風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

走って歩いて三段峡

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本格的に冬ががやってくる。

恐らく、山の方へ自主的に足を運べるのは広島で最後であろう。

紅葉狩りもしていない…ということで広島の最後は帝釈峡へ向かう予定だったのだが、その日の前日は生憎の雨。しかも、週末。

凍結が…観光客が……。

 

「私は、帝釈峡よりかは三段峡の方が好きですけどね。あ、もちろん個人的な意見ですが。」

助け舟を出してくれたのは、トライアンフのスタッフさんだった。

広島市から近いので、天気が良ければ明日にでも行けると思いますよ。ホラ」

とインターネットでその景色を見せてくれた。確かに、帝釈峡に負けず劣らずの地のようだ…。

「高速と下道、どっちで行きます?」

「下道派です。」

「それなら山を越えて、191と合流して川沿いに行って…―」

ご丁寧に、ストリートビューを交えながら道のりまで説明してくれた。トライアンフ広島、すんばらしいところだぁ…!

 

「じゃあ、谷に落ちないように気を付けて。」

「はい、ありがとうございます!」

 

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そんな訳で、広島市の北西、安芸太田市へ向かう。

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車線が豊富な国道54から191へ逸れると、瞬時に片側一車線となり街並みもどこか古めかしくなる。遠くに山は見えるものの、この時点ではまだ緑に萌えている。

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が、道なりにひたすら進んでいけば黄色に赤にと木々が賑やかに手を振り始めてくれた。期待できそうだ。


10時ごろ、三段峡の南端・長淵へ到着する。鼻水は出たが、まだ許容範囲の寒さである。

 

 

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駐車していたところ、「君、宮島にも居たろ。」と年配のご夫婦より声を掛けられ、その時も見かけてたんだ。これも何かの縁だからとなんと近くで売っていた焼きまんじゅうを御馳走していただいた。ありがたや!!

こんな風にあそこに居たろと言われたのは、鳥取の燕趙園で「白兎に居たろ」と言われた時以来である。

日向の面積も延びてきたし、パソコンやらテントやらはゲストハウスに置いてきたから身軽。ようし、いっちょ行きますか!

 

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三段峡は聖湖から柴木までの16㎞にわたる渓谷の名称であり、その名の由来は渓谷に在する三峨、三滝、三川の三に由来するのだとか。

とてもじゃないが16㎞も歩けないので、ここ渡し舟が楽しめるという黒淵まで行ってみるつもりだ。それでも2.5㎞、約50分かかるのだという。この旅でその距離の山歩きは初だな。

 

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「谷に落ちないように」というトライアンフの触れ込みは伊達ではなく、遊歩道は断崖絶壁に設けられ、随所には石橋まで設けられている。

が、そこから見るこちらの姉妹滝などはスリルも合わさって絶景で、雄川の滝ほど起伏は激しくないのでルンルン気分で歩ける。

 

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流紋岩と花崗岩からなる渓谷。岩はほとんどが白く、幻想的な雰囲気を醸し出している。

 

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「良い雰囲気だ…。」

ちょうど渓谷に陽光が差し始め、閉ざされていた草木の息遣いが再び開いていく。川やら土やらから吸い上げた何がしかが空気中に放出され、その香りが心を恐ろしく和ましてくれる。

 

 

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「すげぇ、赤い滝だ!」

タンスイベニマダラなる紅い藻のおかげで、赤くみえるのだとか。段差は約10㎝ごとに発達しており、細やかな水流が美しい。

 

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歩道を淵の上へ張り出さねばいけないほど、岸が切り立った夫婦淵。底知れぬ昏さをたたえた淵を眺めていると、まるで時間が止まってしまったのではないかと錯覚してしまう。

 

 

どこへカメラを向けても、いつシャッターを切っても、ほとんどが画になる。歩いては止まり、歩いては止まりを繰り返し、黒淵に着いたのは1時間半後のことだった。

 

 

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切り立った二枚の屏風岩の間に、波立たぬ湖面が蓄えられている。

 

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この棒を引くと、縄の揺れが対岸まで伝播して舟がやって来てくれるようだ。早速棒を引いてみたら、ちょうど折り返しの舟がやって来てくれた。

 

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いざ乗船。

 

 

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小舟はさほど揺れず、つーーっと淵の上を滑っていく。向こうに見えるのは、渓谷の中にある唯一の茶屋だ。

正直、行きで見られる景色はそこそこといったレベルなのだが、振り返ってみると、なるほど、帰りは面白そうだと思える景色が広がっている。

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浅瀬もあるが、その深度は深いところで6mにもなるそうだ。

 

 

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対岸に着いたらば、ちょっと小ぶりで残念な山女の塩焼きと握りをいただき一息つく。

茶屋と手洗い場以外には特に何もないし、さっさと帰ってしまうか。

 

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この熊 南峰(なんぽう)という人が、ロープとカメラを携えてこの地を切り拓いたんだそうな。本来は一介の写真家だったようだが、当地の名勝指定まで成し遂げたのだから凄まじい快挙である。三段峡をはじめ、黒淵といった名前もこの人が名づけたんだそう。

 

 

…さて、ここからまた50分歩いて、帰りはいつごろになるのだろうか。

考えるとさすがに小さなため息をついてしまうが、帰りの舟を降りるころには、足はまた元気に動いていた。

 

 

 

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「この彩を見られるなら……、全然苦じゃないか。」

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