無心の海岸線
11月18日
高知市から海沿いの国道55を通り、足摺岬と対となる室戸岬を目指す。
海沿い…とはいっても波打ち際を走れる区間は少なく、大半は特に味のない山際を走らされることとなった。
狭路といい、四国の道路事情は厳しいのだろうか。これだけの長い区間、海を見ながら走れたら気持ちよさそうなんだが…。
愚痴りながら走り続けていると、いつの間にか岬は目と鼻の先になっていた。
山肌に貼りついている道は…、灯台にでもいくんだろうか。
なんだかダルそうなので、下の道を進み駐車場につける。
室戸岬は白い砂と黒い泥が交互に重なった地層・タービダイトが見物な海岸のようである。
黒い岩が蒼海によく映える。
右を向けば足摺方面のはずだが、さすがにそちらまでは見えなかった。
ゴジラの頭みたいなギザギザ岩。桂浜の龍王岬でも見かけたが、この岩に自生している黄色い花はなんなんだろう。逞しい。
ここより少し西の安芸郡北川村に生まれた中岡慎太郎先生。龍馬が海援隊を率いたのと同様、陸援隊を率いた人物だ。京都で龍馬と共に凶刃に倒れた人物として有名か。
「自然しかないところだな…。」
大地の変遷を色濃く感じられる場所、ジオパーク。確かに非日常感のある自然群は圧倒的だが、言ってみれば自然しかない場所でもある。“なんちゃないけどこの大自然、味わっていっとうぜ!!”なんて言い訳じみた張り紙まであるぐらいだ。
まだ真昼か。
もう、徳島まで行っちゃおうか?
天気予報を見ても、高知方面は明日から天気が崩れそうだし。何より…。
「情けないものだな…。」
残高が少ない。
…しょうがない、ちょっとズルしてしまおうか。
先ほどまでの期待に応えるかのように、国道は波打ち際へとラインを変えてゆく。ただ別段、特筆すべき点もない海岸線だ。小倉のガンダムバーで会ったハーレー乗りも、“高知はただ何もない海沿いを走らされただけ”と言っていたか。
夫婦岩のような奇岩はあるのだが。
勘違いしないでほしいが、悪い道ではないのだ。むしろ快走路の部類に入る。
海は綺麗だし、交通量も少ない。急カーブがあるわけでもない。
だが、あまりにも何もなさすぎて、どこか心が空っぽになってしまう道だった。
…なんというか、海版北海道のような感じである。
島はおろか半島が見えるわけでもなく、太平洋ならではの果てがない海原が視界の大部分を占める。
一直線の水平線を横目に流せば流すほど、なにか思考するのが面倒くさくなっていった。そういえば昼飯を食べていないが、空腹感すら忘れてきてしまっている。
今日は、走りたい日だったのかな。
徳島に入る。
海陽町あたりは入江に小島があったりして面白かったが、やはり止まるほどではなく。
これまた特筆すべきことが見当たらない山道をひたすら辿り続けていき…。
「なぁんもねぇなぁ…。」
けっこう進み、阿南市に入ってしまった。
…ヤバイ。まるで何も考えずに走ってきてしまった。
前職の先輩に四国生まれの方がいたので、あらかじめ聞いてはいたのだが。
返答は”徳島の見どころはほとんど山にある”というもので、ガックシきてしまった。今の時期、四国の山は行きたくない…。
どうしよう。
徳島、行ってみたい場所を本当に決められていない。
ん~~~~~~~~~
寝よう。