風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

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「今日はもう高知まで行っちゃおうと思うんですよ。」

「下道ですか? でしたら山を越えていく道になりますね。」

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四万十川キャンプ場にて、お隣さんだった今城さんなる女性とお話し、朝が始まる。

高速だと1時間半ほど…ということは、下道だと2時間ほどであろうか。

「ごめんなさいね、昨日はうるさくしちゃって。」

「いえいえ、こちらこそ興を削いでしまって、申し訳ないです。」

実は昨晩はなかなか寝付けず、夜会を開いていた方々についすみません…とトーンダウンのお願いをしてしまったのだ。

こちらとしてはさっさと耳栓を買っておかなかった自分の非でもあるので、なんとも申し訳ない。

 

…それに、今はなんだか。べつに睡眠時間が減っても、いいやと思えてしまう自分がいる。

編集部員時代は、それこそ11秒でも寝ていたく、休みの度に昼まで寝入っていたのだが。今はしっかり9時間睡眠ができているし、朝日が昇ったら出勤しなきゃ…という憂鬱もない。

快適な寝床ではないので、ハナから気持ちの良い睡眠を期待していないこともあるだろうが。私の中で睡眠の価値が下がっているのは、明白だった。

「…これはこれで、なんだか寂しいな。」

明日は昼まで寝ていられるっっていうあの感覚は、いけないとわかっていながらも快感だったのだが…。

 

 

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国道56をひたすら北へ。

この道は幅が広く、とても安心する。これが本来の国道のあるべき姿なのだろうが、やはりここ数日の体験が染み付いておりどうも有り難く感じてしまう。

 

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山越えではさすがに片側一車線だが、問題のない曲率と路面のワインディング。

 

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九礼坂にて、謎の雄鶏と猫の家を発見。木には、愛がほしいとの看板が。

…拾ってくださいってことなのか。いたたまれなくなるなぁ。

まぁ動き回っている様子を見るに、誰かがこっそり餌をやってるんだろう。私には何もできないので、そそくさと退散する。

 

 

 

9時出発から昼がすぎ、昼休憩をとってまた走り出し。国道から逸れて県道39を通り抜ければ、間もなくして高知海岸が見えてきた。

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「……………っ、ぜよーーーーー!!」

そんな言葉しか出てこない。

 

県道34を端まで進めば、桂浜に到着だぜよ。

 

 

砲台があったという桂浜の台地を上れば、すぐにあの方の後ろ姿が見えてくる。

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「うわっ、意外とおっきーんだねぇ…。」

 

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言わずと知れた幕末の一英雄、坂本龍馬だ。

あ…、ちょうどハトが頭に乗っかって、リボンみたいに……。

 

勝 海舟に師事し、やがて長州(山口)の桂 小五郎、薩摩(鹿児島)の西郷隆盛を説いて薩長同盟を締結。王政復古を唱えて大政奉還を成させた、まさに日本の夜明けを持ってきたその人である。

 

 

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彼が見つめる日本の朝――桂浜は、晴れやかな世の青空を映していた。

 

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ここはよさこい節で唄われるように、昔から月の名所として知られている。

今は昼間だが、傾いた太陽が波打ち際を銀色に染め上げ、なかなかに目を細めさせてくれる。

ここの波はかなり激しく、時折スピーカーから近づかないでとアナウンスがされるほどだ。その荒波が陽の光をチラチラと四方八方に反射させ、光と影の芸術を創り上げている。

 

荒々しく動き回り、一瞬たりとも同じ形を留めないが、その不変さこそが美しい。

まるで、世の流れのようだ。

 

 

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世界は変わりゆくもの。だがどうせ変わるなら、良い方に変わった方が絶対に良い。

そう想う者たちがいるから、現代はやって来ているのだろう。

世を憂いて即身仏になった人もいたし、通行人のために手掘りでトンネルを掘った人もいた。子供たちのためヒーローを描いた人も、青い光を開発した人も、渓谷に道を作ったり、世界中の旧車を集めた人も。

 

みんな…、みんな悩んで、苦しんで、自分だけが通れる道をやっと見つけて、思い思いのやり方でそれを踏み越え、人生を全うし、後世へ何がしかの形を遺してきた。

大なり小なり、そうして受け継がれてきた形が後世の糧となり、未来を紡いでいく。

きっと、そうして世界は少しずつ前へ進んでいくのだろう。

 

 

答えてくれるわけでもないが、そっと龍馬像に話しかけてみる。

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「俺…はじめはただ、目立ちたがりなだけで。」

何がしかの形で、自分が生きた証を残せればいいな、なんて思っていただけで。

だけどそうなるにはやっぱり、何らかの人の役に立たねばいけないわけで。

「使命とか、そういう風に言われちゃうと、気後れしちゃうんだけど。でも、これは俺が進むべき道だっていうのが、やっと、ようやく見えた気がするんです。」

そう重く考えなくても、入口は楽しいからとか、好きだからって理由で構わない。それが正しいとしたら、今歩んでるこの旅は、胸を張って私の道ですと答えられる。

 

旅を以て後輩たちに希望を与える。

「今はまだ……漠然としてますが! 俺なりに、なんとか形にしてみようと思いますよ!」

だからどうか、そのほっそい眼差しで見守っていてください。

 

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私にもいつか、日本の夜明けが見えることを。

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