早起きは零人の得
9月11日
思惑どおり5時に起きて、テントの撤収を始める。
旅を始めてから、恐ろしいほど早起きになった。日が差す明るさに敏感になり、ちょうど6時には目が覚めるようになってしまった。
そんな私の、さらなる早起き。今日は、いつもとは違う予感がするぜ。
県道4号から、山を越え国道178へ。余部(あまるべ)鉄橋をくぐりつつ、雨が降る前に鳥取を目指す。
山陰の兵庫から鳥取へ至る道は、途切れ途切れにつながる国道178と自動車専用道路と化した国道178、そしてそれらをつなぐ県道、鳥取に入ったら国道9道とが複雑に絡まり合い、非常にわかりづらい。
迷うたびに“時間がないのに”と気を揉みつつ、なんとか鳥取へ。
鳥取に入ってすぐ県道319へ入ると、鳥取砂丘が近づいてくる。
道中でその片鱗が見られるのではと思ったが、残念ながら海岸沿いは木々で囲まれている。
駐車場に駐車しても、ビジターセンターが視線を遮っている。
が、その”目隠し”がかえってワクワクした。鳥取砂丘は、これを登った先だ。
周りに人は、極わずか。2、3人ほどしかいない。
しめた。誰もいない砂丘を撮れるぞ…!
「ウオオ・・・!」
にやけた。
砂漠だぁ。
さすがに陸側には緑地があり、そちらへ目を向ければ異国情緒は薄れるのだが。海側は、まさに”砂漠”と呼べるにふさわしいものだった。
一番高い丘、”馬の背”に向けて歩を進める。
うーん、写真じゃ伝えられない、このもどかしさ。
この丘、実際に見るとメチャクチャ高い。そして急である。
幾つもの足跡が残っている。
上り坂に入り、足に荷重をかけるとたちまちそれが砂にめりこみ、やや下に下がる。大股で歩いても、少ししか進まない。けっこう、つかれる。
たかだか砂丘と油断していたが、汗の粒を流しながらエッホエッホと砂の山を登る。見渡す限り、人は無し。本当に冒険をしている気分だ。
頂上。
すごい…。
稜線が続ていていく様はまさしくエジプトかどこかなのに、左を見れば海。日本だ。
変な気分である、思わず笑ってしまった。
「あれはオアシスってやつなのかなぁ…。」
見渡せば、本当に人は私しかいないじゃあないか。あの鳥取砂丘に、私一人である。贅沢だ!
雨予報のせいもあるのだろうが、やはり7時30分着というのが功を奏したのだろう。
砂が音を吸収するのか、窪地に下りると辺りが静寂に包まれる。
それを大声で破ったりして、”独り”を楽しんだ。
駐車場に戻る道は、長い上り坂になっていてこれまたキツい。
汗を流しながら登っていると、先ほどの階段から次々と観光客が入ってくるのが見えた。
“おお、グッドタイミング…。”
優越感に浸りつつ、誰もいない砂丘に別れを告げた。
休憩所の屋根に入ると、これまたちょうどよく雨が降り始める。
…にもかかわらず、その時間に訪れる観光客の多いこと多いこと。
「車の人らは、天気予報とかに気つかわないんだろうなぁ…。」
つねに天気に気を配るバイク旅は決して楽ではないが、今回ばかりはそれで良かったと思った。
旅慣れした旅人への、早寝早起きしたいい子への、いい褒美だったのだ、あの無人砂丘は。