風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

温泉の国へ

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良い海だ。

波は相変わらず高いが、そのぶん漣の音がよく聞こえる。

もう大分との県境も近い延岡まで来てしまったこともあり、この町外れの海浜公園で、1日ぼうっとしていることにした。

 

散歩していたおじいさんによると、この向こうにはちょうどハワイがあるらしい。

言われて気づいた。先日まで“宮崎の海”…だなんて言ってしまっていたが、

太平洋…だったんだよな。

すごく今更気づいた。

 

福島、神奈川と暮らした私にとって、馴染みの深い海。

ホッとしていられるような、懐かしい感じはそのためだったのか。

日本海の静かな水面や、沖縄の透き通る海水を見てしまって。“太平洋なんて…”と思った日もあったが。なかなか見ていられて、不思議と安堵する。

 

「ただいま、太平洋」

一際大きな波が、どどぉ、と音を立てて返してくれた気がした。

 

 

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…流石に寒いな。

寝袋から出るのに、躊躇いを覚えてくる。

覚醒してからすぐに起きず、しっかりと体に熱を送ってから……よし、出よう。

 

テント内で荷物をまとめていると、外から「スゴーイメッチャキレイ!」という若年女性の声が。

時刻は6時半頃。朝陽がキレイな時間だろう。

海越しの朝陽は今までも見たことがあるから、別に急いで拝む必要もあるまい。

声に釣られずしっかりといつも通りの準備をして、テントを出てみる。と

 

「すっげぇ……」

 

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冷え切った海面が、朝陽に照らされて波の間に蒸気を上げている。

それがゆらゆらと水と共に揺れて………、ある意味雲海ってやつ?

「まだまだ、こんな顔を隠してたんだな。」

寒季の出だしは、なかなか上々なようである。

 

冬用グローブをはめ、大分へ。

 

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北川、小川、鐙川沿いに谷を進む10号。日の角度がまだ浅いこともあり、日陰が多く身を切る寒さに鼻水と尿意がだだ漏れになる。私は…、男でよかった………。

日曜とはいえ流石にバイカーどころか車も走っておらず、ときたま出くわすスポーツカーを見送りながら峠を進む。

 

直川町に入ったあたりで、ようやく日向の面積が増え。海も近い佐伯市街に入れば、体の震えも収まってきた。

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いなかーって感じの大分の海に出れば、もうポカポカと暖かいぐらいだ。ヤバイ、もう山に行きたくなくなってきたかも…。

気付けば、ロケットⅢから取り出している電源が二口死んでいて、凹む。寒さ恐るべし…。

 

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国道は再び山側に入り込むが、先ほどまでの寒さはない。

それにしてもなんだろうか、このほのぼのする山道は…。懐かしいような、このまま行けば親しんだ家へ帰れるような……そんな特長のない道。

 

大分はまぁ温泉に入ればいいっすよ!

なんて話した人たちは言っていたが、たしかにこう走ってみてもめぼしい物がない。

臼杵の磨崖仏は拝観料取られるし、千葉の佐倉でレプリカを観たしな…。

亀塚の前方後円墳は、そんなに興味ない……。

イルカ…は、ついこの間見たし……。

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大分市街…。大分府内城跡……。城を見たい気分でもないんだよなぁ……。

 

 

見送りながら走り続けていれば、いよいよ温泉の名地・別府の看板が現れ始めてしまう。

10号の海沿いに走り続ければ、やがてその姿も見えて来た。

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「おお、あれが別府か。」

海沿いに建つビル群が、なんだか熱海みたいでワクワクさせてくれる。もう、あそこまで行っちゃおう。………野宿場所も見つからんし。

 

 

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大分もまぁ街だったけど、別府はもっとコチャコチャしてる。温泉街だし、ちょっと時間かけて見てみたい。

…というわけで。

 

 

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ゲストハウスめいた温泉宿『はまゆう凪』に、予定より一泊早くお世話になることにする。

一泊約700円とバカ安だがドミトリー。普段なら気が休まらないとこういった場所は利用しないのだが、今日一泊だけ。たまには他の旅人と交流を図るのもいい。

4泊ですが、急なので今日だけ相部屋でいいですよ。」

「あー…でも、今日は他にお客さんいらっしゃらないので。そのままシングルに入っていただいてだいじょぶですよ。」

そう…ですか……。

 

 

 

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さて。温泉パンフレットを渡されたのはいいが、日曜で人が多そうだし今日はいいだろう。

そうだ、前の職場仲間に教えていただいた友永パンは……、日曜休みか。

日暮れ前に、ちょっとだけ散歩するに留めよう。


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良い味の路地裏が並ぶ街並みだ。

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アサヒビールの文字がアツい別府タワーを目指してみる。けっこう古ぼけてそうだ…。

付近にはいくつか宿があるが、どれも新しいとはいえない。コロナ禍か、つい最近自己破産してしまった場所も見受けられた。

 

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案の定といった感じだが。金を取られるようなので、やめておく。

仕方がないので、堤防の方へ歩いてみた。

 

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おー、北は杵築の方まで町は続いてるんだねー。

 

視線を右へ。

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こう見ると大分市は工業の街だったのかな?

 

やや後ろを見る。

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遠目に見たビル群は、宿群だったようである。奥のとんがってんのは高崎山ってやつかな。

 

考えるに、県庁があるのこそ大分だが、観光の拠点は別府なのかもしれない。すぐ隣だし。

とするとやっぱ温泉の国なんすねぇ…。

 

この時期になると、夜が早くて困る。

明日は湯布院か、地獄めぐりか…。考えながら、宿の大浴場に浸かった。

「…と、これも源泉かけ流しって言ってたな………。」

どうやらもう、温泉国の洗礼は始まっているようだった。

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