食料確保
9月7日
朝起きると、初日にも見たあの鳥がいる。
「すっかり住みついてるな…。…お前じゃないよな、うるさいの…。」
偶然にもこの日の授業ではこの鳥の話がチラっとなされた。
マグパイという鳥らしく、サイクリストをよく襲う鳥なのだそうだ。恐。
~放課後~
うっ足が痛い。
痛いというか、ズンズンする。筋肉痛っぽい感じだ。
あれだな、栄養不足かな。
空腹は我慢すればいいが、消費された筋肉は材料を求めて叫んでいる。
今日はこれでも、お昼に学校初日でもらったポップコーンと、クラスメイトにいただいたパンを食べたのだが。
こんな物乞いみたいな生活をするのもアレだ。
オーストラリアンフェアー(ショッピングモール)に行ってみよう。
中華料理店の軒先売店。
「チャーハン7ドル…! 外食にしては圧倒的に安いけど、自炊すればもっといけそうだよな…。」
『Cole』というスーパー。
日本で旅をしていたころは、夕食は納豆ご飯とインスタント味噌汁で、300円ぐらいで済ましていた。
今回は海外だから、パンに…、サラダと鶏肉でも挟んだ、サンドウィッチでも作ろうかな? トルティーヤスタイルもおもしろい。
とにかく、足りない野菜と筋肉を補いたい。
しかし、生の鶏肉をわざわざ買って、いちいち切って調理するのは私の流儀ではない。
とにかく簡単にできれば。見栄えや味はどうだっていい。それが私のスタイルなのだ。なんだかんだ自分で編み出したものって、美味しく感じるしね。
というわけですぐに使えそうな鶏肉はというと、缶詰だ。缶詰コーナー…缶詰コーナー…。
「おっ。」
なんか良さげなもの見つけた。
缶詰に入ったシチューみたいな感じかな? これ、安いし簡単に調理できそうだし、FAT
FREEって書いてあるし…。いいかも。
種類もいっぱいある。
調理方法を見てみる。
どれどれ…。あ、なんだ。いったんタッパーとかに入れて、電子レンジに入れなきゃいけないのか。めんどくさそうだな…。
缶詰のままレンジっていいのかな…? あ、調べたらダメらしい。
んー他にないかなー…。お、これは容器ごと暖められるのか。あ、でもご飯入れなきゃなんだー。んーでも一応、ご飯無しでもいけるか? プロテイン豊富…気になるなー試しに買ってみるか。で、さっきのも買って、タッパーも買っちゃおう。今後、弁当とか持ち運ぶのにラクそうだし。
タッパーを探して近くのディスカウントストアに寄ってみる。
「サイズ…2ℓ!? でっけぇな過剰なんだよ……こっちは? 750mℓ? んーーー微妙すぎる!」
結局、ダイソーへ。
棚には日本語の製品が並んでいるけれど、歩いているのは外国人…。変な気分だ。
折り畳み式のスプーンとフォークも買って、学校へ戻る。
指切らないよう缶詰開けて、タッパーに移して…。ん?この電子レンジワット数がわからんぞ…まあいいてきとうだーおんどりゃー!
うりゃー! できたー! どんなもんじゃい!
味は……、うん。海外のモノ感はあるけど、ふつうに食える。美味い。野菜もいっぱい入っている。
表記上はこれで1缶で2食ぶんらしいけど、満腹になったかといわれるとどうだろう。もう少しって感じ。これにちっちゃいチキン缶とか合わせれば、だいたい500円ぐらいだしいい感じかな。タッパー買ったから、ホームステイでもらえるパンも持ってこれるしね。
というわけで、オーストラリアでの節約食は、ひとまず缶詰メシになりそうだ。貧乏くさいが、それが味のある雰囲気を出してくれていいのよ。
思えば缶詰なんてバックパッカー向きなのに、なんで今まで気づかなかったんだろう。
こんな感じで、1日の流れの中で必要なメソッドが確立すると、とたんに安心する。ある程度変化できる柔軟さこそ必要であれ、基本方針は決めておいた方が迷わずに済むのだ。
そんなこんなで帰宅。
「ただいまーマッヂさん! 今日はねー缶フードにトライしたよ~。」
「あー、そりゃスープだね。」
苦笑いするマッヂさんの手には、風船。壁には、50th Anniversaryの文字。
「あーそっか! 土曜日、誕生日だったね!」
「そう。パーティーするから、デコレートしてるんだよ。」
「なんか手伝うよ!」と言っても「大丈夫だよ」と言われるが、自分の誕生日パーティーを自分で準備するなんてそんな悲しいこと………。
おりゃーーー!
がんばって膨らませた。
空気入れがあるとはいえ腕が痛い。
今日はRSAに引き続いてRSGの課題も終わらせようとしてたのに、何をしとるんだか……。ま、誕生日は祝われるべきって私のモットーだし、代えられないよね。
マッヂ氏のお母さんが遊びに来たからか、ちょっぴり豪勢な夕ご飯。
マッシュポテトって、作るの大変だよなぁ……? 経験したからわかるぞ。
それから、ホームステイメイトのコロンビア生まれディエゴと、マッヂ氏で3人で話して。
いつの間にかお酒の話になって、こちらのカクテルブックを見せてもらったり。
チョコレートリキュールとか、馴染みのあるシャンボールを飲ませていただいた。
何かした訳ではないけれど。食に関してとても満足できた、そんな一日でした。