風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

鬼退治

 

 

私は、不器用な人間である。

あれこれとやる事成すことすべてに理由をつけたがり、自分が納得できる解答が得られるまで思考を絶やすことができない。四六時中心中でブツブツブツブツと無意味な言葉選びを続けている。

そんなときは大抵、その言葉たちを文章という目に見える形で残しておけば、気が済む。

だから今日も、こうして指を動かしているのだが…この感情が収まることはないかもしれない。

 

 

 

 

「くそッ足りない!」

思わずベッドを打ち叩く。

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その拳を打ち込んだベッドですら、憎々しく思えてくる。まるで今のボケた自分のようで。

 

いくら格安になっているとはいえ…利用しすぎだ、宿を。

GoToは有り難い限りだが、財布が萎んでいく定めは変わらないわけで。結局は私の気の緩みが、そのまま自分の首を絞めるという事実は未来永劫変わらないのだ。

「年末をゴールに…するしかないかもな。」

“1年かけて旅をするなんて掲げていた自分が馬鹿馬鹿しい。予定通りにいかないなんてことはわかっていたが、こんな形で自業自得に旅程を狂わすのは、筆舌に尽くしがたい自己嫌悪の念を覚えさせる。

 

始まりはどこだ。京都か。京都で泊まった時か。それとも鳥取か…。

安心・快適という感情はまさに麻薬のようなもので、一度利用し始めると私の心を急速に蝕んでいった。結果今日、私は醜く怠惰な旅人となってしまった。

宿では自炊できない…劈掛拳の練習もしづらい…という言い訳が、私のルーチンをボロボロに崩していく。ただの遠方で暮らす日常、楽しめればそれでいい旅行者気分に染め上げられていく。

 

 

こんなんは私の望んだ旅人じゃない。

わかっていたのにそうなってしまった自分への、嫌悪感が収まらない。

 

私の中の、研ぎ澄ませていた感覚というか、生の実感が、急速に霧散していっているのが手に取るようにわかる。

一畳ほどのテント内で過ごす、あの閉塞感が。いつ襲われるかわからない、あの不安感が。毎晩納豆ご飯のみの、あの空腹感が。寝袋で丸まって寝た、あの寒さが。息を切らしながら体を動かした、早朝の劈掛拳が。

どれもかれも快適とは真逆の辛苦たちが、私を確かに強くしてくれていたのだ。

だのに今はそれを恐れて…。私は…、なんのために旅に出たというのだ。

 

「………。」

とりあえず明日は、野宿しよう。

 

どこまで取り戻せるかはわからないが、自分が嫌いな自分になってはならないのだ。

そう誓ったはずだ。

 

 

 

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「よし、愚痴終了!」

一晩自分を叱責し続けたら、幾分か気は済んだ。

 

初日の出を拝めないのは残念だが、とりあえずは年末ゴールの予定でいくしかない。

沖縄でもそうだったように、覚悟を決めれば、あとはそれを楽しむだけ。目の前のことに集中しよう。

 

ひとまず岡山では28日にちょっとした用事があるので、それまでブラブラしていないといけない。

岡山といえば……桃太郎か。やっぱり。

 

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そんなわけで、吉備路へ向かって北上する。

「あ…、きびだんごってそういう……。」

今更な気付きに相槌を打ちつつ、たどり着きたるは吉備津神社だ。

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おー早速きびだんごの看板が見える見える。

参拝してきたら、食べにこよっと。

 

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いくつもの提灯が特徴的な吉備津神社正門。

その前には、ここの御祭神・大吉備津彦命が温羅(うら)一族と矢を射り合う際、矢を置いたといわれる矢置岩が鎮座している。

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温羅というのは百済の王子ともされる朝廷に対抗する者で、一族はこの辺で悪事をして人々を困らせていた。

そこへ朝廷から派遣された吉備津彦命が、犬飼部、鳥飼部、猿飼部の三人の部下と共に、それを退治したのである。

…もうお分かりだろうか。その逸話こそが、桃太郎伝説の発祥となっているのである。

 

その温羅が城を構えていたという鬼ノ城にも行ってみたかったが、山の方なので今回は断念。桃太郎ゆかりのこちらへ来たという訳だ。

 

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ちなみにその犬飼…ってわけではないが、かの有名な犬養 毅(木堂)も岡山市川入の出身だったりする。駐車場に銅像が建てられていた。

 

 

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本殿に参り、二礼二拍手、一礼。

私の中の、怠け鬼を退治できますように――!

と、いつもとは違った願掛けをした。

 

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本殿は比翼入母屋造という建築様式となっており、この様式は全国でなんとここだけであるという国宝である。故にこれは、吉備津造とも呼ばれるらしい。

確かに色々な神社を見てきたが、こういうのは初めてかもしれない。金と朱塗りで装飾された、三角屋根がとても艶やかだ。

 

 

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脇へ回り、廻廊。

すっげえぇ…なんて長さの廊下だ。

その長さたるや360m。1579年の再建以来の姿で、自然地形のまま一直線に建てられているらしい。

 

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伏見稲荷のような豪華絢爛さはないが、こちらはこちらで木の暖かさ伝わる柔らかな雰囲気である。

録音であろうが境内には笙の笛の音が響いており、足音を鳴らしながら歩いていると、平安時代にトリップした気分になれる。

 

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紅葉も見ごろだ。

ゆっくりと、だが確実に落ちていく葉の命が名残惜しい。

 

 

 

ひととおり見て回ったら、駐車場に戻って吉備団子である。

 

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吉備団子はうどんかぜんざいに入っているというので、ぜんざいを注文。甘い汁の上に、やや黄みがかった白い生地が浮いていた。

箸でつまみ上げてみると、真ん丸…ではなく平たい形。…団子なのかこれ。

まるまる一つを口に入れず、噛んでみる…と、伸びる伸びる。生地が伸びる。これ…団子っていうより餅じゃないか??

ぜんざいに浸かっていたのでほんのり甘いが、やはり団子自体が甘いという訳ではないらしい。やっぱり餅じゃないか。

 

拍子抜け感を隠し切れないまま、600円を払って店を出る。…まだ昼だけど、もう野宿場所を探しちゃおっかなぁ…。

なんせもう、本当に日が短い。14時ごろなのに、山が橙に見えるときがあるぐらいだ。

今日は野宿を目的に1日を始めたぐらいだから、早くてもいいだろう。

 

「さて…どこに目星をつけようかな…。」

グーグルマップを開き、スクロールとズームイン・アウトを繰り返す。久々ってわけでもないのだが、なんだかこの手触りが妙に懐かしく、安心できるように思えた。

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