焦り雨
3月2日
寒い。
暖冬だのなんだの騒いでいたのが納得できた、昨日の陽気などどこへやら。
「グランドシートないもんなぁ…」
雨が降っていることもあるのだろう、地面からの冷気を銀マットとシュラフでしのぎつつ、起きて寝返りを打っては寝てを繰り返す夜だった。
こんなとき、”家の布団はあったかかったなぁ…”なんて実感するのだろうかと諸君は思うかもしれまいが、このときの心持はただただ、寒い。そして寝たいの2点張りだった。
そこに住居への憧憬など抱く隙などなかった。
フライシートをパンパンと小気味良く雨粒が鳴らす中目を覚ますと、くしゃみを一つ。
目をこすって眠気を追い払うと、あらためて外気の寒さが身に染みた。
すがるようにしてキャンプバッグの中から電熱ウエアを取り出し、一息つく。
…様子を見るに、外は小雨…という気分ではなさそうだ。雨だ。普通の雨。
こんな中バイクで移動するのは忍びないな…はてさてどうしましょうか。
前日の予報では夕方まで降るつもりだったなぁ。今日は1日中、テントに引きこもってしまうか?
昨日の晩は、ほとんど原稿を書くだけで時間が過ぎてしまった。だいたい、6時半から10時半くらいだっただろうか。時間をかけすぎである。しかも、かけた割には上手いものが書けてない…ひどい出来だったから腹が立つ。
1日目ゆえの焦り。夜にすべてまとめて書こうとしたが故の冗長な文…。言い訳をするとしたらそんなところだろうか。
もっと上手く…というか、爽やかに文を書けるようになりたい。なにもテントの中だけじゃない、道すがら書きたいことがあれば、すぅっとペン(パソコン)を取ってその場をデスクにできるような。そんでもって、必要最低限の量と時間で、要点をさらさらと書き上げてしまえるような爽やかさが。
旅慣れしたら、そうなれるのだろうか。
旅立つ前は、今後に向けて英語などの勉強もテントでしたかったのだが。当分先の話になりそうだ。
話を戻して。その勉強だとかを、今日はテントに引きこもってやってしまおうか?
天気予報を見てみる。明日は晴れだ。ならばいっそ、明日意気揚々と…。
と思ったが、週末の予報をみて愕然とした。また、雨が降るようだ。
雨が降る度に止まっていては、埒が明かないような…。いやいや、気ままな長期旅だ。それでもいいんじゃないか。でも、埼玉には1週間しかいられないし……。
確実に、焦っていた。自由気ままな旅とは、笑わせてくれる。
「風の吹くまま気の向くままにかい!」と笑いかけてくれた、昨日のスポーツスター乗りが脳裏をよぎる。
私は昔から、ちょくちょく物事に怖気づいて。焦って。格好がつかない。なんとかしたい、私の昔からの悪癖だ。
風の吹くように。
そうなりたい。そうなれるのだろうか。
これから旅を続けていけば。これから旅を続けていけば。