとしてマニュアル車がいい…そんでそこそこカッコいいの……

なんて探していたら、そりゃあ見つかりもしないだろう。

 

ちなみに私が主に車探しで主に使っているのは、フェイスブックのマーケットプレイス。上に挙げたサイトに比べ、コンスタンスに出品者がアップデートしている印象だからである。

ディーラーから買えばもちろん状態は安心だろうが、高い。安く済ますなら、個人売買が妥当だろう。

 

 

暇な時にマーケットを覗き込んでは、あーでもないこーでもないと悶々する日々。

しかしながら良さそうな物を見つけては、その車種について調べ、ぼんやりとした知識を得ながら、それらとの未来を妄想する時間は悪くなかった。

ブランニューとして打ち出したかったが、ブルーバードの名を惜しむ声により、止むなくその名を冠することになったブルーバードシルフィ。そのオーストラリア輸入版、パルサー。

SUVを牽引し、スズキのフラッグシップ的モデルとなった、世界戦略車のグランドヴィターラ…。

当たり前だが、バイクと同じように、車にも作り手と売り手の想い・思惑が込められた歴史があるのが、なかなか素敵ですよね。

 

 

「ポップアップテントも楽しそうだし、SUVでも調べてみるかぁ。」

検索エンジンに、車種を入力しては検索してみる。Xトレイル、グランドヴィターラ、ナヴァラ、RAV4、ランクル、パジェロ……

「おっ?」

パジェロを探していたつもりなのに、ミツビシつながりで検索に引っかかった、1台のスポーツセダンが目に留まった。

 

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マーケットプレイスより。

 

「マグナかぁ……。」

私がビッグスクーターならコレ!とよく言っていた、ヤマハのマグザムに似た名前で良い。調べてみると、セダンのような落ち着いた見た目ながら、3リッター、V6エンジンでけっこうな力もあるらしい。ユーザーレビューも、壊れにくいとかなり良さげだ。

ブランドこそマツダ、と日本車であるのだが、オーストラリアマツダが製造するいわばオーストラリアオリジナルの車で、日本に逆輸入されていたワゴンタイプは、希少車扱いらしい。

 

4000ドルという価格と、そこそこカスタムされているのが気がかりだが。夜の征服者。なんて、外人がカッコいいと思って使う日本語のステッカーが堂々と貼ってあるのが、面白い。

売主はブリスベンのやや南部、と遠めだが、インスペを交渉。

あいにく都合の良い日が仕事の日とかぶってしまったが、いつだかのバリスタレッスンの時と同じく、早朝に向かってみることにした。

 

 

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年末のお客様ラッシュでくたびれた身体を、5時間だけ休めて再びのネラング駅へ。

北に向け出発だ。

 

目的地までは、1時間足らずの電車旅、眠るにも微妙な時間なので、念のためマーケットプレイスを開き、もっとベターな選択肢がないか、再度考慮してみる。

「んー、良さげなXトレイルが出てるが…。まぁ、今日見るやつのが、惹かれるな!」

はるばる足を運ぶとなると、まだ結果もわからないのに買う気になってしまっている。

ワクワクするのはいいが、せっかくここまで来たんだからと妥協をしてしまうのも良くない。

興奮を抑えながら電車に揺られていると、やがて目的地、Woodridge(ウッドリッジ)駅に到着する。

 

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「おほーーーー。これはこれは。田舎ってカンジですねぇ!」

 

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見よ、この改札。

 

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だがトイレはキレイだ!

 

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我が故郷、いわき市は草野駅に似ているなんとも寂しげな外観である。

 

いいね、この旅気分。

少し前まで、車を使うところでないとこういう気分は味わえないと思っていたが。電車でも、案外楽しめそうではある。

 

 

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こっからバスで少し行ったところに出品者の家があるのだが、少し時間がある。

朝早くからの活動で小腹が空いたので、ケバブショップでチキンケバブをオーダー。

4ドルと書いてあるのに、8ドルとられる。田舎だねぇ。

 

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しかしながら味は旨い! ほどよい塩味に、カリカリ皮、フワフワの内側と、これは8ドルでも良さそうである。


いややっぱ高いわ。

 

 

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バスに10分ほど揺られ、大通りから一本入った住宅地へ。この辺りは、フィリピンとかネパール系だろうか。肌色が暗い人たちが多い印象である。

 

 

住宅地の中の一軒で、無事出品者とご対面。別に今知った訳ではないが、女性の方だった。なんとなくだが、大学生くらいの印象。

特に齟齬もなく、車を見せてもらう。売り物なので、さすがに写真は撮れない。

マーケットプレイスの写真より、けっこう日焼けが酷い。…まぁ、外観はそんなに気にしない。

何故なら、それを上回る迫力のあるボディ! スポーツセダンの形ではあるが、エンジンがデカいからだろうか。通常のものを一回り大きくしたようなスタイリングは、なんともサイとかバッファローのようにガッチリしていて、頼もしい。

後付けでカスタムされたオーディオも、良い音響。交換されたアフターマーケットの電動ドライバーシートも、気持ちいい……っと?

「すみません、これ、ここまでしかアジャストできないんですか?」

「あー…それで限界ですね。」

純正のものよりひとまわり大きなシート故、上手いことポジションが合わない。クラッチを踏み切るのに、腰を少し浮かさねばならない。

並みのドライバーだったら、この程度気にならないかもしれない。しかし私は元トラックドライバー。わかっている。このポジションで長時間運転していると、容易に腰を痛めることを!

 

エンジンを始動。エアコン確認。電動ウィンドウ動作確認。電動ウィンドウのスイッチが壊れているのを確認。

ぐるっと、住宅地の周りを一周させていただく。

さすがの大型エンジン。アクセルを踏み込んで唸り上げるその咆哮は、なんともクセになりそうなものである。

(こいつでドライブをしたら、さぞ気持ちいいだろーなぁ…)

懸念となるシートも、工具を使って弄れば、角度の調節ができそうである。

 

ということで、価格交渉。マーケットプレイスのページには、1月はじめまでに買ってくれるなら、Negotiable(交渉可能)と書いてあった。思い切って、

3500ドルでどうです? それなら今すぐ買います。」

こちとらシートも手直しせなならんのだ。これぐらいいいだろう。

「んーー。その値段だと、Rego(日本でいう車検)とRWC(ローワーシー。車検にともなう整備照明)はつけられないわ。3800でどう?」

交 渉 決 裂

 

腰を痛めそうな車に、そんなには積めん。その値段だと、さすがに外観も気がかりになってくる。21万キロという走行距離も。

「時間をください。もちろん、誰か欲しい人が現れたら、売っちゃっていいので。」

そう言って別れる。

 

 

 

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「あーあー。完全な無駄足…って訳でもないけど。」

微妙だということがわかったから、無駄ではない。ただ、残念なのにも変わりない。

今日には車持ちに!という気分だったので、なんとも晴れない気分で、帰りの電車に乗り込む。ブリスベンで出品されている他の車たちも見てみたかったが、今日は仕事だ。

 

「車で帰ってくるときの道順まで、頭に叩き込んでおいたのにな~。」

帰りもやることのない電車。どーせやることがないから、次の候補を探してみる。…が、やはり芳しくない。

(そーいえば、さっき良さげなXトレイル見つけたな…)

24時間以内に出品された、Xトレイル。数日前にも見かけた1台であるが、今日値下げされたようである。

「お、出品場所ゴールドコーストじゃん。」

2800ドルで、Rego付き。20万キロの、2006年式Xトレイル。外見から分かるカスタムとして、フロントバンパーガードが付いていてカッコいい。ルーフレールも付いている。

 

失恋(交渉決裂)のショック……がなくても、十分に良い玉である。さっそく連絡を取ってみると、今日伺っても良いことに。

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ヘレンズベールで下り、トラムに乗り換え。トラムが遅れながらも、「あなたを待ってるぜ」とのせっつきを受け、Northcliff(ノースクリフ)トラム駅からIsle of capri(アイルオブカプリ)へとクソ暑い中走る。高層ビルを懐かしむ暇もない。

 

 

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アイルオブカプリは、サーファーズ市街・南部からナラン川を越えてゆく半島。住宅地だから今まで用もなく、初めて渡る橋を行く。

 

~~

 

なんとか出品者とご対面。スペイン人の男性。彫りは深いが、ちょっと自信なさげな態度が、なんとなく私より年下なんだなとわからせてくれた。私もだんだん、外国人の齢が分かるようになってきた。

 

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新しくしたというタイヤや、クリーンなボンネット内などを率先して見せてくれる。一人では面倒な灯火類の確認も、進んで手伝ってくれた。

エアコンをつけると、ファンが何かに引っかかるような異音が鳴る。

「メカニックがいうには、チープなエラーらしい。」

「ってことは、どっか持ってけば直してもらえるかな?」

Yes,yes.

その言葉、信じようじゃないか。

 

車体をチェックさせていただいている間にも、出品者の携帯がメッセージを受信する。他にもインスペに来たい人がいるらしい。待ってるぜとは、そういうことだったのか。

 

試運転もさせてもらう。我ながら慣れたもので、運転しながら助手席の出品者に「今日、実はブリスベンの方行ってきてさー。しかもこれから仕事なんだよね。」なんて愚痴を言う。

うん。先ほどのマグナよりは落ちるが、それでもロケットⅢ並みの2.5リッター。ありふれた4気筒…だけど、税金的にはそれが良い。(オーストラリアでは、排気量ではなくエンジンのシリンダー数で税金が決まるのだ)

 

「エアコン直すんだったら、それに見合って値引きするよ。」

じゃあまた思い切って。

2500ドルでどう?」

Okay.

オーケー!?

安すぎないか…さすがに不安になってくる。が、元々はもっと高い値段で出品されていたのを知っているし、話を聞けば、仕事のために新しい車が欲しいから、早く手放したいという一応の理由もある。

オイル交換を聞いたら7ヶ月前、Regoも残り1ヶ月と、うわ~~それはすぐ整備出さなきゃマズいってことを意味するわけで、でも安いわけで、見た目も傷だらけだけどガッチリしたボディはなかなかカッコよくて、そもそもこの値段だったらまぁ、壊れてたとしても妥協できるって訳で、いやいやでもこの1日の流れに酔ってるだけじゃない?って訳で、でもそれはそれで面白いかもって訳であ~~~もう~~~~~~

 

 

 

 

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買っちゃえニッサン。

 

木村だけにね。

 

 

 

購入したその足で仕事に向かい、恐ろしいほどのカクテルを作り、帰り、ぶっ倒れる。

かくして、バイク馬鹿だった私の、人生初のカーライフ1日目は………オーストラリア生活史上、最も忙しない1日で終わるのだった。

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