風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

美しき山奥

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下呂から高山へと続く41号は、災害のため通行止め。

代わりに白鳥方面をグルリと迂回する高速道路が区間的に無料となっていたが、ここまで来て高速道路を使うのも嫌だ。

仕方がないので、和良の道の駅で一泊。翌日は県全体が豪雨だったので、さらにもう一泊した。

 

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岐阜の山村は、なんでこう絵になるのだろうか。

木が伸び伸びと育っており、その緑が青い夏空に映える。

 

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道の駅から5分ほど歩いた田舎道のには、『蛇穴』なる鍾乳洞の端部があった。

その昔、法事などで膳や碗類が足りなかった際、村人はその品目を書いた紙をこの前に置いてお願いをしたのだという。すると、翌朝にはここにいたという乙姫様(蛇神様)がそれらを用立てて置いてくれたそうだ。

ある時、とある村は鼓を五つ借りたが、それらがあまりにも珍しかったため、一つ隠し持って返さなかったそう。するとその夏は酷い干ばつに遭い、作物は全滅。“乙姫様の祟りだ”と村人が雨乞いをすると、今度は烈しい雷雨に遭い、雷によってあちこちで火事が起こるという惨事になった。

その後、この穴からは大蛇が踊り出て、天に昇っていったのだという。

 

蛇というとおどろおどろしいイメージだが、ここに居たのは心優しい蛇様だったらしい。昏い洞窟に差す後光が、その性格を物語っているようだった。

だが謝っても許さず、さらに追い討ちをかけるところは蛇らしいが。

 

 

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青い田んぼが朝日に映える農村を出発する。贅沢な朝だ。

峠に近づくにつれ山陰が多くなり、その中に一本、二本と木漏れ日が差し込んでくる。その光のカーテンを突っ切るときのなんと気持ちのいいことか。

 

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狭くタイトなコーナーが続く山道を抜けると、郡上八幡城が見えてくる。正直もう山城は懲り懲りだったので、こちらを見下ろす目を無視してコインランドリーに入り、汗だけ吹き飛ばして国道156を北上する。

郡上八幡から白鳥へと抜けていく道は、住宅地と田畑と、そこから一段下がった長良川とがよく調和した道で、川に足を突っ込んで釣りを楽しんでいる人々を見ると、ああ夏休みだという気分に浸れる。

 

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それから食料を買ったり、給油したり、立ちゴケしたりしながら、ひるがの高原、御母衣湖と顔を会わせていけば、白川村へと至る。そう、本日の目的地は世界遺産・白川郷だ。

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これは白川郷ではないただの山村だが、そんなただの山村でさえも見応えがあるから、岐阜という県はつくづく恐ろしい。

 

 

 

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白川郷着。

 

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まぁ、特に語る事はない。御覧のとおり、有名な合掌造りの家々が並ぶ村である。盆休みを満喫する客の間をすり抜けながら、そばを食べたり、飛騨牛アイスを食べたりしてそれらを見て回った。

アイスクリームじゃなくて、アイスなのがミソね。アイスクリームは村全体、一律350円だったから。パックで売ってる市販品アイスのが安いのである。

 

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掌を合わせたように丸太を三角形に組むことから名づけられた合掌造りだが、じつはその定義は一様ではないのだとか。

急こう配の屋根は雪下ろしの作業を減らすのに便利なほか、屋根裏に二層、三層の部屋を作れるといったメリットもあったりと結構合理的な仕組みらしい。それでいて観光客を呼べるお洒落な見た目でもあるのだから、村人たちは至れり尽くせりである。

…という訳でもなく、雪の重みなどで茅葺も当然傷んでしまうから、年に1、2度はと呼ばれる補修作業を住民共同で行なうそうだ。

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ここ荻町の若者たちが、地域資源を売らない・貸さない・こわさないと保存の原則を掲げたのが1971年。長野で寄った妻籠宿などと共に、日本初の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれたのは1976年。白川郷・五箇山の合掌造り集落として世界遺産となったのは、1995年。短いようで長い歴史である。

妻籠宿や下呂でも思ったが、山奥の不便さなども顧みず、先人たちの想いを、こうして形として残し紡いでいく住民たちの心意気たるや、見事である。

 

 

 

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岐阜は、今まで一度も寄ったことがない県で、実はなんだか山奥で、暗そうな場所だな…というイメージがあったのだが。

さすが、美濃を取るものは天下を取るといわしめた岐阜の街並みは壮大で、山を上れば、険しい岩々はあれど、川は清らかで山は美麗。実に目を輝かせてくれた、明るい場所であった。

誠に勝手なイメージではあるが、伸び伸びと息づく大自然の長野方面と、お洒落な街並みが多い京都など近畿方面の、ちょうど中間といった印象である。

 

群馬、長野、岐阜…。内陸続きの旅程を見たときは正直しんどかったが、奇怪面白い群馬、広大雄々しい長野、爛々快走の岐阜と、それぞれ違って、実に興味深く楽しかった。

次は富山、いよいよ久々に海に出る。もちろん、まだ山道は続くのだが。

梅雨空ではない紺碧の海原を見るのが、今から楽しみである。

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