世界変われど変わらぬ性根
前回より
ほえー、南の島は道の駅もおっしゃれなんですねぇ…。
ソーキそばでもゴーヤでもなく道の駅ぎのざの特製ハンバーガーを平らげ、今後の予定を練る。
もう14時半。日が暮れるのは早くなった季節だけど…。このペースなら、一周できるか?
できないとしても、首里城ぐらいは見ておきたい。
北半分の原稿は後回しにして、ロケットⅢに飛び乗った。
「おおー、長崎みたい…。」
沖縄市が近づくにつれ、住宅地が増えていく。そして沖縄市に入れば、
もう、そこは本州でも見られる光景だった。
いや、本州より難儀かも。狭いぶん、渋滞が酷すぎる…。沖縄県民の運転も、どこか自由奔放だし…。
おまけに工事が多いのかトラックが何台も連なって走り、排気ガスに咳が出る。北方面の爽やかさはどこへやら。
信号を越えるたびに信号に引っかかるという嫌なパターンにハマり、首里城公園へたどり着いたのは16時半だった。
聞けばチケットは17時までしか売っていないのだという。あぶねー…。
ここが、首里城のあった場所だ。
「うわぁ…、本当に何もないじゃん。」
てっきり少しは焼け残りがあるのかと思ったが、それも撤去されてしまったのだろう。
跡形もなく。そんな言葉がよく似合ってしまい、胸にズンと悲しさが降り立った。
それでも城壁は残っており、見晴らし台まで上ることはできた。
…ダメだ、見渡すと余計になんだかツラい………。
目をそらし、北西を見る。
一周するとなれば、あっちに進むことになるけれど。
流石に本部は…見えねぇよなぁ。
首里城を下り、地図を開く。
沖縄はやっぱりそこそこ大きい。朝の道の駅に戻る頃には、余裕で日が暮れていそうだ。
仕方ない、どこか近くで野宿地を………
指が止まった。
本当に後悔しないのはどっちだろう?
あとでカッコよかったと思い返せるのは、どっちだろう?
「…やってみるかぁ!」
なに、青森では映画を観た後、22時にテントを張ったことだってあったじゃあないか。
覚悟をしてしまえば、あとは楽しんでしまえばいい。
インカムを再起動させ、テンションを上げ始めた。
それでも「よう」とばかりに顔を出す夕陽を見ると、どうしても気が焦いてしまうのだが。
日没までに、どこまでいけるだろう?
~~
首里城公園から北上したら、なんだか一周した気分にならないので。国道507で、一気に南下する。
街の渋滞を抜け出たころには、もうマジックアワーに等しい明るさだった。ヤバイヤバイ。
「うおーーーーひめゆりの塔!…塔!?」
戦火を戦ったご先祖方、夜のドライブを無事完遂できますように。と、手早く手を合わせる。
最南端であろう荒崎にも行ってみたかったが、国道から遠すぎて恐いので止めとく。
まだ明るい、まだ明るいぞぉおおおお!
と思い込むのもつかの間、すぐに空は黒く染められていった。
だが、
おお、これはこれで良い景色だぞ。
流石にGoproでは夜景に処理が追い付いていないが、街灯のイルミネーション、車のライトの光の波…。悪くない光景だった。
「うおーーーっ俺、飛行機と並走してるーーー!」
なんだあの光の群れはーーーー!
ラスベガスか、マイアミか!?(錯乱中)
首里城周辺はなんだか質素な街並みだったけど、これが那覇の真の姿だったか。
思えば、私が”夜はあまり走らない”と勝手に習慣づけているだけで、夜にツーリングしても全然いいのだ。
“1日かけて沖縄を一周する”
それは、もしかしたら沖縄の昼の顔も夜の顔も楽める、ということだったのかもしれない。
なるほど、そういうことだったのかアカさん(友人のハンネ)…! 勝手に前向きにとらえておいた。
事故渋滞のせいもあり、もう辺りは完全に真っ暗。
西郷さんの前から続いた国道58に入ると、しだいに街の灯りはなくなっていき。
おそらく軍事基地が並ぶエリアに入ると、街灯だけが道を照らし。
更に進むと、ヘッドライトとバックライトだけが頼りの世界になる。
沖縄のバイパスには、街灯がない。
ただ不思議と悪い気はしなかった。
おかげで星がよく見えるし、道もそこそこなカーブが続いていて面白いのだ。ロケットⅢの調子も良い。
ひたすら3気筒の音を聴いていると、やがて海の向こうに本部と思われる半島が見えてきて。
大宜味に入り、真っ暗な海岸沿いを進んで。
20時44分。出発から約12時間後。
「だあああーーー腰いてーーーーーーーー!!!」
バカだ、バカである。
二日かけて走れば、青い海を見ながらもっと走れたものを。せっかく来た沖縄だったものを。
本当にバカだ。
だがバカなりに、バカな目標を達成できた。だから笑顔である。
北海道でもそうだったが、私は忙しない旅人なのだ。その性根はたとえ南国であれど曲げられない。
旅はいつでも、自分らしく。さればこその意味ある旅。
ああ、こいつは良い思い出になるなぁ…!