太陽の谷
10月23日
国道218で高千穂へ。
五ヶ瀬川を遡上し、延岡の市街地から抜け出る。
この川が高千穂峡につながっているのだろうか…。
走るのは狭い部類の国道。
標高が上がっていくからか、雨上がりの気温差からか風が強く、日陰に入ると息を呑む冷気が体を覆う。
落ち葉も風に踊らされて渦を巻き、もう、すっかり皆秋に入る準備をしていた。
それにしても川が美しい。陽光をまんべんなく浴びて、それをキラキラと銀色に変えて目に返してくる。思わずちょくちょく立ち止まり、優雅な流れに見入ってしまった。
寄り道。
こちらの天翔大橋はコンクリートアーチ橋としては日本一長いらしく、また五ヶ瀬川水面からの高さも日本一高いらしい。その高さたるやシーガイアのホテルオーシャン45と同じ高さ! …わからん。
緩いワインディングを味わうこと体感一時間、高千穂市街の看板が見えたため国道からそれる。
道中は完全な田舎山道だったが、このあたりはけっこう町になっているようだ。
ミニいろは坂のようなつづら折りを下り、例の高千穂峡へ到着。
駐車場から1分も歩かないところに、そのシンボルたる真名井の滝があった。
ほーこれが…。
小ぶりだが、けっこうな勢いで水が噴出している。同時にボート客も目に入ったが、あれ間違って滝に打たれたりしないのかな。
平日と言えど金曜、そして昼過ぎ。ボート客はけっこういるようで、時折それらが渋滞を起こしている様も見れる。
「あらあらあら……。」
3,000円?だか払ってアレでは、可哀そうというものである。
遊歩道を歩き、奥へ。
高千穂というのはあの滝とその周りの川、モミジなどを楽しむとこかと思っていたが、この仙人の屏風岩のように岩石美を拝める場所でもあるようだ。ボートに乗らずとも楽しめそうで、安心する。
高千穂峡は阿蘇の火山活動によって流れ出た溶岩流が、五ヶ瀬川沿いに帯状に流れ、急激に冷却されてできた柱状節理の塊なのだそう。
そういえば国道をもう少し行けば、熊本の阿蘇に着くんだよな。懐かしい。
見てよこの岩。うどんみたいだし。
色んな場所で色んな奇岩を見てきたが、何処へ行っても初めて見るものばかりで。本当に岩ってのは面白い奴らである。
遊歩道は歩く気になれば谷上の高千穂神社まで続くそうなので、ひとまずあの石橋まで行ってみる。
複雑な岩の道を、わちゃわちゃと白い流線を描きながら水が流れていく。
奇岩の並ぶ渓谷なら厳美渓など他にもあるが、こういうのが見れるのがここの特色なんだろうな。
石橋に到着
「うおおすっげぇ…けど、まっぶしい!」
若干視界が開けたこともあり、川の輝きは先ほどの数倍に、陰陽のコントラストはより強烈なものとなって目を細めさせる。これ、露出をどう合わせたら綺麗に撮れるんだ……?
四苦八苦していると、目線の上からもチラホラと光の反射が気を引いてくるのに気付く。木の葉だ。
ああそうか。川ばっかり撮ろうとしてるからはかゆかないのかもな。
陽は平等にあまねくすべてを輝かせている。
…やっぱ微妙だが、これから散ってしまう緑たちである。
労いの念を込めてシャッターを切り、手打ちとした。
~~
まだ少し時間があるので、高千穂神社へ。
ここは天岩戸伝説で有名な場所だったらしく、天照大神が引っ込んだ岩戸の前で踊った鈿女(うずめ)と、その岩戸を取り払った手力雄(たぢからお)を象ったモニュメントがそこかしこに見られる。
…ああ、だからここら辺は、陽光が強く感じるのかもな。
何故だかわからないが、九州に入ってから神社の御由緒があまり理解できなくなってきた。どこ行ってもまだるっこい書きまわしなのは変わらないのだが…。
とりあえず代表的な縁の人は、源頼朝らしい…ん?
書き損じてるやんけ!
大きすぎない境内で、ほのぼのとした暖かみのある社殿。
旅の無事を祈願する。
……今までは”ビッグになれますように!”とか”可愛い恋人を!”とかそういった類のものを祈願したときもあったが、ここ最近は旅の成就しか願えない。
…ここまできて、ギブアップしたくはないのだ。
付近には頼朝が参拝させた秩父の畠山氏が植えた杉や、そのご縁かいつぞやの埼玉県知事が植えた杉、皇室と思しき人が植えた杉など、周囲のバカでかい杉が陳列されていた。
手前右のは夫婦杉というらしく、根っこが一つになっていて決して離れないのだと。
夫婦で手をつなぎ周りを3回周ると円満になるそうで、私の目の前でもその願掛けを行う夫婦が。あーーーーやっぱ恋愛祈願しといたほうがよかったか?
こちらは畠山氏が植えたという杉。デッカ。画角に収まりきらんし。
御朱印を頂いて、延岡へ戻る。山の中は冷え込みそうだし、野宿するならまだ潮風の方がいい。
行きと日の角度が変わったからか、川は海のような青色を映し出している。
これも陽の神がなせる御業なのか……。
天岩戸神社は寄れなかったが、ポカポカ陽気のご加護が私にもありますように。
祈願しながら、山を下りた。