群龍
3月6日
さすがに私も学習していた。
………コロナについてな。
検索をかけてみると、『さきたま古墳』の博物館はやはりコロナウイルス対策のため閉館中らしい。
あの教科書に載っていた剣を見られないのでは、無駄足ではないが行ってもな……。という感じなので、営業中である『聖天宮』へ向かうことにした。
行田から南下。吹上、鴻巣、吉見、そして坂戸へ。
このあたり一帯は広範囲にわたって田畑が広がっており、かなり見晴らしがいい。ときたま富士山なども顔を覗かせるほど好天だったこともあり、速度を40~60㎞/mに抑えてのんびりとクルージングを楽しむ。
先日、東嶋さんが「この一帯は風が強い。だから”吹上”なんて地名もある」と仰っていたとおり、強烈な風が止むことなく吹きつけるのが少々こたえた。
道中、遠方にポツポツとピンク色が見えたので寄ってみた。開花時期の早い桜として有名な、河津桜だ。
ここは『すみよし河津桜』という花見スポットらしい。葉になっているわけでもなく、すぼんでいるわけでもなく。良い見ごろに初花見をすることができた。
河津桜から、畑を抱えた民家の間を縫うように進んでいく。”ほんとにこんなとこに豪華絢爛な宮があるのか?”と思った直後。見つけた。
のどかな風景を切り裂くように佇む、黄金の屋根を。
入場前から、圧倒されてしまう。美しく切り取られた石柱。黄金の瓦。極彩色で、精美に飾られた龍たち。門の時点で眼福といった具合だ。
ここ聖天宮は、中国台湾の道教のお宮らしい。本尊は日々の道徳を重んじ、善行に報いる『三清道祖』さま。開祖は康國典大法師さまとのこと。
なんでも康國典大法師さんは、不治の大病を三清道祖さまのおかげで完治されたのをきっかけに、感謝とほかの人にもご利益があるようにとの願いを込めて、お宮建造を決意。肝心のその建造地は、ここに建てろとお告げがあった日本の坂戸になったとのことだ。
台湾の宮大工たちが、15年かけて建造、平成7年に開廟したそうだ。私と同い年だな。
台湾は『観音山』で取れる5mもの一本岩を、まるごと使って掘りぬいた双龍柱。ほんとに石を削ったのかと疑うほど細かい造詣だ
本殿の天井にある螺旋状の構造物は、なんと1万点以上もの木材を、釘を使わず組み合わせて作り上げたものらしい
客庁には実際に座れる中国の椅子とテーブルがあり、異国情緒気分。また、あちらの国のおみくじや祈祷の仕方もちゃんと解説されており、実際に体験もできる
九龍網
「ここには五千頭の龍がいるんですよ。装飾、彫刻、絵、絨毯…いたるところに龍がいます。」
とガイドさん。
中国において、龍は神の使いの中では最も力が強い生き物であり、なかでも五爪の龍は最強なのだそう。皇帝の時代には爪の数は厳格に制限されており、無許可で龍を用いると死罪になるほどだったとか。
その神聖な龍を五千頭も住まわせるのだから、そうとう力のある宮なのだろう。ありがたやありがたや。
感謝の気持ちなのか気合を入れるためかはわからないが、通備劈掛拳の套路を正面で行わせていただいた。
…ただ、個人的には龍ってたくさんいるイメージじゃなかったなぁ。
群れる龍たちもかなり神々しいけれど、やっぱり個人的には…
一人、翔け昇っていく孤高の龍のようになりたいな