最南端へ ―③佐多岬―
前回より
大隅半島のまさに”隅”が近づくにつれ、龍飛岬を思い出すガラリとした風景が多くなってくる。
国道269は佐多の町で終わり、そこからは県道68が最南端までの道を引き継ぐ。
そこからさらにひた走り、県道566へ分岐すると。
「なんだよこの木々は…。ジャングルじゃん……沖縄からまた、ジャングルじゃん……。」
南国風の木々をくぐって進む。まぁ、ここも全国的に見れば南国だしな…。
舗装路こそちゃんと見えるが手入れは半端で、生命力豊かな木々が路肩から多数飛び出している。頭を下げながら走ったのは初めてだ。
こんなツルが伸びた木々や、車一台しか通れないトンネルがあるんですよ? これは今までとは違った最果て具合である。
そんなこんなで不安を抱きながら、佐多岬到着!
ここには宗谷岬や神崎鼻のように立派なモニュメントはないが、あの突端に見える灯台がその代わりと言えるだろう。
灯台までは行けないものの手前の展望台までは行けるので、バックパックを背負い歩き出す。
…最北端では雨に降られ、最西端ではカメラを落とし…と本土四極では失敗続きなので、慎重に進む。
その道のりは長そうだ…くっ。
ここは本当に今までの四極とは異なった豪勢なつくりで、一帯に遊歩道が設けられて公園を形作っている。
雄川の滝での疲労も溜まっているのか、足を若干引き摺りながら歩を進める。
20分後、到着。
こんなギャラリーまであるのか…ほんと、恵まれた端っこである。
足の悲鳴を押しのけながら、展望台への階段を上る。上って、そして
本土四極、いつものガッツポーズを決めてやった。
曇りだが、海はキレイなグラデーションを浮かべている。最果て特有の強風が、汗を吹き飛ばしてくれた。
ついに、ついにここまできたんだなぁ……。
道のりが妙に寂しげだったのもあり、達成感がハンパない。
最東端は、また次の旅で行きます!
道を戻り、ロケットⅢにまたがってその場を後にする。今日の目標、完遂だ…!
あーあ今日も昼飯食いそびれたわ。
帰りもまた、うねる道をいなすのに神経を使ってそれどころじゃなかったが。
最北端から最南端までたどり着いた。その実感をひしひしと感じ絶叫を上げたのは、これまた他にはないゲートをくぐった時のことだった。
ここからは、本当に、真の意味で北上の一途となる。
―――長かった。
最北端からここまで、どのぐらいかかった? 4ヶ月ぐらいか?
今日の道も強烈だったが、思えば今までも色んな強烈を味わって来たなぁ…。
いろは坂、龍飛岬までの道のり、男鹿半島の崖っぷち、生月の爆風ロード……。
“怖い怖い”と泣きながらもそちらへ進んでしまうのは、その先にある景色が雄大だからなのもあるが、何より無事戻ってきた時の達成感がハンパないからであろう。
子供みたいな発想だが、”倒した!”って気分になるのだ。強敵を倒し、成長したってひしひしと実感できるのだ。
根占のゴールドビーチからは、ちょうど開聞岳に夕陽が落ちる様子が見られるらしいが。
今日はちょっと、気を張りすぎた。垂水まで戻って、またそこにテントを張ろう。
殺伐とした寂しい空間から、人の気配が満ちる場所へ戻った時の安堵感。
これもまた、最果てを望む中毒成分を分泌させる一つなのだろうなぁ。