風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

天竜川を越えたら

まだ目が醒めてしまっているので、ぼんやりとインスタグラムの投稿を眺めていた。

 

 

おお、この人の写真はスゲェなぁ。私もレタッチとかしたほうがいいのかなぁ…。

お、こっちの人は海外を飛び回ってるのか…。

思えばこの旅でも、色々な旅人の話を聞いてきた。徒歩旅で切り詰めた人だったり、世界を横断した人だったり。その人たちの苦悩やスケールに比べたら、私の旅なんて、まだまだちっぽけなものに思えてしまう。

…ちょっと、シュンとした気分になった。

 

「明日の道のりでも、確認してから寝るか…。」

旅に出てからこのかた、暇になった時は地図を眺めるようになっていた。

明日はこの道を辿っていって、ここを曲がって、この道に入って…。

それからここに合流して進めば、次の県に入って。そこからまた……。

と、シミュレーションしているうちに、地図上で日本一周を何度もしてしまったものである。

 

だがそんな日々も、終わりが見えてきた。グーグルマップを右へ少しスライドすれば、東京の文字がすぐ現れる。

「…。」

なんとなくそれが嫌で、左の方をスライドしてみる。和歌山、兵庫、鳥取…。

「あー、けっきょく白兎神社は行かなかったな。」

せっかく隣で野宿したのに。まぁあの時は雨も降ってたしなぁ。

 

宍道湖…未だにすぐしんじことは読めないなぁ。

佐賀の波戸岬…。今思えば、沖縄の辺戸岬と名前似てるね。荒崎岬も行けなかったなぁ。なんで1日で一周なんてしたんだろ。

岬といえば、四国の東端は…これ、なんて読むんだろうな。

 

まだまだわからないことが多すぎる。苦笑しながら、さらに来た道を戻ってみた。

岐阜の下呂から郡上までの横道、懐かしいなぁ。雨に降られて、何もできず1日過ごしたっけ。

砺波の温泉には2回も寄っちゃったなぁ。

能登の七尾…ああ、ななおって読みで合ってたんだ。

それにしても禄剛崎までの道は、無駄にタイトだったなー。

 

もうちょっと北へ。

魚沼は山奥なのに、けっこうお店とかあったな。あの時は世話になりっぱなしだった。

秋田の金萬、美味かったなぁ。

青森の列子さんは、元気にしてるだろうか。

ふふ、南には、青函トンネルは車で通れるって思ってる人もいたなぁ。

北海道は…良かったなぁ。

 

気付けば、ふるふるとiPadが揺れているのに気付く。

 

なんだ、私だって良い旅してるんじゃないか。

周りなんて気にすることはない。自分が楽しけりゃ、それでいーのだ。

 

 

 

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97歳だというおばあちゃんとその息子の管理人さんに見送られ、蒲郡の宿『海岸荘』を出る。

 

国道23号はまたしても幹線道路となり、月曜の仕事に追われる労働者と車で少しばかり込み合っているが。順調なペースで距離を稼いでいく。

それが国道1号に接続したところで、

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「いよいよ静岡県だ。」

この1号線は、東京に続いている。

 

 

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潮見坂で太平洋の隣に出でて、浜名大橋で浜名湖の湖口を越すと、1号線は市街地を這うように高度を下げいく。

浜松といえば、ホンダ、ヤマハ、スズキという日本の3大バイクメーカーが創業された地であり、“バイクのふるさと”との異名も持つライダーにとって由緒正しき(?)場所だ。

そんな場所だから前の仕事の性質上、よくこちらへイベントの手伝いに来たり、竜洋のテストコースへ走りに来たものである。


といっても、あくまで仕事での話。ここらの道はあまり覚えていないし、実際走ったことがない場所の方が多いはずだが…。

「なんか、懐かしい雰囲気だな。」

街並みの景色なんて日本全国どこでも大差ないと思っていたが、それでも地域によって目に見えない傾向があるのだろうか。

もう、ここは関東。住み慣れた土地。そんな感触を、心が知らずのうちに感じ取っている。

コンビニで休憩中、おばちゃんに「どこから来て、どこまで行くの?」と聞かれた折には、「埼玉から、東京まで」と答えておいた。

 

 

そんな見慣れたような市街地を進んでいくと、大河が目の前を横切る。その河の名前を見て思わず声が出た。

「おお、お前なのか!」

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お前なのか、天竜川!

長野以来だなぁ! あの時は空腹と暑さでヘロヘロだったのを覚えているぞ。相変わらず、雄大な流れじゃあないか。

そういえばあの時は写真を撮る気力もなかったと思い出し、川面が遠いながらもシャッターを切る。

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なんとなくだが、思う。これを越えたら、もう長旅の途中…って気分じゃなくなっちゃうんだろう。もう、相模ナンバーも珍しくない地域になる気がする。

切ないやらやり遂げたやら複雑な気持ちを咀嚼しながら、天竜川橋を渡った。

 

 

~~

静岡といえば、やっぱこれでしょう。」

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チェーン店『さわやか』の炭焼きハンバーグ。大俵ハンバーグのように、目の前でお肉の塊をカットして焼いてくれるハンバーグだ。

やわらかくも噛み応えのある肉の反発力に舌鼓を打っていれば、5分ほどでプレートは空になってしまう。時計を確認してみると、まだ1245分。珍しくちゃんと昼時に飯を食べられたが、さてどうしようか。

これ以上進むのも億劫だしなぁ…せっかくだから行ってみるか。

 

 

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訪れたのは、ヤマハ発動機株式会社。スズキの磐田工場も近くにあるのだけど…向こうは見学できるのかどうかわからん。

ここの敷地内にはコミュニケーションプラザなるものが併設されており、一般の人でもそこに入場してヤマハワールドを拝見できるのだ。

「ヤマハオーナーでもないし、ヤマハ好きでもない。何しに来たんだ、って感じだが…。」

無料だし、入ってみるとしよう。

 

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施設に入ってまず目に飛び込んでくるのは、現行のヤマハモデル群。

「おお、MTシリーズのヘッドライトはこんなカッコよくなってたのか…。」

バイク雑誌の仕事を辞めてから、ロクにバイク情報に目を向けてなかったからなぁ。今の私じゃ知らないモデルが、もう世間には普及し始めるころだろう。

 

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ヤマハはバイクだけでなくマリンスポーツやATV製品も手掛けており、それらの最新機種も見ることができる。詳しくないけど。

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そうそう。YAMAHAブランドはもともと、『日本楽器製造』という楽器制作会社であったことも忘れてはいけない。ヤマハの名のもとになったのは、その創業者の山葉寅楠(やまはとらくす)氏の性。

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シンボルマークが音叉を組み合わせた形になっているのも、そういった背景からである。ちなみに日本楽器製造の音叉マークは円をはみ出しておらず、ヤマハ発動機販売の音叉マークは円をはみ出している。テストに出そう。

ややこしいといえば、ヤマハ発動機とヤマハ発動機販売は別の窓口だったっけなぁ。編集部時代は、軽く悩まされたっけ。

 

 

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現行車だけでなく往年の名車も置かれているが、そこまでヤマハ…もとい旧車好きじゃないので、てきとうに流す。本来であれば彼らの駆動音が聴けるブースもあるのだが、コロナ対策のためヘッドホンが封じられているのが残念だった。

 

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強いて言うなら、ヤマハは3気筒エンジンを作っているという点が素晴らしいと思う。

現在バイク業界で3気筒エンジンをリリースしているのは、主にヤマハとトライアンフの2社だけ。そう、私のロケットⅢも3気筒なのだ。

 

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あとは…、最後に見かけた、このパリダカのコーナーが妙にグッときた。

日本が終わったら…と考えていた時期だけに、考えさせられるものがある。

この国を走ってみて思い知らされたのは、本当に道がどこでも舗装されているな、ということ。おかげでロケットⅢでもここまで旅を続けてこれたのだが、海外ではそうはいかないだろう。

パリダカまで過激なダートには突っ込まないとしても、海の向こうを走ろうとするなら…、オフ車が欲しいなぁ。

 

 

 

でもやっぱ、私のロケットⅢがイチバンなんだよなぁ。

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岩下コレクションから出たときもそうだったが、多数のバイクを見た後に自分の相棒を見ると、なんだか妙にホッとしてしまう。

「東京に戻ったら、ちゃんと直してもらおーなぁ…。」

海外には連れて行けずとも、まだまだお前には乗り続けたいのだ。だから壊れてくれるな、東京まで。

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