空を駆ける
北九州で教えてもらった『キャサリンズバー』は微妙だったな…。話しかけられんし話しても盛り上がらんし。ガンダムバーは勿論楽しかったけど…。
これならわざわざ安宿を探すこともなかったかも。ただただ熊本の夜景を写しただけだ。
人のススメを真に受けすぎるのも考え物だな…。
10月7日
おまけに、台風まで接近してきている。熊本は風向きが悪そうだ。
さすがに今回は免れそうにないから、ホテルをとっとくか……、って流れを何回やってるんだか。
金が…。沖縄行きのフェリー代だってバカにならんのだぞ。
ホテルでゆったり&2りんかんで買い物をしたので昼からのスタートだったが、青天を拝めるうちに阿蘇を走っておくことにした。
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「おっあれがそれか。」
デカい…というか広い……。白く見える部分は、雲がかかってないって訳じゃないよな? 火山らしいから、恐らく岩肌が見えているのだろう…。恐ろしや。
“バイクで走ったら気持ちいーだろうなぁ”
“あそこはね、ライダーの聖地ですよ”
なんて出逢った人たちの言葉を思い出す。
こう見えても私だって、全国巡ってライダーの聖地を回ってきたつもりなのだが…、はてさてどんなものか。
慣れない環境で寝たからか、なんだか頭がボーッとする。白む頭に酸素を送りながら、まずは”大観峰”の看板を追った。
麓を覆う緑に包まれ始めたら、心なしかに頭も冴えてきた。前を走るハイエースの排気ガスが酷かったのが癪だが。
コーナリングを重ねていけば、嫌でも頭は働いてくるだろう。
いくつかのつづら折りを越えていったあたりで、急に視界が開ける。
「なんじゃぁこりゃぁ!」
待ち受けていたのは岩肌…ではなく、一面の草、草、草。無数の丘に沿って、ススキたちが風に吹かれ波打っている。
一面の草原…は今までも何度か見たことはあるが、ここは異様だ。空に近いからだろうか、風も草も、下界のものと同じには見えない。子どもの頃から慣れ親しんだ、そよ風や雑草が見当たらない。
まるでここは、上界の神に近い領域だとでもいわんばかりだ。
その聖域を我が足でタイヤで踏みしめていくこの行為。恐ろしささえ感じるが、この上なく快感でもある。
「俺は今、天を走ってるぞーーーーーーーーー!!」
なるほどまさにここは、ライダーの聖地だった。
あとはもう、語れるものではない。
黄金の草野を、風と共に駆け抜けていく。
何も私を邪魔できない、止められない。空の中を滑空する慶びを、ただただ貪り尽くした。
贅沢な時間を堪能し、名所である大観峰へ到着。
正面に連なっているのが、恐らく阿蘇山ってものだろう。
その麓に田畑や住宅地が広がっているように見えるが、信じられるだろうか。
その地帯は、窪地となっているのである。超巨大な岩壁に囲まれているのだ。
これは今から約27万年前から9万年前にわたり起こった、4度の巨大噴火によって形成された世界最大級のカルデラなのである。嘘だろ?
あり得ない、あり得ない…!
でも、目にしている景色は現実だ。
こんな馬鹿げた光景、今まで見たことがあっただろうか。
自分という存在が恐ろしく矮小に思える、大自然の神秘を前に。私はただただ、立ち尽くすことしかできなかった。
…さて、思う存分立ち尽くしたし、次はいよいよあの阿蘇山に上って、草千里を見に行くかー。
そこまではどう行けばいいんですか、iPad先生~。
“SIMなし”
……………え?