風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

求道

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———この旅に、意味はあるのだろうか。

 

 

 

今日で、埼玉を旅するのも7日目となる。明日は千葉県に入る予定だ。

 

申し遅れたが、この旅は1年間、春夏秋冬を巡る行程を想定している。

1年は約52週間であるから、47都道府県の一県につき、1週間滞在すればちょうどいいだろうか、という形で進めているのだ。

 

 

初の県境越えに備え滋養強壮を…。というのは建前であるが、今日もまた銭湯でのんびり過ごすことにした。

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春日部温泉 湯楽の里

 

岩手県は遠野の銘岩・花こう班岩でつくられた寝ころび湯に転がり、浅い睡魔と共に、ある想いを巡らせる。

 

この旅の意味は、なんなのだろうか

 

 

~~

「ただただ、自分が面白いと思うことをやりなよ。あんた誰に言われてこんなことしてるワケじゃないんだろう? 自分で決めたからやってるんだろう? じゃあやってみなよ。

それで悩むこともあるだろうよ、自分の行為に、意味があるのかわからなくなることもあるだろうよ。そんなときは、とにかく考えな。答えなんて出なくても。考え続けな。それが、クリエイターってもんなんです。」

 

昨日。

坂戸から千葉県境近くの庄和町へ移動し、道の駅から出ようとすると、あるご老人に声をかけられた。

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とげとげしくない、タレ目の表情。なるほど、誰かに話しかけやすそうな柔和な顔だ。

「あんたさ、こんなおっきいバイク乗って。普通の人とは違うだろ。いや、比較するのは良くないことだけどさ。あんた変わってるだろ。普通のバイク乗ってるやつなんか、たーだアクセルひねって、速さ感じてる連中ばっかだけどさ。あんた違うだろ。」

 

毎度の如く何㏄?なんて聞かれるのかと思ったら、思わぬ角度からの発言に釣られた。

この老人が仰ったことは、誉め言葉だ。たしかに、私は他人と同じになりたくなくて、実用度など度外視してこのクソ重いバイクに乗っているのだから。

もう日暮れでテントも張りたいが、少し話してもいいかもしれない。こちらも、旅をしている旨などを話した。

 

「俺もさ、今赤帽で全国各地、いろーんなとこ行ってるのよ。そんで、時間が空いたときに絵を描いてるんです。昔デザイナーだったんでさ、そういうのが性に合ってるのよ。

 君ぐらいの歳にはさ、トヨタのロゴデザインを手掛けたりもしたよ。」

うおすごい。こういう、一見ただの老人に見える方がすごい人だったりするから、人と会うのは面白いものである。

「かなりやり手だったんじゃないですか。それで今は、引っ越し業者さんに?」

「うん。自分なりの実績は若いころ作っちゃったからさ。ああいうのってホラ、競争の世界でしょ? そういうのに疲れちゃって。

今はただ、自分のために絵を描いてます。」

次いで、やや遠いところを見ながら語った。

「クリエイターの作業ってさ…。自分だけが満足できればいい作業と、人の役に立つ作業の二つがあるじゃない。誰かを喜ばせてこそのクリエイターだけど、なにかこう、自分の世界を見つけるためには、独りよがりでも、自分だけが喜ぶ行動もしなくちゃいけない。難しいね。

 君もライターなんだから、クリエイターなんだろ? 今、君は自分のやりたいと思ったことをやっている。それでいいと思う。とことん、自分が面白いと思うことをやればいいと思うよ。

 ただ、いずれ考えることになるだろうね。その君の行動は、意味があるものなのかな。人を幸せにできるものなのかなって。

 

 答えは…ないよ。ただひたすら、考えてください。それがクリエイターなんだから。考えて考えて、考えてね…。」

 

 

ただの気のよさそうなおっさんだと思った人が、ここまで突いてくるとは思わなかった。

 

 

…正直、心が痛い。

 

そりゃあ、大部分は世界を知りたいという、まさに自分のために始めたこの旅だが、この行動を通して、後輩たちも勇気を持ってくれればという想いもあった。

 

…だが、一週間経ってみて。稚拙な、日記のような文ばかりを書いて。

果たして本当に、これが誰かの役に立つことなのかは、わからない。書けば書くほど、自分の未熟さを思い知らされる。

 

本当に、この旅に意味はあるのだろうか。いや、その意味を知るための旅なのだろうか。

自分が、今どんな道を歩いているのかもわからない。それでも、ただただ進んでいきたいという欲求に従っている。

 

この行為の意味は、いずれ、この旅が、教えてくれると信じたい。

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