風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

宝の山

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「決めた、遠いところから行っちゃおう。」

別府の地獄めぐりと迷い、今日は湯布院へ行くことにする。

 

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といっても湯布院もそう離れている訳でもない。向こうに見える由布岳の大体反対側に周れば、すぐに着くはずだ。

別府の街を由布岳に向かい駆け上がる。

 

県道11号・やまなみハイウェイへ。

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ここまで広大なワインディングだとは地図上では想像できなかったので、少々面食らう。

看板には「阿蘇くじゅう国立公園」の文字が。そう、ここはあの阿蘇の領分なのだ。

勾配のキツいヘアピンカーブを駆け上がっていき、やがて木々の間からは高原が見えてくる。

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なんというか……、さすが阿蘇って感じである。

木々が瑞々しい。生命力にあふれた、肥沃な静けさが漂っている。

木のトンネルを抜けると、道の峠・由布岳登山道に辿り着く。

 

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三瓶山を思い出すなだらかな山肌だ。背の低い草が覆っている様子は、草千里を思い出す。

衣は点々と赤く染まっており、秋支度を始めている様子だった。

 

 

そこから一気に下っていくワケだが―

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いや~~~、これは何度も言うけど、本当に阿蘇の系統だね。

なんって贅沢な道なんだ。

温泉に入らずとも、走るだけで満足してしまいそうである。

 

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テンションを上げ、眼下の湯布院市街へとダイブした。

 

 

 

~~

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湯布院の観光メインストリート、湯の坪街道。

朝早く出て来た甲斐もあり、9時前で店は暖簾を出していない。人がいない情景を、捉えることができた。

 

さて手近な場所にバイクを停めて、金鱗湖にでも…という予定だったのだが、駐車場を調べるため「湯布院 バイク」と調べたら、興味深いページがヒットする。

「貴重なバイクや世界のクラシックカーが貯蔵される、岩下コレクション……?」

温泉よりそっちの方が開店が早そうだ。行ってみよう。

 

 

5分も走ると、たどり着く。

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いきなり駐車場でSLが出迎えてくれた。

外観は大きめの倉庫のようだが、果たして―――。

 

料金を支払い中へ入ると、いきなりとんでもない字面を目にする。

イギリス ダイアナ妃の実家

スペンサー家のステンドグラス

「……はっ!?

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…マジで!? ホンモノ…ってことだよね! そんな貴重なものが、こうもポンと紹介されていいのか……!

 

すぐに知ることになる。これはほんの洗礼にすぎないのだと。

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「ウオーーーーダイアナ妃の結婚を祝した特別限定のトライアンフ750!?

 

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アサヒ号にキャブトンだと!?

 

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ホンダのバタバタ!!

 

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ラビットまであるじゃねーーーか!!!

 

なんなのだここは。

一つ一つ値も付けられないほどの逸品が、所狭しと並べられている。

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写真点数が多くなるので割愛させていただくが、1968年のモーターショーで世界を席巻し4気筒の先駆けとなったドリームCB750FOURが、あのポップヨシムラ本人がチューンしたヨシムラホンダCB77が、マニアなら言わずとわかるメグロの第一号車、Z97まで……!

他にもモナークだとかライラックだとか訳の分からんバイクが、そのホンモノが、陳列されている。

 

 

もちろん、車も!

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ロールスロイスの王侯貴族専用車とか! 初期型ビュイックとか! フェラーリテスタロッサとか!!!

何から何まで、ありとあらゆるプレミアが視界を埋め尽くしている。

 

気が気じゃなかった。シャッターを押す指と眼球の動きが止まらない。

 

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バイクの展示はフロアをまたいで続き、イギリスのトライアンフ、ノートン、ロイヤルエンフィールド、ブラフシューペリア…、中国の長江、台湾のコンドル、ブラジルのアマゾネスといったそんな国のメーカーあったの!?”てなイロモノまで…。

 

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極めつけはコレ。世界でたった1台しかなく、時価2億円というドゥカティのアポロ。

貯蔵する縁で、ドゥカティ本社で設計者であるファビオ氏と対談もしたらしい。ヒエ~~~

 

 

時代の証人たちは乗り物だけに留まらず、

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イギリスのバーカウンターだとか。

 

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昭和の家財道具や骨とう品とか。

 

海軍陸軍の刀だとかベンチャーズモデルのギターだとか皇室で使用された略式十二単だとかなんだとかかんだとか。というか、踏んづけて歩いていた階段でさえ、どっかの小学校のものだったり、手すりがディスコ マリアクラブのものだったりする。

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挙句の果てには戦闘機まである。なんでだよ!

ちなみに左の赤い車は力道山の特注キャデラックだ。

 

 

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ここの創設者である岩下洋陽氏は、30歳よりコレクションを集め始め、博物館づくりに着工。ここはじつに20年もの間、見る人に時代を語り続けて来たそうだ。

22歳でプレス工場を始めた彼は、次第にただただ工場を大きくしていくことにこれでいいのか、正しいのかと疑問を抱き始め、理想の仕事を追求し始めた。その仕事の条件は、次の10箇条。

・好きであること ・社会性があること ・やりがいがあること ・だれもやっていないこと ・だれもマネできないこと ・文化性があること ・いろんな人に会えること ・いろんな地域に行けること ・努力すれば自分でできること ・今までの仕事の経験を生かせること

悩んだ末に見つけたそれらに当てはまることが、世界の旧車ミュージアムだったという訳である。

それが風呂敷を広げに広げて、ここまでに至ったという訳だ。

 

すげーなぁ………。

 

 

としか、言えなかった。

 

 

 

 

タイムスリップを十分満喫し、駐車場に出てウチのトライアンフと再会する。

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「お前の先輩たちに、たくさん出逢って来たよ…。」

みんなカッコよかったぜ、そう語りつつエンジンをかけると、珍しく調子が良い。

まるで、でも、やっぱり動くモノの方が魅力的でしょ?と言わんばかりに。

「………。」

なんだか急に、愛車が愛おしく思えてしまった。

 

 


 

~~

あっそうだ忘れてた、湯布院の温泉。

 

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日は上り、すっかり人でごった返した通りをかき分け進む。今日、月曜だよな…?

 

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鏡のような金鱗湖をぶらつき、

 

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共同浴場の『下ん湯』へ。

外観にそぐわず中はしっかりと綺麗にされており、茅葺を見上げながら入る湯舟が心地いい。

鹿の湯のように白濁している訳でもなく、草津のように熱く芯に応えるものでもなく。じんわりと肌から浸透していく、シンプルな透明温泉。

で………うん、あとはもう…指が疲れた。

 

実際に行って味わってくれ、と筆を投げさせていただきたい。

温泉も、バイクも。たかだかこんなウェブページ一枚じゃ、語り尽くせない魅力が。この湯布院にはあるようだから。

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