風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

旅終えた旅人

やはり、漁港の朝は早いのだな。

漁師たちの声で目覚める。

夜中に騒ぐ若者たちの声とは違う、張りがあって暖かみのあるじいさんばあさんの声。

 

潮風に天幕はブルブルと震え、ベンチレーションからはひんやりとした空気が流れ込んでくる。

 

「…いいもんだな。」

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海で迎える朝ってのは。

 

 

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このまま東へ向かっては新潟に逆戻りしてしまうので。

しんきろうロードを走り終えたところで転身、国道8号線に入り、西へ進んだ。

 

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国道から望む富山の山は、麓の田んぼから奥の高山へと、美しいグラデーションで彩られていた。

左手を見据えばそれらが見え、右手を覗けば海が顔を出す。バカでかい建物などはなく、山から海へ、きれいに曲線がつながっている。その上を、朝の爽風が吹き抜ける。

「なんていい気分なんだろう。」

贅沢なひと時だ。

 

 

 

途中でまた海側へ折れ、国道415へ入る。さらにそこから海沿いの道へと折れると、大きな斜張橋が見えてきた。

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まるで天へと昇るかの如くそそりたつ橋桁。これを渡れば、『海王丸パーク』へと至れる。

 

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海王丸パークとは、かつての大型帆船『海王丸』が飾ってある広大な公園である。

ここも、以前連れてこられたことあるので来てみた。思い出を振り返ってもどうにもならないことは知っているのだが、やはり現在の様子も見てみたい。存外私は、女々しい性格のようだ。

 

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こちらがその海王丸。

公立商船学校11校のための練習船として、姉妹船の『日本丸』と共に昭和5年、進水した。

後には運輸省(今の国交省)の練習船としても活躍し、平成元年の引退までに地球約50周もの航路を旅している。育てた海の若人たちは、じつに11,190名だとか。

 

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4本マスト、バーク型。金をあてがったその優美な姿から、海の貴婦人と称されているのだとか。

…王なのか婦人なのかどっちなんだ。

 

 

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先ほど渡ってきた『新湊大橋』が望めるのも、この公園のもう一つの特徴である。延長3,600m、なかなかの長さだ。渡っている時の気分としては、東京湾のゲートブリッジが近かった。

 

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車道の下には歩行者用通路も配置されている。全天候型…つまり屋根つき窓つきのため海風を浴びれないのは残念だが、その風の強さを考えたら当然か。

 

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見上げればなかなかの高さである。

いつだか登った青森の大橋と違い、こちらはエレベーターがあるので非常に助かった。

 

 

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ピクニックエリアや遊具などもあって、よく整備された公園だ。朝方着いた時は、熱心に掃除する係員たちが見えた。

 

 

 

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テラスが洒落たパン屋『B-CUBE』でひとやすみする。

昔はここ、洒落た洋食屋だったんだけどな…。あれから何年たったろう、さすがに潰れてしまったか。

そういえばあの時は夜に来たんだった。ライトアップが綺麗だった思い出がある。

「今日はもう、ここで終いにしちまおうか…?」

幸い、テントを張れそうな草地も発見済みだ。

 

 

 

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癒しのドリンクバーを馳走になりながら、海王丸を眺める。

「地球50周かぁ…。」

何万キロも旅をして、ようやく安住の地に着いたってところか。綺麗に修復されているみたいだが、その姿からは歴戦の旅人の風格を感じ取れる。

 

私も…、私もこの旅が終わって、どこかでホッと一息ついている頃には。あなたみたいな風格が、少しは身に付いているだろうか…?


せいぜい、今は進んでみることだ


そう、言われた気がした。

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