最後の島
11月8日
ゲストハウスで知り合った呉の海上保安官学校生より教えていただいた、美味いお好み焼き屋『トッキー』に立ち寄る。
「えーっと…、これは自分でコテで取って、食べればいいってことかな?」
お好み焼き屋なんて全く入らないので、こう鉄板に置かれてしまうと勝手がわからない。
トッキーオリジナルは、卵やキムチのほか多分に牛ホルモンが入った豪快な一品で、予想以上にホルモンが多くて、多くて…。
この旅を始めて以来、初めて料理を残してしまった。ホルモンだけ。
そっから国道185をひたすら東へ向かう。
蒲刈島や大崎上島など、呉から東の海には多くの島が鎮座している。個人的には海というのは何もない水平線の場所、というイメージなので、こうも島があるとなんだか不思議な気持ちになる。
「これが瀬戸内海ちゃんですか…。」
どれがそうなのかわからないが、竹原市に入り恐らく四国が見えている筈だと思う。ともすれば、多分今見ているのは瀬戸内海なのだ。
今まで見てきた海とは違う、陸と陸の間の海。風はそこそこだが波はやはり穏やかで、日曜ということもあり堤防では釣り人達がルアーを放り投げている。
夜の寒さが信じられない、暖かい空気だ。今日はどこに行く予定もないので、頭を空っぽにして走行時間をただただ満喫した。
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三原市のすなみ海浜公園に腰を落ち着ける。
まだ昼過ぎだが、愛媛へと渡るしまなみ海道も近くなったので今日はここまで。
目の前に見えるのが佐木島。その一つ向こうの島々に、E76しまなみ海道が通されている筈である。
「ついに四国…。」
行ったことないんだよな。はたしてどんな場所か、どんな人たちが住んでいるのか、想像もつかない。
恐らく、”島”に渡るのはこの旅で最後になるだろう。
"この旅初めて"とつぶやいていたのが、いつの間にか"この旅最後の"に置き替わっていく。
本当に、本当に旅の終わりが見えてきた。果てしなく続く道の先に、ほんの米粒程度の大きさにだが、ゴールフラッグが見えてきてしまった。
あと少しを、もう少し長く。
じっと瀬戸内を眺める両眼は、知らずのうちに細められていた。