風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

トライアンフ

“Thanks to you I feel like I have been traveling in Japan”

 

インスタグラムに寄せられたコメントである。

思わず目頭が熱くなった。

ああ、こんな私の旅でも、誰かを喜ばせることができたのか…!

 

やっぱ次は海外、絶対行きたいな。

その前に、ケリをつけちまうか!

 

 

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「霜はできているが…まぁ大丈夫だろ。」

本当は凍結の恐れがある山道で神奈川に入らず、一旦静岡の伊豆方面へと降り、そこから熱海に出て海沿いに神奈川に入る予定だったのだが…。

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富士山の雪もまるっきり少ないほどの好天が続いている。…ここまでお膳立てされているなら、直接神奈川に入ってしまおう。

それに、その山道には思い入れもあるのだ。

 

 

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神奈川住みの時、しょっちゅう遊びに来ていた山中湖を目にすると、つい涙を流してしまいそうになった。おかしいな、そこまで感傷的になるとは思わなかったんだが…。

頭では平静を保っていつつも、やはり体が懐かしい空気に打ち震えてしまっているのだろうか。意図せず、心拍数が上がってしまう。

 

富士山を見納めにすると、いよいよあの地名が見えてくる。

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「相模原

 道志 」

ああ。ついに、ナンバープレートの地名まで来ちまったよ…!

 

 

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山中湖から、国道413、通称道志みちへ入る。

事前にツイッターで確認しておいたとおり、塩カルはバラ撒いてあるが凍結箇所はなさそうだ。

 

湖畔まわりの平地からヘアピンの上りに差しかかり、山伏トンネルをくぐれば本格的に山道が始まる。

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「あー懐かしい! ここ!! 片岡さんと野宿したとこだぁ!」

 


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道志みちは、私が相模原に住んでいたころ何度となく走りに来ていた道である。

緩すぎずキツすぎずのカーブ群に、渋滞が起きにくいひっそりとした立地。ココという景勝地こそないが、清流と深緑を眺めながら走る往復2時間ほどは私にとって至福の時間だった。

 

そして私がニートだった時、旅に出ようと決意した道でもある。

 

だから、多少凍結のリスクはあれど、やっぱり通らねば後悔が残る、と思ったのである。

案の定路面はけっこう危うげないぐらいには乾いており、十分に注意していれば走破できそうな状況だ。

 

 

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その証拠に、中間地点にある道の駅どうしにはこんなにもライダーが集っていた。

今日ばかりは、日曜で心強かったかもしれない。

 

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喫茶店『貴澄』。

私が雑誌社に入社する際、編集部に送り付けた原稿にここでの物語を綴ったのだが…。あれ以来何度来ても準備中にしか立ち会えない。今回も結果は同じであった。

 

 

 

 

時刻は昼の少し前で、ライダーたちにとっては格好のライディングタイム。

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向かってくるライダーたちに手を振れば、当然の如く皆それに返してくれる。

いつもなら嬉しいってだけの気持ちなのだが、今日は…なんだか今日ばかりは…。

 

 

道志いちの超急カーブを抜け、両国橋にタイヤを載せれば。

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ついに来てしまった。神奈川県相模原市。

雄叫びを上げながら、看板の下をくぐった。

 

 

ここからは少々道が狭くなり、コーナリングも多くなる。

ギヤチェンジを確実にできない現状での峠越えは、下手すればエンスト頻発ものなのだろうが…。今回は恐くない。

なんせ、もう何度も走った道なのだ。パターンを覚えているから、先の状況に合わせて余裕を持って操作できる。今まで未知の道しか走ってこなかったから、なんだか妙な気分だ…。

 

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旅に出る少し前、土砂崩れで通行止めになっていた区間も復旧されている。

そこを越え、もう少し進んでいけば。

 

 

 

 

「抜け出たっ!」

道志みちのクネクネした区間は終了し、青野原の村落を突っ切る道に出る。

さっきまで頭上を覆っていた枯れ木はなくなり、大きく広がった青空が私とロケットⅢを優しく包んでくれる。そのやわらかなベールの一点から、白銀の陽光がカッと放射状に延びてきてが私たちを照らす。

 

髪、ボサボサ。羽織、日焼けしまくり。靴下もカンフーパンツも、ブーツに至るまで穴だらけ。

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グローブに至っては、空いた穴を塞いだガムテープですらも、摩耗してしまってまた穴が空いてしまっている有様だった。

ロケットⅢも同じ。土まみれサビまみれ、オイルは漏れてギヤもまともに入らない。

誰がどー見ても、どうしようもない、一人と一台。品位なんか微塵もない、格好の悪い一人と一台。

 

だが、私から見てみれば。

手を振り返してくれたライダーが、雲一つない水色の空が。燦然と輝く太陽が、私たちの帰還を祝福してくれているように思えてならない。

 

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それはまさに、私たちにとっての凱旋であった。

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