風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

龍への道は風吹き荒ぶ

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滋賀県では琵琶湖のほとりに助けられたり、ここ23日はホテル続きだったりと、また野宿生活に戻れるかと不安になってしまう。だからこそ昨晩は念入りにテントを張れそうな場所を地図で探していたのだが、いくら目途をつけても絶対はなく落ち着くはずもない。

チェックアウトまでの時間が、なんだか憂鬱だ。

 

旅中ならずとも、こんな時いつも自分を励ましてくれるのは楽曲たちだ。

細々とつながるホテルのWi-fiYoutubeを開き『動く、動く』とか『渚にまつわるエトセトラ』とかとかを聴いて心をまぎらわす。

ここ最近、旅が辛くなってきたと思わないと言えば嘘になる。帰りたくないと言うのも嘘だ。だが、ここまできて辞めたいと言い出すのは、それはもっと嘘になる。

ワンツースリーで動き出せ、俺の体。

 

 

 

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今日は宮津の天橋立へ向かうのだが、嵐のお陰でさすがに風が強い。油断すれば信号待ちで倒れてしまいそうだ。舵の先の雲も、重く濁っている。

 

宮津に入り数分走ると、天候が一気に悪化。ポツポツと天雫がバイクを打ち始め、天橋立に着くとそれがワァッと勢いを増した。

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京都は雨なしに名所は見れないようである。

 

 

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天橋立といえば、優雅に曲線を描きながら阿蘇海を横断する松原の姿が目に浮かぶ。が、それは文殊山に登って見れる景色である。下から見ると…、まぁ、こんなだ。

かといって飛龍と称されるそれを見るには、入園料を払って『天橋立ビューランド』なる施設のリフトやモノレールに乗る必要があり、金がかかる。仕方がないので、その龍の背を地道に歩いてみることにした。

 

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さすが日本三景の一つというだけあって、周囲には店が立ち並んでいる。

 

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小天橋。またの名を廻旋橋。というのも、この橋は船が通る際に一文字に旋回するのである。これを渡れば、天橋立のスタートだ。

 

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宮城の松島、広島の宮島とともに日本三景に数えられる天橋立であるが、ここはただ見るだけでなく歩けるであることが特徴的である。幅3.55.5mの道路沿いには約7,000本の黒松が立ち並んでおり、日本の道100選にも選ばれるそれは景観を保持するため砂利道のままとなっている。ちなみに125㏄以下ならバイクも通れる。

 

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ひっそりと松島と宮島の松も植樹されていた。

 

 

 

そんな足で体感できる景勝地だが、正直道を歩いているだけでは頭上を覆う松が見えるだけ。山の上から見た壮大な景色には及ばない。

そんな時はあえて道を外れてみよう。敷かれたレールで見られる景色なんてものは、所詮知れているのである。

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外れてみれば、思わず声を漏らす感動が待っているものだ。

 

 

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雨は止んだが、それと入れ替わるようにして強い横殴りの風が吹き荒れる。髪は視界をふさぎ邪魔になるし、浜の砂粒がピチピチと肌に当たって痛い。カメラをかばいながら歩くが、やはり砂は入ってしまうだろう。

松の道に戻れば、砂は幾分か木々が防いでくれるが。やはり歩くなら、この景色を拝みながら歩きたいものだ。

 

平坦なようで意外と砂深く、歩きにくい道を12歩と歩く。端まで行く気はないが、風を浴びながらの行軍はなかなか痛快だ。

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よく整備された道を歩けば、楽だろう。安全だろう。だが、そこじゃあ見られないもの得られないものが、きっと外には転がっているのだ。

だからどんなに辛くとも、外れた道を歩き続けなければならない。平凡な人間に収まりたくないのなら。孤高の龍のように、逞しくなりたいのなら。

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