犬吠埼へ
3月13日
陽気な元レーサーと別れた後、本日の目的地・犬吠埼へ向かう。
県道30号を通り、北へ。
飯岡では、座頭市物語の碑なるものを発見した。
作家・子母澤 寛(しもざわ かん)氏が天保水滸伝の取材に飯岡を訪れた際、宿の主人から座頭市の話を聞いた双だ。「市さんという目の見えない変わった人がいましてね…」と。
郷土史家の人によると、座頭市のモデルとなった人の記録は残念ながらないそう。
だが、地元民の間ではその伝説は細々と語り継がれていたとか。
私も、あの仕込み杖を逆手抜刀術で巧みに操り、数多の敵を”あっ”という間に切り捨てていくその様には、かなり憧れたものだ。思わぬところで伝説の地を踏めたことに、感謝したしだい。
その後、岬にある『上永井公園』で来た道を振り返る。蓮沼はあのあたりだろうか。ならば、九十九里はもう見えないところだろうか?
岩井俊二監督の『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の舞台にもなった岬らしい。観たことないんだが、恋人の聖地ってとこなのだろうか?
明日の雨の兆候だろうか、風が強くなってきたので、先を急ぐ。
犬吠埼。関東の最東端。離島やどっかの山頂を除けば、日本で一番早く日の出が拝める場所だ。
灯台は、イギリス人リチャード・ヘンリー・プラントン設計、監督の西洋型第1等灯台。
相も変わらずコロナの影響で灯台へは入れなかったが、周囲を歩ける遊歩道を通って先っちょを見てみる。
…誰もいないな、よし。
「わおーん」
少し恥ずかし気に叫んでみる。ここへ来たらやってみたかった。
この岩で、源義経の愛犬は七日七夜鳴き続けたらしい。残された犬の、主人を想う遠吠え。少し、その想いを労ってやれたのだろうか。
さて、九十九里でゆっくりしすぎたか。もう16時だ。
…しかし、道中で寝床は見つかっていない。
いや、海の近くではいくらでも見つかったのだが、あいにく明日の予報は雨。さすがにそんなときに海沿いはおっかない。
晴れ渡っていた空も、仄暗い様相に。漁から戻ってきたと思われる漁船を横目に、内陸へ向かう。
県道216号線を通り、旭市まで逆戻りだ。
そして、道の駅へ駆け込み。テントを張る。明日は温泉に浸かりたかったが、雨の中の移動はもうしない。
脚は動きたがっているが。1日静かにしていよう。