風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

居候再び

「えっ本当ですか!?

「ああ。俺の部屋やから、自由に使ってくれぇ。」

山形は天童でお世話になった泉さんのご自宅は、大阪

ということで大阪入りの直前、お勧めの場所などを聞くため連絡を取り合っていたのだが…とんでもないご厚意にまた預からせていただくことになってしまった。

泉さん宅の、彼の部屋を使っていいとご提案いただいたのである。

 

「ウチの息子もさぁ、もうすぐバイクの免許取るって言ってるから。何か教えてあげて~。」

「ハイッ、できる限りご協力させていただきます!」

と言い放ったものの、前職バイク雑誌編集部とはいえちゃんと力添えできるだろうか。

 

 

~~

125

 

昼前にご自宅に訪問させていただき、奥さんにご挨拶。泉さんのお部屋はご家族の居住スペースと階で隔てられており、いろいろと勝手を教えていただいたあと「では、ご自由に~!」と笑顔で1階を託されてしまった。

…俺なんかほんとに今日初対面なのに、デカい器だなぁ……!

 

お言葉に甘えて屋根のもと仕事用の原稿を書いていると、外出していた高一の息子さんが帰ってくる。そそくさと、席を立ち、ご挨拶。

「すっごいカッコいいですね…!」

いつも道行く人から頂くロケットⅢへのお言葉だが、やはり若者に言われるとより嬉しい。

気を良くしてしまった私は、跨らせたりして足着きのウンチクなど講釈を垂れ流してしまう。しまった…めんどくさい大人だと思われただろうか…!

 

しかしながら息子さんも笑顔で私の話に耳を傾けてくれて、緊張は一瞬でほぐれた。

温かい家庭だ…。

 

目じりをじんわりとさせながら、とりあえずこの日は原稿を仕上げて眠りについた。

 

~~

126

 

「日曜か…。」

わざわざロケットⅢでどこかへ行っても人が多そうだし、この辺りを散歩してみよう。

 

やりなおし神社という地図上の別名に惹かれて、姫島神社へ足を運んだ。

IMG_5323.jpg

「すごいカーブの鳥居だな…。」

 

IMG_5306.jpg

御祭神である阿迦留姫命(あかるひめのみこと)は赤い玉より生まれた美人で、新羅の王子、天之日矛(あめのひぼこ)と結婚して妻になったそうだ。

が、献身的に尽くしたにも関わらず夫の態度は高慢だったそうで、阿迦留姫命は夫から逃げ筑紫(大分)の比売島(ひめじま)へ。しかしここは新羅から近いから追われるかもと、更に逃げてここ難波の地に辿り着いたそうである。そしてこの地はかつて居た島の名にちなまれ、比売島…つまりは姫島と名付けられたらしい。

…なんだか昔話にしては妙に現実じみたストーリーだな。

IMG_5274.jpg

その後姫はここで機織りの技術などを教え暮らしましたとさ…という伝説である。

そんな由緒があったからこそ、ここは新しい日々を始める場としてやりなおし神社と地元民に親しまれているそうだ。

住宅地の中にのんびりと佇む境内は、小ぶりだがよく整備されていて確かに愛されている感じ。姫の伝説にちなみ、赤い玉を穴の空いた碑に入るまで投げ込むという変わった祈願も行なわれていた。

 

IMG_5308.jpg

白蛇の神が住んでいたという大楠。昭和20年の大阪大空襲で焼けてしまったが、当時の人々が周りに三本の後継樹を植えたことで、根がつながり今も息づいているのだとか。その復活模様もまた、やりなおしとして崇められているみたいだ。

ちなみにこの裏にある結び稲荷の御由緒には、

何もせずに良いご縁はございません。いろんな人に会ったり、自分を磨いたりと努力した事が実を結びますように。と白蛇の神さまにお詣りください

と、神社にしては珍しい諭すような一文が書いてある。

 

 

本社にお参りをすると、隣に風車が置かれた台座があるのに気付く。

IMG_5287.jpg

献風台というそうで、阿迦留姫命は良い風に恵まれたからこそ海を越えこの地にやってこれた・・・との想いで設置されたそうだ。

台座の上に良い風を入れたい物を置き、備え付けのうちはで風車を回すらしい。

「良い風を入れたい物っていったってな…。」

風は好きだが、色々と飛ばされたら困るものばかりである。

IMG_5288.jpg

苦し紛れに、ロケットⅢのキーを置いていい追い風が吹きますようにとうちはを何度もあおぐことにした。

 

IMG_5314.jpg

生田神社にもあったように、ここにも12月仕様の御朱印を発見。

2ページ分を使う大ボリュームで、初穂料も1,000円と大ボリューム。

「残りはあと…4ページ分か。」

と御朱印帖の終わりを寂しく思いながら、その場を後にした。

 

 

 

 

IMG_5380_20201207144317a2c.jpg

淀川沿いの河川敷に出て、対岸のビル群とカルガモを眺めたり、ハトを追いかけたりしながらぼんやりと歩く。

「痛」

足の裏に尖った草が触れた痛み。

「そーだったなー…。」

IMG_5414.jpg

もう靴の裏から景色が見えるほどだったんだっけ。

さすがにあと1ヶ月ぐらいはもつだろうが……、足元には気を付けないとな。

 

 

~~

その晩、まさかのサプライズがあった。

「鍋食べる?」

「えっ…!」

ありがたいことにご家族の食事を、分けていただけるみたいだ。待っててねと言われ忠犬の如く待っていると…。

IMG_5486.jpg

これ……私のためにわざわざ作っていただいてるよね…?

 

感涙しそうになっていると、そばで何やらドタドタと物音が。

「ごめんね、娘が荷物取りに来てて…。」

あ、それってあのパルクールの!?

 

たまらず部屋を飛び出して、ご挨拶させていただく。

「ウオーすげー本物だぁ!」

IMG_5484.jpg

覚えているだろうか。天童で泉さんとお会いした時、娘はパルクール世界一だと言っていたことを。

私はパルクールをやったことはないが、その忍者じみた動きに憧れないはずもなく。

さながら芸能人にあった時のような喜声を人生で初めてあげ、こうして無茶を言って弟さんと共に写真も撮らせていただいたのだった。光栄だー!

 

 

 

世界一のパルクーラー(パルクーリスト?)一行をお見送りさせていただいたあと、鍋に火を入れ思いっきり肉にがっつく。

「いい夜だぁ………。」

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する