工業地帯
9月22日
「あそこに…、九州にいよいよ渡る………。」
下関の工業地帯から、北九州の工業地帯を望む。
海峡なんて場所だから観光地などの光でも見えるのかと思いきや、迎えてくれるのは武骨な鉄やコンクリートの塊たちのようだ。
付近には寝れそうな場所がないので、やや北に戻って深坂のキャンプ場で泊まる。
1泊150円。本当は前日予約が必要なのだが、特別に当日入りさせていただいた。
明日は、台風12号が接近する日である。少し早めに起きて、さっさとホテル入りしてしまったほうがよろしいだろうか。
多少濡れるのは覚悟せねばな………。
9月23日
「メチャクチャ天気いーじゃねーか!」
どうやら台風は東にそれていってしまったようである。”しまった”、と言ってしまったが、もちろん嬉しいことだ。
残念なのは、北九州で2泊もホテルを予約してしまっていること…。舞鶴といい、もったいない出費が…。
モヤモヤしながら関門トンネルをくぐる。本州と九州を繋ぐトンネルなのだが、けっこう地味だ。まぁ、意外と九州の地ってそう離れてないからね…。
九州・福岡到着!
出迎えてくれたのは、門司港レトロ街の旧門司税関だった。
函館が北海道の玄関口であるのと同じく、ここ門司もまた九州の玄関口である。神戸や横浜に並ぶ国際貿易の拠点として、明治の開港以来日本の近代化を支えてきた。
その証拠とばかりに、隣には大陸貿易として古くから友好のあった中国・大連市の歴史的建造物も建っている。後ろのは展望台を備えた高層ビル。
「洒落た町だぁ…。」
港があって、赤レンガがあって、観光街があってそれを風師山が見守っている。本当に、函館をよく思い出す光景だ。
さてどうしようか、早起きして来たからまだ8時。お店は開いてないし、近くの関門海峡ミュージアムも閉まっている。
そーいえば「北九州といえば工業地帯」と母が言っていたし、それを見てみるか。
都市高速を屋根に国道199を西へひた走り、小倉を通り越して若松地区へ。製鉄か何かの臭いだろうか、道中は妙に科学的な香りが漂っていた。
若戸大橋を渡ったら、すぐ高塔山公園へ向かう。なんでもそこから工業地帯を一望できるのだとか。
標高100mちょいの高塔山の登山路は急斜面で、途中から一方通行になるほどの狭さとなる。山頂の駐車場付近は開けていたが、ちと肝が冷えた。
おお。これは苦慮しながらも来た甲斐がある景色だ。
若戸大橋を手前に、八幡地区から戸畑地区、小倉の製鉄所まで見えるか。
「これは、夜景も見てみたいなぁ……。」
後から知ったのだが、北九州は長崎、札幌と並んで日本三大夜景の一つに数えられるのだとか。(函館は?)
見てみたい…気持ちは山々だが、道中のあの急坂を夜中に上るのは………。
キツい。ここはリスク回避に専念しよう。
代わりに、あの風車ゾーンにでも行ってみるか。
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響地区。
先ほどまでのコチャコチャした街中とは打って変わり風通しの良いこの場所には、ガスや石油、石膏工場や…お、ブリヂストンまであるじゃないか。
朝から動きっぱなしのロケットⅢは十分暖まっており、なかなかに調子が良い。一帯はトラックが多く通るので、道幅は広く曲線もない。
工業地帯特有の殺風景な空気を、システマティックな3気筒サウンドで切り裂き駆け抜けた。
たまらんなぁロケットⅢ。故郷は小名浜の、湾岸道路を思い出すなぁ。
観光できる訳でもない。かといってフォトジェニックな光り輝く夜間でもない、朝の工業地帯。それは、走るためだけに用意されたようなフィールドだ。しかもそれが連休明けだから、家族連れも走り屋もいないときた。
まさに私と、ロケットⅢだけの舞台。作業服を纏うドライバーたちを横目に、快感を覚えるまでアクセルを回し続けた。
幸せだ。
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小倉へ戻り、ホテルへ。
都市部のホテルは敷地内駐車場を持たず、有料のコインパーキングを使わされることが多い。が、電話で「バイクなんですけど…」と言えば空いたスペースに置かせてもらえることもある。皆さんも一度、お試しあれ。
小倉の街はけっこう都会的だ。
近くにある小倉城付近も、なかなか整備が行き届いていて散策し甲斐がありそうである。
…が、どうにも今日は、なんだかもう疲れてしまった。まだ昼前だが。走りすぎたか…。
夜景も小倉城も、ひとまず諦めてしまおう。どうしても心残りなら、次の楽しみにすればいいさ。
ひとまずはこの歓楽街で、何か美味そうな昼飯でも見つけるのだ………。