あー夏休み
9月5日
“ピーピーピーピーピー!!”
なんだなんだ。火災報知器か?と思いきや、頭上のそれと、遠くで同じような音。
眠い目をこすって聞いていると、どうやら鳥の声らしい。庭に、恐ろしいほどうるさい鳥が停まっているようだ。
鳥の声がこれほど鬱陶しいと思ったのは、初めてである。冗談じゃなく、警報機並みのデシベルなのだ。
目覚ましに雄鶏を使っていた人らも、こんな気分だったのだろうか。雷に続き、鳥に起こされるとは…。いつか必ず名前を特定して、晒してやるぞあの鳥め。
日焼け止めを忘れず塗って。登校。
授業開始30分前。どうやら1番乗りのようである。
シンガポール生まれの50代女性、スークヴィンドール…スーク先生と顔を合わせ、早く来たからと資料のホッチキス留めを手伝わされる。
「あなた昨日も会ったわね。調子はどう?」
そういえば、昨日のオリエンテーションでどこに集まればいいか尋ねたのも、この先生だったな。
日本は左上綴じだけど、海外もそれでいいのか?なんて考えながらステップラーを叩いていると、続々と生徒が入ってくる。ひとまず、
「Good morning!」
と笑顔で挨拶すれば、顔をしかめる人は一人もいない。同じ日本人、ブラジル人、コロンビア…すぐに国際色豊かになる教室で、なるだけ一人ひとりと会話する。昨日お会いした、ジャスミンさんとも無事再会できた。
8時半になり、授業、ひいてはクラスのオリエンテーションが開始。私のクラスは、だいたい20人ほどであった。5つほどの大きなテーブルに思い思いに座ったのだが、それがグループになることに。
何人かピックアップされ、タッチ機能のついた電子黒板にそれぞれ自己紹介を書いていく。
名前の読み方を教えて、年齢、出身地、職業をそれぞれ3つずつ書いて、どれでしょう?とクイズ形式にする感じ。
ちなみに私もピックアップされたので、せっかくだから遊んでみた。職業を、
・Bartender
・Travel writer
・Truck driver
はい、全部正解です!
私がいかにちゃらんぽらんに生きてきたかが、これでわかってもらえただろう。
自己紹介の応酬が終わったら、いよいよ授業開始。
タイトルをDisaster…すなわち自然災害とし、与えられた資料を見ながら、各グループでディスカッションし先生の質問に答えていく。どんな災害があるか、なにがその要因となるか、歴史的にどんな災害があったか…。その過程で、文法などを学んでいく。
…と記述してみると堅苦しく思えるのだが、空気は和気あいあいとしたものだった。
先生はもちろん、回答者もたまにボケてみたり、誰かが回答しているときに、他が率先的に突っ込んだり。それが長話になっちゃったりして。
日本のような、”発言は一人ずつ”。という規律が全く存在しない。言ってしまえば無秩序なのだが、それが海外じみていて面白い。
無論、ほとんどが立派な大人なのだから、個人で問題を解きなさい、と言われれば皆静かになるし、当たり前だが全編英語だから、頭も使う。だから緊張が解け切ることもなく、ちょうどよい。
それから都度、”私の国ではこんな災害があるよ”という会話も展開されたのが、印象的であった。
例えば私たちの日本では、地震が特徴的だが、竜巻は滅多にない。それがある国の話とか聞けたり。
私の隣に居たジャスミンさんのペルーでは、雷がひっきりなしに鳴っているのだとか。それがけっこうな確率で人に落ちるから、基本そういう日は外出しないらしい。
国ごとに特色がでてくる、自然災害というタイトル。狙っているのだろうか、絶妙に興味深い。
まとめると、とても楽しかった。
雰囲気が良い、とかいうのもあるのだけれど。”英語”という、本当に学びたいことを良質な環境で学べる、というのがこの上なく嬉しいのだ。
思えば、高専を卒業してから。勉強はもう嫌だと言いながら、執筆、カメラ、エンジン、運転、荷詰め、法律、カクテル…。必要に応じて、いろいろなことを勉強してきた。
だがそれらすべては、学校の勉強より遥かに楽しかった。自分が、”勉強したい”と自主的に始めたことだからなのだ。
必要だったり、欲しいと思った知識を学ぶこと。これこそが勉強なのだと、思う。勉強は楽しいものなのだと。
この感覚、子供たちにわかってほしいなあ。
授業は、だいたい13時前ぐらいで終わり。
それから例のごとく、バーにレジュメを配りに行った。
今日はQueen St沿いの、『Anglers
Arms Hotel』というところ。
ジャックダニエルと、チーズバーガー。
ウイスキーはロックスタイルでと言ったのだが、上手く伝わらずロックグラスのソーダ割りになった。何故。
今回お渡ししたマネージャーは、強面の男性だったから緊張した。しかしながらそんなことでいちいち委縮していては、送り出してくれた方々に顔向けできない。
無事、受け取ってもらい、帰宅。
お酒が入っているからだろうか…。
なんだか最近、どっと眠い。
飛行機で上手く寝れなかった後から、酒盛りになったり、長距離を散歩したり…。無理が続いたのだろうか。でも、日本を旅している頃は、このぐらいへっちゃらだったような気もするし。
常に英語を念頭に置いているから、脳みその疲れが早いのだろうか。
老いたのか…。とは、思いたくないなぁ。多分、バーテンダーを辞めてから、しばらく休暇気分でダラダラしてたからだろう。1ヶ月半…といったところか。
いや…旅を終えてからと数えれば、じつに2年半は休暇をとっていたことになるかな。
旅は、私にとって(無給の)生業みたいなものだから…そう考えても、いい。
ああ、なんだか、長い夏休みが終わった気分。
さっさと本格稼働させねば…と机に向かって宿題をしていたら、いつの間にか寝落ちしていた。