真実はいつも一つ
9月13日
鳥取に入ってから、否応なく目に飛び込んでくる名前があった。
“コナン”
コナン空港だとかコナン駅だとか…。
そう、鳥取は名探偵コナンの作者、青山剛昌氏の故郷なのである。
そんな訳で辿り着きましたるは『青山剛昌ふるさと館』。
何を隠そう私は、名探偵コナンのアニメ900話以上を、(旅に出るまでは)全話観ていた男である。
漫画は1巻も呼んだことはないが、アニメが始まったのは私が生まれた翌年の1996年…と、奇妙な関係なのである。
開館までは1時間以上あるので、コナン通りなるものを歩いてコナン駅まで散歩してみる。
ふるさと館付近は農場となっており、広域に向けて水を噴霧しているよう。そのおかげもあってか、綺麗な虹が見えた。
良い天気だ。コナン関係なしに、のどかなで良い町に見える。
駅まで続くコナン通りには、単行本の表紙を映したモニュメントや登場人物が描かれた案内板、マンホールにブロンズ像などが点在しており、ファンにとっては歩くだけで楽しい一帯となっている。…といつもの如く他人事のように書いてしまったが、今回は私自身もファンである。とても楽しい。
『コナンの家 米花商店街』なんてお土産&レストランの一角もある。この石像は…。「俺は探偵を書くんじゃなくて、探偵になりたいんだ。」って言ってるとこか? あれそれはリメイクされた1話の台詞だっけ…ブツブツ
おお流石。安室や世良など、比較的新しいキャラのイラストも押さえてあるじゃないか。
他にも迷路があったり探偵団のオブジェがあったりと語りたいところだが、めんどうなのでへし折って駅へ。
コナン駅。本当の名を由良駅。大山―米子―境港間が開通した翌年の1902年に設置された歴史ある駅である。
電車から降りた客を、迷宮なしの名探偵が迎えてくれる。
…ふるさと館から駅まで、1.3㎞ほど。戻れば、ちょうど開館時間かな?
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石ノ森章太郎氏の記念館と同じく、館内は青山剛昌氏の人生を解説する場から始まる。
1963年6月21日(怪盗キッドと同じ誕生日)に生誕。巨人ファンで野球少年であり、ちばてつや氏の漫画『おれは鉄兵』の影響で小学生時代から剣道も学んでいたそうだ。それらの経験は、後々創り出す『4番サード』『Y∀IBA』に活かされることになる。
卒業文集には、”私立探偵専門のマンガ家になりたいと思っています。”と書いていたらしい。…夢が叶ったってことなんだなぁ。
ファンなら皆知っているだろう。青山氏がガンダムファンだってことは。
こちらは学生時代に着たという、シャア・アズナブルのコスプレ衣装。よくこんなもの寄贈してくれたなぁ…!
青山氏の仕事部屋。机の上に散らばったイラスト集、一枚くれ。
もちろん貴重な原画展もある。
「御主人、あなたです!!!」と指さした冒頭の名場面から、おっちゃんが砂浜で探し出した結婚指輪を英理に投げるシーンまで、いやもう見ていて飽きないこと飽きないこと。
マンガができるまでが、氏の直筆解説入りで展示されている。コロナの影響で残念ながら公開が1年延期になってしまった、映画『緋色の弾丸』のアートも。
面白いことに、作中で使われたトリックが体験できるコーナーもあった。
そうそう。このセロハンテープで密室を作るトリックで、会社を無人状態で戸締りして早期退社したこともあったなぁ…。
コナンは、私に色々な知識を与えてくれた先生である。
先生のプライベートな交流として描かれた中の一片。全国駅伝大会で、鳥取育英高校が出場したときのエールだ。世界的に有名なだけでなく、こういう地元想いな方であったからこそ、ここまで大規模な施設が作られたのだろう。
他にもアニメのセル画、映画のポスター一覧など垂涎なコーナーをじっくりと見た後、巨大な陶板アートでフィナーレ。
ああ……………
楽しかった。それしか言えねぇ。
いやぁ、私はコナン君ほど賢くはないけれど、”正しいと思うことのために躊躇わず動く”というその姿勢には、昔から憧れたものである。腕っぷしは強くないが、彼もまた強さを持ったヒーローなのだ。
“知識がつけば”と見始めたアニメだったが、今思えばそんな強い彼に近づければという想いで観続けていたのかもしれない。知識であれ、筋力であれ、勇気であれ。”強くありたい”と想うこの気持ちは、私の心の揺ぎ無き真実だ。