夕刻
3月12日
テントを張った。今日のぶんの、武術の練習もした。
まだ明るい。せっかくだから、この公園を散歩してみようか。
宮島池親水公園。
思えば、久々の晴れの日だから、こうして夕陽に照らされられるというのも久しぶりだ。
河津桜などが咲いている。池にはカモなど、水鳥がけっこう生息している。
「こんにちは」
「こんにちは」
近所の方だろう、散歩している方と何度かすれ違う。
きっと、あの人たちはもう、家へ帰るのだろう。あのひょこひょこと歩くおばあさんも、犬連れのニット帽のじいちゃんも。あのカップルも、あの釣り人も。
そう考えたとたん、妙に、すこしだけ。すこし寂しくなった。
私には今、帰りを待っている居宅がない。
私は今、共に散歩する仲間もいない。
花も、どこか憂いて見えてしまうものだ。
17時になると、近くのスピーカーから夕焼け小焼けの赤とんぼが流れてきた。
夕刻はダメだな、しんみりした気分になっちまう。
早咲きの河津桜も、もうその花びらを散らしている。
移ろいゆく季節の中で、私は一人、何を残し、得られるのだろう。