ムーンライト銀河
「…。」
「とぉっ」
バシャン。
「くぁ~~~~~っ!」
辺りは湖水浴やグランピングで、優雅に週末を過ごす家族ばかり。
なんだか悩んでいるのが、バカバカしく思えてしまった。
意を決して、この旅どころか人生初の湖水浴を楽しむ。
湖面ギリギリから見る琵琶湖は、恐ろしくなるほど広大だった。穏やかな生ぬるい波に揺られながら、汗も悩みもふるい落とす。
「初めてが琵琶湖とか、幸せすぎんだろ…!」
湖水浴は、海水浴と違って体がベタつかず、後処理が乾かすだけだから旅人にも優しい。
滋賀県って、このためにあったんだな。
正直、琵琶湖しかない場所だと思っていたが。なるほど、琵琶湖があれば十分なのだ。
なにも寝るわけでなくとも、休みたい時にサッと設置してサッと外せるのがハンモックのいいところ。
頭を冷やしてもう一度調べてみたら、滋賀にもひっそりとトライアンフがあるようだった。しかも電話してみたら、オイル交換OKとのこと。活路が見えてきた。
~~
昼間だけでは満足しきれず、もったいないと月が出てからもう一度琵琶湖に浸かる。
湖面に流れる月の光に入れば、まるで銀河を泳いでいるような気分になれる。
「"相対性理論"の、あの歌の世界だなぁ…。」
夜の湖は、当たり前だが暗い。正直、恐い。波も昼間より強くなっている。
…のだが、やはりその恐ろしさがあまりにも非日常的で。魅惑的で。
まるで、いけない火遊びを楽しむ子供のように、湖波に肩を揺らすのであった。