風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

小手調べはステアで

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「景色が綺麗だ…。」

 

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スモークハウスのトライアル帰り。ブロードビーチのシンボルともいえる、スターホテルが目に入る。

手に職を持ったというだけで、見ているものが鮮やかに見える。思えばここ数日は、異国情緒を楽しむ余裕もなかった。

どんなに美しかったり目新しい景色を目の当たりにしても、それを受け入れる心の余裕がなければ、感動というものは得られないものである。

 

 

翌日、土曜日の繁忙日もなんとか乗り切った帰り際。マネージャーだと思われるウェイトスタッフ・ディープが、「次のシフトは明日連絡するよ」と告げてくれる。

 

 

で、翌日。

連絡がこない…。

 

そのまた翌日、月曜日。こちらからショートメッセージを送ってみると、水曜~土曜日の17:30から働けるよと返事が返ってくる。

 

 

うーーむ。

短い。

土曜日のシフトは、21:30ごろまでだった。つまり、1日あたり4時間ぐらいと考えると…。全然稼げん。

アフタヌーンからも働けますか? 仕事早く覚えたいので…。

昼間の仕事はフロントスタッフが一人だけだから、ブラザーはオーダー取りとか、基本をもっと覚えないといけないぜ。

 

…うむ。これは、もう一つ職を探す必要がありそうである。


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翌週、「先週のぶん」といただいたのは150ドル。

オーストラリア初の給料はもちろん嬉しいが、時給に換算してみると約23ドル。最低時給である。初心者とはいえこれは厳しい。


しかも給料手渡して。臭うぜ。

日本では給料手渡しの企業にしか勤めてなかった自分には、よくわかるぜ。




~~

 

改めてスモークハウスの求人を見てみたら、どうにも30時間プラスで働きたい人向けの、副業として募集をかけていたらしい。お助け枠なのだ。

せっかく胸を撫でおろしたというのに、上げて下げられた気分である。

また職探しか…と憂鬱になるが、先日までの努力が報われたのだろうか。ちょうど、ブロードビーチのイタリアンレストランからメールが飛んでくる。

 

ビザは? 英語は? クラシックカクテル全部作れる?

などの質問の応酬の後、トライアルの予定をとりつけることに成功。

助け船…であるが、パスできるかわからないので、念には念をもって行動しよう。

スモークハウス以外…つまりデイタイムの仕事といえば、カフェがメジャー。

私はコーヒーの知識など皆無なので、学校近くに張り出されていた、バリスタレッスンの予約も取り付けておく。ネットでも、職探しを継続しよう。

 

それから、もう9月半ばも過ぎている。マッヂ氏のホームステイは、9月末まで。次の部屋も探さねば。

オーストラリアの部屋探し&ルームメイト探しサイト『Flatmate(フラットメイト)』や、オーストラリア移住者向けの日系サイトなどを駆使して、新居探しを開始。

どうにも、やはりオーストラリアの人は、返信が遅いらしい。インスペクション(内見)の申し込みをしても、返事が全くない…。

幸い、ブロードビーチウォーターズで日本人オーナーの家から返事がもらえたので、その予定も入れる。

 

で、

 

 

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「ふぅ…」

トライアルとインスペの日程がかぶった。

幸い、トライアルは1時間足らずで終わったので、インスペには伺える。

緊張していた体を、いつものヴィクトリアパークで寝転がってほぐす。

 

トライアルはというと、なんというかあっさりとしたものだった。

最初は自由にオールドファッションドを作らされ、ビターズを入れた方がいいといわれ、

次も自由にエスプレッソマティーニを作らされ、シュガーを入れたほうがいいといわれ、

最後に自由課題として、XYZを作らせていただく。ノーコメント。

なんというか…。いろいろ言うなら、はじめに店のレシピを教えてくれよ、という感じである。

「合格したら、明日電話するよ。」

あ、これは連絡来ないパターンだな……。

 

Mission Failed

 

なのだが、言い訳をさせてもらうなら。

あまりスタッフの笑顔が見られず、私としては微妙な雰囲気であった。ぶっちゃけ、ここで働いてもいいといわれても、「ちょっと…」と尻込みする程度には雰囲気が重い。

 

慣れない土地で働けるだけでありがたいのに、雰囲気なんて二の次だろ。と思うかもしれないが。慣れない土地だからこそ、気を楽にできる環境は大切だと思う。

英語が聞き取れるかとか、店が忙しそうとか、そういう物理的な問題こそ、二の次。そんなものは経験でなんとかなる。

まず第一に心の平穏を保ててこそ、真のポテンシャルが発揮できると思うのだ。私は。

 

 

 

「…それにしても、いい日和だなぁ…。」

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今週は、この日だけ局所的に猛暑。35度ぐらいだろうか。

歩いていると汗が垂れるが、こうして木陰にいると、海風も相まって非常に心地いい。

見知らぬ街の喧騒と、芝の香り。

「なんだか、旅をしていた頃を思い出す…。」

日本のどこかで、嗅いだのある感じ。やることは山積みなのに、それを全部忘れさせてくれる、新鮮な風。

 

 

 

1時間ほど、本気で寝てしまった。

 

 

アラームをかけていなかったら、まずかったかも。

インスペに伺うお家へ向かう。

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ブロードビーチウォーターズは、ブロードビーチの内陸側。海に流れ込むナラン川沿いに、無数の住宅地が並ぶ土地である。

マーメイドウォーターズなど、海沿いからやや離れた内陸、川沿いの土地は、~ウォーターズと名付けられるらしい。

 

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カフェなどが点々とあるだけで、ほぼほぼ家だらけ。区画された道は真っ直ぐなものばかりで、正直、この酷暑のなか歩くのは辛い。

日差しもガンガンである。日本のバーを卒業する時、常連さんにプレゼントしていただいたサングラスをかける。

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恐。

 

するとそのサングラスの光沢が気になるのか、マグパイが顔のすぐ横を、2回ほどついばみながらかすめていく。後ろから襲ってくるので、けっこう恐い。

 

駅から歩いて、30分。ようやく目的の家に到着である。

この距離だと、自転車を買わないとキツそうだな…。

 

 

インスペに訪れたのは私だけでなく、他に男性と女性一人ずつ。

空いている2部屋を紹介していただいて、あとはシャワー室やランドリー、デッキなど共有スペースを見せていただく。家のルールも確認した。

居住者は全員日本人で、フレンドリー。管理人さんは、オーストラリア歴10年。ワーホリについて、いろいろと話を聞いてくれた。

「いま仕事があるっていうのは、ラッキーだと思うよ。ここ最近、仕事がないって言って帰っていったワーホリの人、けっこーー見たから。」

やはりこの状況に、みんな苦しんでいるらしい。

 

自転車を使えば、ブロードビーチの駅まで10分。部屋は広く、川に面したデッキもある。そして週あたり260ドル。安い。

オーストラリアの賃貸は、基本シェアハウス。そして家賃は週払い。サウスポートは週200300ドルと幅広くあるが、ブロードビーチの方は300ドル超えが多く、そもそも物件数が少ない。

一緒にインスペした男性も言っていたが、ここはかなりの優良物件である。

………のだが、どうにも私は思ってしまうのだ。

(ここまで来て、日本人ばかりと暮らすのもなぁ……)

面白みがないといえばない。

 

 

インスペが終了後、せっかくだからと訪れた3人で雑談。

男性は今日で学校が終わりらしく、明日、運よく巡り合えた日本人オーナーのカフェでトライアルらしい。

そして女性は…驚きであった。

ワーホリで来て、今日で3日目。ホテル暮らしで、その部屋も今日で終わりなのだとか。学校にも行っていない。

「勢いでワーホリ来ちゃって……。」

その無鉄砲さ………。

 

 

惚れた!

「あー……。大変ですから、ここのお部屋、もし気に入ったのであれば、譲りますよ。私は9月末までで、まだ余裕あるので…。」

男性はもうここにすると決めているみたいだし、残り一部屋。醜く争うのもナンセンスだろう。

ここは、困っているレディーファーストでいこうじゃないか。美人だし。

 

 

気を利かせてくれた管理人さんにブロードビーチまで送ってもらい、解散。

 

 

 

さて………。

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「あ“――――なにやってんだろーなーー!! 私は!」

困っているのは私だって同じなのに、なに余裕ぶっこいて聖人面しているのだ。

同じ祖国の人だからと、初対面の人にそこまで気をつかってどーする。甘えるのも、甘やかすのも、慣れた環境だったらいいかもしれないが。この綱渡りのような海外暮らしでは、ご法度ではなかろうか。

 

まぁ、もういいや。美人の涙が最優先でしょ…。

 

 

 

                                          続く

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