風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

Take Me Higher

「くっそぉおまだ痛いか…。」

寝違えたダメージはかなり大きいらしく、体を起こそうとすると首の後ろから肩甲骨まわりに鈍痛が走る。

まったく気が滅入るってものだ。せっかく今日は…。

「クリスマスイブだってのによぉ!」

 

 

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首は痛むが天候は良好なようで、朝日をキラキラと反射する駿河湾を横目に、国道1号を快走する。いつまでも眺めていたい景色だが、途中で国道139に折れて北上。山梨県を目指す。

 

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朝霧高原の看板が見えてくると、また気が滅入ることに気温が下がってくる。

さすがに電熱ウエアを着ているので凍えはしないが、やはりこの季節に富士へ遊びに来るのは…ちょっと考えものかもしれない。と思ってしまう程度に、木々は枯れはて寂しい光景が続いていた。クリスマスとはいえ平日だからか、車通りも少ない。

 

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朝霧高原に到着。この朝霧高原って四文字は、いつ見ても清々しい字面だなぁ。

富士山はちょこんと頭に雲を乗っけて、オシャレしている。その真下あたりには、かすかに雪が積もっているようだった。

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山梨県へ。

山梨県は何度か遊びに来ている場所だから、言ってしまえばもう私は行ったことがない県がない男になれている訳である。だが、まだまだ。ゴールするまでは達成感を感じられない。

何度か遊びに来ているのは山梨がなかなか走りがいのある土地だからなのだが、あいにく予報によると週末の天気はちょっと怪しいらしい。癪だが、居られるのは二日余りだけ。

仕方がないから、富士五湖でも回るとしよう。

 

国道139から離れたり合流したりしながら、富士五湖を巡る。

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本栖湖。私が一番思い出せない湖である。

ここに限らず、富士五湖のほとりにはキャンプ場がけっこうあるのだが…。ダートなんだよなぁ。

 

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続いて精進湖へ。融雪剤だか凍結防止剤だかわからないが、白いつぶつぶが路上に散乱している。どちらにせよバイクの敵であることには変わりないので、後続車が皆無なのをいいことに40/hペースで走る。

 

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「この精進湖レークホテルって…、泊まったことあったよなぁ?」

私が初めて富士山を見たのは、家族旅行で母に連れてきてもらった時だった。確かその時にここを利用したはずである…。

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富士山が見たいと母にねだっておいてなんだったが、正直言うと当時は富士山がそこまで好きではなかった。

なんというか、均整がとれすぎている。見た目良すぎ、面白みがなさすぎ…。だからこそ美しいのはわかるんだけど、もてはやされてるお姫様って感じがしてなんかいけ好かない。故郷の磐梯山の方が、よっぽどカッコいいじゃないか。

……そんなことを考えていた気がする。

 

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しかし考え方というのは変わるもので、今はあの姿を見てやっぱり良いなぁと思っている自分がいる。

やっと関東に戻れたことへの、安堵感だろうか。それもあるだろうが、あの端麗な姿は幾度もの変遷を経たことで生まれた形なのだ、ということに気付いてからは、敬意の念も抱いている。

何度何度も噴火を起こして、荒々しい何百年という月日を過ごしてきて。その結果として美しく雄々しい姿に落ち着く…というのは、まさに修行者の鑑ではないだろうか。

旅をしてきたからわかる。私にとって、富士山とは自己研鑽の象徴なのだ。

 

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西湖そばの川は凍てついている…ヤベェよ。

西湖沿いに東へ進むと、見たことのある景色が視界に映り始める。

ああ、昔ここで、冬キャンプの撮影したっけ…。

たしかこの道を進んでいくと、そう。ヘアピンの下り坂が2回続いて…。その先に、

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河口湖が見えるんだよな。

 

 

もうここまで来たら、見知った道である。何ヶ月も旅をしてきて、ようやく出会えた親しみのある道である。

河口湖を訪れたらいつも寄っている、大石公園に駐車する。

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時期になるとラベンダーとかが咲き乱れているのだが…。まぁ、当たり前か。

それにしたってこの辺りは観光客がけっこういるイメージなのだが、人があまりにも少なすぎる。クリスマスは、やっぱり家で過ごす人が多いのだろうか? コロナだし。

 

 

ここも懐かしいなぁ。カメラマン一人連れて、初めて単独でツーリングロケ企画したとき、ここで写真撮ったなぁ。

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クリスマスケーキも、寄り添う人も、暖かいコタツもないが、私の心中には充実した熱気が込み上げてきていた。

まだゴールではないが、日本列島東から西までを冒険してきて、再びこの地に足を踏み下ろすことができた。そんな瞬間に、ロケットⅢが、道着が、カメラが、バックパック諸々旅の相棒たちがそばにいてくれる。これ以上幸せなことがあるだろうか。

 

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思わず喜びの劈掛拳。

どうだろう富士さん、私、あの頃と比べて少しは強くなれただろうか。思慮深くなっただろうか。

それはどうかわからないけれど。間違いなく私は、在りし日の私より背が伸びている。そうハッキリと言い放てる確信こそが、私にとってのこの上のないクリスマスプレゼントだった。

 

 

 

 

 

あの時 誓った理想の未来に 嘘はつけない

                                          JUJU

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