風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

【最終話】風の翔ける先

駆け抜けた 日本万景 我が誉れ

 

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「とうとう、だな…。」

奇しくも31日と同じように国道16号を北上すると、川崎に入るあたりでそれは15号に変貌し。程なくして、辿り着いた。

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「……少し、遠回りをしていこうか。」

 

そのまま国道15号を北上し、大森や品川、出来たのかそうでないのかわからん高輪ゲートウェイ駅を横に流す。港区に入ったあたりで右折すれば、

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「あーーーー、懐かしい。」

仕事でやたら滅多と走った、レインボーブリッジだ。

このまま、よく走っていた東京湾のツーリングルートをなぞってみよう。

 

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お台場の暁埠頭から中央防波堤に渡り東京ゲートブリッジを渡る。

快晴ではあるがすっかり年末の空気で、ひとたび立ち止まろうものなら体が震えて止まらなくなる。

「お、またお目にかかれるとは…。」

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そんな私にエールを送ってくれているのか、すっかり雪化粧をした富士山が私を眺めてくれていた。うん、もう少しだからね。頑張りますよ。

 

 

そこから亀戸駅を南から北へ縦断して。

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スカイツリーを拝む。

「また機会があれば上りたいなぁ…でもあれ、揺れるんだよな。絶対揺れてる。」

その根元を横切って、

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よくスタンディングして渡った言問橋を渡れば。

「………もうすぐだね。」

 

 

 

 

 

 

 

貴方は、旅に出たことがあるだろうか。

 

見ず知らずの土地で、一人ぼっちになったことがあるだろうか。

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機械を使わず、夏の暑さと冬の寒さに幾日も向き合ったことがあるだろうか。

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屋根を持たずに一晩過ごし、満天の星空を見たことがあるだろうか。

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一見退屈そうに見える人生だが、その気になれば、いつだって誰だって、大冒険の主人公になれる。



私は、たくさんのものを見つけたよ。

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見たことも聞いたこともない道を歩く、面白さを。

 

見たことも聞いたこともない景色がくれる、感動を。

 

見たことも聞いたこともない人たちがくれる、笑顔の暖かさを。

 


もしあなたが、知らない世界を覗いてみたくなったら。

興味があるからとか、現状が退屈だからとか、あるいは、ここから逃げ出したいからとか、どんな理由でも、構わない。とにかく、ちょっと遠くへ出かけてみようかな、なんて思ったら。

 

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あなたの横をすり抜ける、風が翔けてゆくその先に、どうか想いを馳せてみてほしい。

どんな形であれ、あなたが自分の意志でその一歩を踏み出したのなら。

 

 

 

きっとその先に、一生モノの宝が転がっている。

 

 

 

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それは慟哭か、歓声か。

人目をはばからずあげた、寒空を切り裂くような叫び声が、真紅の塔にこだました。

 

「本当に、やり遂げたんだよな……!?

走行距離約17,115.2

胸中に湧き上がる想いは、ただただ信じられないというものばかりであった。

あまりにも無謀に出発して、あまりにも行き当たりばったりで。明日を生きられる保証すらもないまま、ただがむしゃらに旅を続けてきた。

安全も、金も、賛辞を得られる確約だってない、強行路。…それでも、成し遂げられたのだ。

 

いや、むしろそんな旅路だったからこそ、

「…楽しかったなぁ………っ!!

自由だった。

間違いなく、人生で最大級の一年だった。

ようやく実感を得た心は、次いで旅の思い出で満たされていって。

さすがに人目があるぶん涙は流さなかったが、嗚咽を感じながら笑顔になるという、これまた奇妙な顔をしてしまう。これが嬉し泣きってやつなのか…!

 

 

ひとしきり感傷に浸り、気持ちが落ち着くと。

最後に去来したのは、意外な感情であった。

「………終わってみると、案外あっけなかったかもな…?」

なんか、成すべきことをただやっただけ、って感じ。…我ながら、調子の良い性格である。

ああダメだ、また次の旅のことを考えてしまうぜ。

 

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人生という旅路に、終わりはない。

だが、ひとまず今回のところは。ここで一旦、筆を置かせていただくとしようか。

 

 

「ありがとう。私の愛した日本。」

ありがとう。私の紡いだ風来記。

きっとこの旅は、一生忘れられない宝物になるだろう。

 

一陣の風が長羽織を翻したのを合図に、ロケットⅢに跨った。

 

 

 

 

 

 

 

 

~・~・~

 

街中に出れば、正月を思わせる広告が否応なしに目に入ってくる。

帰省は控えてください、なんてコロナのせいで言われるんだろうけど、名古屋や札幌、大阪、東京、の人は帰れるんだろうか。帰りたいよなぁ…。

都会も田舎も、どっちもたくさん見てきたからわかる。どっちも楽しくて、どっちも美しい。

だから各々、帰ってやりたいことがあることだろう。

 

そうだなぁ。

 

「俺だったら…。」

 

旅の経験をきちんとまとめたいし、動画も撮りたいし、もちろんバイトもしたい。それから海外に向け英語も勉強したいけど…。それよりもまずは、

「俺だったら、家に引きこもっちゃおうかな。」

 

旅人として恥ずかしくないのか、なんて言われそうだが、いいのである。

水面に石を投げるがごとし。旅が自分とは何たるかを知る手段であるとするならば、旅の楽しみ方だって千差万別でいいはずである。

私にとってのそれは、ホッと一息つける馴染みある空間で、笑いながら話せる友人たちに、旅の冒険譚を自慢げに語ってみせることなのである。

旅をして痛感した。やはり、家は家で、いい。

 

だから、帰ったら一番に言ってやりたいのである。

 

 

 

~~

 

「おっやってるな。」

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国道から一本入った住宅地で、豪奢な構えの一軒家兼スナックはひっそりと灯りを放っていた。

 

駐車場にロケットⅢを乗り入れ、今更ながら緊張している胸を落ち着けて。

深呼吸をしてから、玄関を開けベルを鳴らす。

刹那に、「おかえりー!!」という、待ちに待っていた、待ち望んでいた言葉が、記憶の底にこべりついている声音で浴びせられた。

 

たまらず、目尻は下がり、唇は横一文字になって震え出し。

ああ、また情けない顔してんなと自嘲しながら、クシャクシャの顔でなんとか声を張り上げた。

 

「…っ! ただいまぁっ!!

 

 

 

                                          風来記

                                           おしまい

2 Comments

No name says...""
達成おめでとうございます!

旅とは人生そのもの。
木村様の記事を読み進めるに連れ、深い感銘を受けています。
旅を通しての着目点、その表現。感性の素晴らしさに驚いています。

ほんの一瞬、ほんの僅かな存在ながらも
木村様の旅の一部になれたことを光栄に思います。
出会いに感謝!ありがとうございます!

ひとまずはお疲れ様でした。
これからのご活躍を楽しみにしています。
2020.12.31 19:49 | URL | #- [edit]
木村峻佑 says..."Re: タイトルなし"
お祝いのお言葉、ありがとうございます‼︎
暗い話題の多い2020年でしたが、私の拙い文を楽しんでいただけた方がお一人でもいらしたのでしたら、もう、本望もいいとこです!

おっしゃる通り浅いご縁でしたかもしれませんが、それら一つ一つが積み重なって、私の旅を完成させてくれました。
あの日あの時出会っていただけて、本当に、ありがとうございました‼︎

…次も頑張ります!
2021.01.01 01:38 | URL | #- [edit]

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