風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

ハネウマライダー

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「へぇ、JUJUさんって庄原市出身だったんだ。やっぱ帝釈峡行っときゃあよかったかな…。」

言っちゃあなんだがけっこうな山奥で暮らしたからこそ、ジャズという非日常の世界にのめり込めたのだろうか。

そんな思慮をしながら荷物をまとめ、アクセルを煽り気味にしてロケットⅢを叩き起こす。

 

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だが広島はもう終わり。今日は、四国へ渡る日なのだ。

 

国道185から国道2号のバイパスへ合流し、「しまなみ海道」の看板が指し示す方向へ。

ジャンクションで標高が若干上げると、一気に南下。七つの島を巡る、しまなみ海道の始まりだ。

 

 

 

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島と島は当然橋で繋がれており、それらは一つ一つがけっこうな大きさ。

橋にさしかかる度にそこそこの横風がぶち当たり、四国入りを歓迎してくれる。

 

 

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全長約60㎞という大スケールの割には二車線区間は少なく、後続車に気を遣っていつもより少々速度を上げる。そのぶん景色を見落としがちになってしまうと思ったが、緑と青はどこまでも続いており、高速クルージング中の気が張りがちな目を楽しませてくれた。

原付二種までが通れるという下道版しまなみ海道も気になっていたのだが、こちらも十分走り応えがあるようだ。

 

時折眼下には島の集落が映り込み、店やお墓、場所によっては造船所など工場も見える。

ちゃんと暮らしてる人がいるんだよな…

本当は生口の『未来心の丘』など行ってみたい場所もあったが、初めてのしまなみ海道はノンストップで突き進んでみたい。

 

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留まるな、進んでしまえ

いつも以上の轟音を響かせるロケットⅢに応え、長羽織をはためかせながらグリップを握り続けた。

普段よりガソリンの減りが早い。

 

 

 

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四本目の橋―多々羅大橋は、完成時には世界最長を誇ったという斜張橋だ。それを駆け抜け、ついに愛媛へと入る。

 

 

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世界初の3連吊橋である来島海峡大橋を最後に渡れば、しまなみ海道は終了。

けっこう長かった…。

料金所で3,980円という金額を提示され、項垂れながらも四国へ無事着陸する(ETCだともっと安かったっぽい)。

 

 

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今治も気にはなるが、本日は件の電源を交換してもらいに2りんかんへ行かねばならないため、国道196で一気に松山へ。今日は移動しっぱなしである。

 

 

 

~~

松山は遠目に見てもそれほど大きな街ではないようで、松山城付近は路面電車が走っていたり商店街が賑わっていたりするが…、なんかこう、ビルの高さはない。

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だがここにはとっておきの武器がある。2りんかんへ行く前に、平和通りのイチョウに癒されながら街の東側へ向かう。

 

 

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そう、道後温泉だ。ここには歴史ある温泉がある。

 

ここは日本書記にも登場する日本最古の温泉とされており、その歴史たるやなんと約3,000年にものぼるという。

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木造三層楼の『神の湯棟』、日本唯一の皇室専用浴室『又(ゆう)新殿』などを複雑に連結した道後温泉本館は、最近お約束の現在補修中。

工事用の隔壁には、作中に登場した由縁か手塚治虫の『火の鳥』が描かれていた。

 

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そして道後温泉といえば、夏目漱石の『坊っちゃん』に登場した場所としても有名。さすがにけっこう推されているが、私の記憶では漱石は作品内で愛媛の悪口を綴っていた気がする…。大丈夫なんだろうか。

 

 

 

入湯料を支払い、道後温泉、神の湯に入る。

外観から分かる通り露天ではないが、浴室はシンメトリーの石造りとなっており、中央に一つ、座ったら頭まで沈んでしまう深さの浴槽が佇んでいる。

その浴槽の中央には石造りの給水ポンプ…とでも呼べばいいのか巨大な円柱物があり、そこからなみなみと湯があふれ出ていた。

 

「熱…くない。」

ほぼ全面石造りの内湯、という雰囲気から勝手にそう思ってしまったが、透明な湯はぬるすぎず熱すぎずのほどよい暖かさ。

しまなみ海道で冷え固まった身体の芯が、ゆっくりと融解されていく。心臓が、徐々に早鐘を打ち始めた。

 

円柱物の中央には『湯釜薬師』なる神様が彫られており、だらしない顔でくつろぐ私を笑顔で見下ろしてくれている。

なんというか…そこらの温泉とは違う造形だからだろうか。本当に、神の居わす間に失礼させていただいてるような気になってしまう。見上げれば見える木組みの天井は確かに日本なのだが、どこか、日本じゃ、いやこの世じゃないような。そんな浴室であった。

 

 

「神様、この冬を乗り切る熱を、どうか授けてください……。」

口はますますへの字に湾曲していき、心は湯煙に溶けていく。冬だからこそ味わえる湯の癒しを、心ゆくまで味わった。

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