大阪トラック街道
12月2日
「本当に、ありがとうございました!」
WAKUで頂いた料理はどれも本当に美味しく、形容ではなく涙が出そうになるほど笑顔になれるものだった。
おまけに朝は弁当も用意していただき、感謝の極みである。
「ええねんええねん、僕も元気もらったから! 気ぃつけてな!」
“今は20代でしかできないことをしたらいい。30代になったらまたその時にしかできないことを。40代も50代も…”
と言っていた、店長の言葉が心に残る。
そうして悔いなく生きていけば、いつか私も誰かを笑顔にすることができるのだろうか。
深々と頭を下げ、神戸を東へ。
~~
高速道路と並行する幹線道路をひた走る。地図上で見ればそう離れていないから、大阪へはすぐに着くはずだ。
時折四方をトラックに塞がれ視界を奪われつつも、流れ自体は早くないのでのんびりとクルージングを続ける。やがて尼崎市に入り、左門殿川にさしかかると。いよいよ目当ての看板が見えてきた。
「ウオオオ! ついに辿り着いたぜ、大阪~~~~!!」
別に何か目的があるわけではないのだが、やはり東の東京に並ぶ西の大阪。旅の区切りともいえる大都会への到着は、感慨深いものがある。辿り着いた達成感は、身を震わせるほどだった。
「うおービルがいっぱい見える!」
あとはまぁ、私自身大阪にまともに来たのは初めてなので、かなりワクワクして身が震えているのも事実だろう。
とはいえご存知のとおり、大阪はコロナ騒ぎの真っ只中。非常に残念無念であるのだが、街中に長居することもできまい…。
ということで、ひとまず海側を流してみることにした。
「ここがユニバーサスルタジオちゃんですか…。」
淀川を渡り、すぐ港湾部へ向かうと有名なテーマパーク。まぁいろいろな理由で入るつもりはないのだが…。
東京など都会の海沿いにありがちな大橋を渡り、まずは舞洲なる島へ向かってみる。
異様な外観の建造物がすぐ目に飛び込むが、ここはテーマパークではなく工場らしい。
辺り一帯も、コンビニなどはあれどひととおり工場のようだ。
路肩に並ぶ貨物車を横目に、島の西端を目指してみる。
辺りにはグラウンドやスタジアムが並んでおり、どうやらスポーツマンたち御用の場所のようである。
なにかいい景色がありそうなストレート。
が、その先はグランピング施設の敷地となっていた。
なんだよー海見せてくれたっていいじゃんか。
振り返ると『新夕陽ヶ丘』なるいい感じの公園が。
昼時だし、ここで弁当を食べますか。
あまり手入れがされていないのか、草が伸び放題でとことん幅が狭くなった石段を上っていく。高台に上るぶん、さぞいい景色が見えるのかと思いきや…。
んーーー微妙(笑)
とはいえ神戸方面はまるまる一望でき、ちょうど左にあるクレーンの奥には淡路島、そして明石大橋がぼんやりと眺められる。
「とすると、三宮はあっちのあたりかなぁ…。」
「店長、いただきます!」
荒れ放題で誰も来ないであろうガゼボの下、のんびりとオムライスに舌鼓を打った。
やっぱり笑顔になれる味だ。
~~
今度は夢舞大橋なるものを渡り、夢洲へ。
「夢ねぇ…。」
懐が大きいほど夢は詰め込みやすいというが。いかんせん、こざっぱりしすぎではないだろうか。
大阪といえど、ここまでくればやはり荒野は見えるものか。
そこから海底トンネルをくぐり、南港。
おーでっけぇタワーだこと。
大阪府咲洲庁舎という52階建てのビルらしい。そーいや、アベノハルカスっていうのはどこにあるんだろうな?
やや内陸に戻り、住之江区の県道29へ。
おお、町だ町だ。デッカくはないが、ちゃんと港湾部にまで人口は散っているようだな。
ほどなくして堺に入る。
「記憶によれば……確か、貿易が盛んだったとこだっけ?」
間違った記憶だったのか貿易船らしきものは見えないが、シャープなど大企業の工場が連なっているのが見える辺り、重要な地域なのは間違いないのだろう。
それに伴って相変わらずトラックだらけである。
そのシャープ工場そばには広い公園があったわけだが、意外や意外。こんなはずれの場所に、けっこう多くの人が集まって昼過ぎの余暇を過ごしていた。
ドッグランがあるから、愛犬家たち憩いの場になっているのだろう。
ちなみにそこの突端から見た海はコレ。どうものっぺりしている。
一応東京は港区で働いていた身分からすれば、もうちょっとオシャレな場所もあるのかと思っていたが。
どうやら大阪は、働く場所は働く場所、としっかりケジメをつけているようである。
「…ゴホッゴホッ。っくぁーーー! これはキツい!」
また違う埠頭である築港新町へも向かってみたのだが、こちらはよりトラックの量と、その排気ガスの濃さが凄まじい。
今まで味わったこともない臭いを振り切るようにトラック群を追い抜き、直線路を突き進む。
が、こちらは突端へたどり着く前に警備員にストップさせられてしまった。この先は私有地なんだって。
そばにはまた同じようなバカ広い公園があるのだが、もう歩かなくてもいいだろう。多分…ここも同じような景色だろうから……。
すると大阪の港湾部はひと通り見て回ってしまったことになる。
仕方がない。街を突っ切って、淀川まで戻ってみるか。
どこか寂れた雰囲気のある石津川駅から、国道26を使ってひたすら北へ。
道路の脇には次第に飲食店が目立つようになっていき、やがてそれらは百貨店など背の高いものへと変貌していき。
空の面積はどんどん小さくなっていき、道路は兵庫で見たような全面一通の区間にさしかかる。
「ウオオオ…! 大阪すげぇええ…!」
兵庫の街並みにも驚いたが、やはり。規模が違う。
オフィスビルのガラスに映るのはまた別のオフィスビル…という久方ぶりに見る光景に、思わず心が躍る。
大阪というと、あの、道頓堀だとかの世俗的な光景ばかりが頭にあったが…なるほどやはり、キメるところはキメているようである。
整然と佇む巨大すぎる大阪駅を見て、”やっぱり明日、万全の注意を払って。街歩き、しよう。”と決心したのだった。