風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

瀬戸際

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「おーすっげーー。」

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目と鼻の先を、巨大な金属の塊が轟音を上げて横切る。

 

 

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それは急激に、だがゆっくりとした挙動で、滑走路の上にふわりと降り立つ。その直後に引き裂かれた空気が音を伴って巻き戻り、髪を揺らす。

ここは大阪と兵庫にまたがる、大阪国際空港の脇を流れる千里川土手。

泉さんが「虫取り網持ってたら取れそーなぐらい近くでみれるでー!」と仰っていたのが気になったので来てみたのだが…。なるほどこれは確かに、手が届きそうだ。

 

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見下ろされる感覚が癪だから、正直あんまり飛行機って気にしたことはないが。やっぱり空を制する人間の叡智は、カッコいいし脱帽すべきものだよなぁ……。

 

 

とまぁ、飛行機を間近で拝めたのは結構なのだが。ここで一つ洒落にならない問題が発生してしまった。

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「インジケーター表記は2…なのにニュートラル……。ギヤが…抜けてる……?」

1速、ニュートラルに入らないなんてのは今までもたまにあったことだが、唐突にミッションが異常をきたしてしまった。

1速に入れるのに78回はペダルをガチャガチャ踏む羽目になるし、そこから2速に上げられない。ニュートラルから抜け出せなくなってしまう。2速に入れられたとしても、走行中に外れてしまうことも多々。35の挙動も、かなり不安定になってしまった。

信号明けで手間取り、唐突なエンジンブレーキのせいで追突の恐怖もあり。息をつくようにエンジンの空ぶかし音が鳴るようになっている有様。

 

これは、本当にヤバイ。

 

ここまで頻繁にギヤ抜けするとなると、原因は十中八九トランスミッション系パーツの摩耗となる。となると当然直すのには部品交換が必要となるのだが…、その辺りのパーツは高価と相場が決まっているうえ、エンジンの分解費用もかかる。

幸い、トライアンフ大阪は近くにあるが…。

「わかりきったことだから…、わざわざ忠告を受けに行くより、このまま走り続けるか?」

「いやいや、もしかしたら軽微の損傷で済んでいるかもしれないし…。」

結局、最悪ロケットⅢは預けて徒歩で旅をしてもいいと腹をくくり、トライアンフへ持ち込んだのだが。返答は非情なものだった。

 

「もちろん、預かれますし修理もさせていただきますが…。恐らく、23ヶ月はかかるでしょうね。それは、現実的ではないかと……。」

……遠回しにウチに持ち込まんでくれ言われてるように聞こえる。

まぁそれが被害妄想だとしても、長期間預けることになるのはたしかに現実的ではない。

「フェリーか、任意保険のレッカーを使えば一気に東京まで運べますが…。」

との提案も受けるが、ここまできてそれは……、

それは、あんまりだろう。

 

 

 

 

「はぁ………。」

思わず…いや意図してでもため息をつきたくなる。

 

っとに今年は、後厄もいいとこだな。

 

「スマン、ロケットⅢ。お前を福島までは連れていけないよ。」

でも……。東京までは、ゴールまでは付き合ってくれるか?

 

 

 

覚悟をしたら、後は楽しむだけ。

なに、相棒の癖が増えただけさ。

 

トライアンフ大阪からの帰り道、ギヤ抜けの癖を見つけることに専念する。

特に酷いのは2速か…。だったら2速は飛び越して、1速と3速でその領分をカバーするか…。問題は13の変速も不安定なことだけど…”“4速もキツそうか…? 高速域でのギヤ抜けはさすがにキツい…。ここも一気に5に上げて…ああでも、35も安定しない!””コーナリングの出口でトラクションを失うのは本当に生死にかかわるから…、いっそクラッチを切ってクリアしてしまうか。しかし上り坂は…。

 

もう、頭の中ゴッチャゴチャである。ただでさえアイドリングが安定しないのに、ギヤチェンジにまで神経を使わんといけないとは。跳ね馬か。

あらかじめ断っておきたいが、もう今後は、ロケットⅢで峠などエンジンを酷使する場所は走らないことにした。たとえその先に絶景が待っていようと、命あっての物種である。

故にあまり面白い場所は紹介できないかもしれないが、ご理解いただきたい。

 

 

残りあと20日あまり。もつか、俺の体。もつか、俺の相棒たち。

瀬戸際のデッドヒートが、今幕を開けた。

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