風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

プロローグ

Hey bro what’s up? u look tired.

Ah.. Beau…. Actually…I received message from my…just not girl friend…? kinda girl friend?

She said me “Maybe I’ll get boy friend”

So,I was upset,and couldn’t sleep enough…

Oh that’s not good…

And,I thought get job,but――」

 

 

 

希望が絶たれる。文字どおり絶望。そんな心境が顔に出てしまっていたのか、ボウに気遣われながらステーキハウスの仕事をこなす。

 

…結局、ママサンキッチンにメールで確認してみたところ、より経験のある応募者がいるので、そちらを優先することにしたのだそう。それから、Language Barieer…言語の壁が、私の作業を遅くしてしまうことを懸念したとのことだ。

昨晩の笑顔はなんだったのか…。仮にあの時採用ではないと話されていたとしても、雇用書類まで渡されてしまったのだから、成功したと思わざるを得ないだろう。

 

もう一度言いますが、貴方のパフォーマンスにはおおいに満足しています。今後、またポストが空いた時のため、レジュメは保管しておきます

なんて文言が添えられていたが、社交辞令ってやつなんだろう。

 

 

 

~~

 

 

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それからのことは、正直あまり憶えていない。

 

何もしない訳にもいかないので、Sea World(シーワールド)なる、メインビーチにあるホテルのジャパレスへ面接にいったが…。何質問されているのか理解できず、自信を挫かれるだけだったり。

その帰り道にバーでレジュメを配り、なんとか一件トライアルに行き着いたものの、スクールホリデーで客が多く、自分の実力をアピールできなかったり。

ブロードビーチの有名ホテルでは、英語が不自由なスタッフ用のチームがあると面接を受け、インタビュアーがロシア人だったこともあり、和やかに遂行できたつもりだったが…返事がなかったり。

 

 

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辛い……のは前と一緒だが、ここまで来ると、もう何も感じないというのが実情だ。

何も感じないというと、なんか無敵状態みたいで語弊がある。何も感じたくないというのが妥当だろう。

いちいち、一喜一憂するのにも、疲れた。何も考えたくない。

考えたくはないのだが、妙にリアリストなのかな、私は。生活のことが常に頭につきまとって、気持ちが悪い。

仕事もそうだが、住まいも9月末まで。もう一週間切っている。前に内見に行ったシェアハウスは、好立地だが家賃が高い…。

仕事が欲しい…。

 

 

 

もう、眠ろう。とりあえず寝てしまおう。

何はともあれ、健康ではいないと。仕事探しもできない。

 

…こんな時でも、明日を求める自分を、情けなくも誇りに思いたい。

 

 

…きっとこれは、プロローグなのだ。

よくあるだろう。物語の序章では、主人公が悲惨な目に遭うお話。

失恋したり。

職を失ったり。

借金を負ったり。

住処を追われたり。

 

そういったストレスがあるから、それからの物語での逆転劇…カタルシスが盛り上がるのだ。

だから、そう。きっとこれも、プロローグだから。きっと良くなるさ。

 

辛いときはね。これがどんな風に良くなっていくんだろうって。ゲーム感覚で、楽しんでいけばいいよ

…青森の相馬さんもそう言っていた。

 

 

日本の旅で出逢った人々は、元気にしているだろうか。

なんとなしにラインの連絡先を眺めていると、前のバーの常連さんがたが、示し合わせたようにアイコンを奇天烈なものにしているのが目につく。

(バーで、一緒にまた馬鹿騒ぎをしているんだろうなぁ…)

指摘してみると、その時の様子が送られてきて。「これを見て元気出せ」と。母心だと。いらない気遣いを押し付けてくる。

 

全く…。

世の中というものは

 

 

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挫けることを許してくれないものである。

 

 

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ブロードビーチでは、がむしゃらにレジュメを配り切ったと思う。

だから再びこの地、マーメイドビーチに来てみた。この中心街(と思われる)あたりは、未踏の地である。

相変わらず背の低い建物が並ぶ冴えない街だが、ビーチ近くということもあって活気はありそうである。

 

日本をはじめアジアをイメージしたバーもいくつかあって、ネットを見れば求人も出していたり。

ここは、期待できそうな地である。

慣れたもので、もう一杯飲まずともいきなり「すみませんが、マネージャーとお話できますか?」から、レジュメを配る作業を繰り返せるようになった。

田舎っぽい雰囲気だからか、皆さん気持ち良く受け取ってくれる。勿論、それが形式上のものでしかない、というのも経験からわかっているが。それでも、互いに気持ちよく済ませられるに越したことはないだろう。

 

 

5、6枚は配っただろうか。ここ一週間で考えたら、20枚以上は配ったことになる。

この界隈はもう十分なので、ひと休みがてらビーチに出てみる。

 

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ここがマーメイドビーチのメイン、Nobby Beach(ノビービーチ)。

…なるほど。ブロードビーチの海辺も特に何もないところだったが、そこからさらに南へ来るともっと何もない。

 

しかし、前も述べたように、私はそっちの方が好きだったりする。

何もない方が、この美しい海岸線に集中できるし。ガヤガヤした感じは得意ではない。

 

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遠方にサーファーズのビル群。

こうして街から離れてみて、初めてこの砂浜の長さが実感できる。

この輝く海岸が、実に57㎞も続くのだから。そりゃあ、ゴールドコーストって名前をつけてもおかしくないわな。

 

風を受けながら、北に向かって少し歩く。当たり前のようにゴミが見当たらないあたり、この砂浜は住民の誇りなのだろうな。

 

~~

 

ゴールドコーストハイウェイ沿いに戻り、ケバブ屋で腹を満たす。

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こちらに来てから思うのだが、量が多い。たしかに外食の値段は高いが、それ相応の量があるから文句は言えない。これの半分の値段と量があるなら、ちょうどいいのだが…。

 

さて、マーメイドビーチも終えてしまった。次はどこに行こうか。

さすがにここより南は、遠すぎて通勤には辛い。となると、北に戻るしかない。ブロードビーチは一通り散策したから…サーファーズにまた行ってみるか。

 

 

思えば、サーファーズはまだレジュメ配りに慣れてない頃に回ったから、力を出し切れたとは思えない。

今の私なら、新しい発見もあるかもしれない……と思ったのだが。

 

「あー今日は土曜だし、スクールホリデーで忙しいから。火曜日あたりに来てくれるかな?」

…ってな感じで、レジュメを受け取ってもらえない。

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そうだよな…。気付けば、日も傾いている17時過ぎだ。しかも土曜。スクールホリデー最終日。

そんな中、レジュメを受け取ってくれるところなんてそうそうないだろう。

 

 

でも何か、帰る前に、あと一軒…。

そういえば、サーファーズの北のはずれのあたりに、前々から気になっていたジャパニーズレストランがあったな。

スモークハウスのボウもオススメしていたけれど、ネットで見る限り敷居が高そうなのと、開店が17時半と伺うタイミングが難しいことから、敬遠していた。

この際、恐怖心なんか抱えてる場合じゃない。行ってみよう。

 

~~

 

17時半。になると同時に、店の扉を開く。

黒を基調とした、シックな装飾の店内。想像どおり、かなり高級そうである。

「あの、レジュメを配りに来たんですが…。」

慣れているつもりだったのに、弱々しい声になってしまう。が、なんとかスタッフに受け取ってもらえた。

すると、マネージャーがやってくる。ガタイの良い…なんというか映画の悪のボスみたいな風格の、白人だ。恐い。

私のレジュメをひととおり眺めて、

Sexy…Japanese sword art…

お、そこに触れられたのは初めてだ。

Is this your cocktail?

レジュメに貼り付けておいた、私のオリジナルカクテルの写真が指さされる。そこに言及されるのも初めてである。

そして、

Could you work tonight?

…あ、またそういうパターンですか………。

戸惑いながらも、バーカウンターに通される。

 

 

 

 

 

東南アジア系のバーマネージャー、Nel(ネル)は、今までオーストラリアで見てきた中で一番のバーテンダーであった。

無駄に大仰でないトリックを織り交ぜながら、正確かつ素早いポアリング、複雑で無駄のないシェイク、ダブルシェイク、ダブルステアはもちろん、片手でステア、片手でシェイクもこなす。そしてこれでもかと落差のあるスローイング…。

傍目でその絶技に惚れ惚れとしながら、それを少しでも手助けできるよう、目まぐるしく回ってくる使用済みシェイカーやメジャーカップを洗っては渡し洗っては渡す。

すると、たまに材料が投入済みのシェイカーなどを渡されて、振らせてもらえる。

恐さえ感じるほど技巧のある人物だが、懐は広いようである。

 

 

そんなこんなで、手伝えたとは思うが、別段光るところを見せられた訳でもないトライアルだったが…。

10時ごろまで働いた終わり際、言ってもらえた。

You have job.

 

…ほらね。きっとここからが、物語の開幕なのだ。

 

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