ドライブ
7月22日
…雄鶏が何処かで鳴いている。
止むことのない河の音が、再び脳に響き始める。
「…気持ちいい朝だ。」
結局昨日はあの後、新潟まで走ってきてしまい、胎内で雨の隙間にテントを張った。
胎内観音で管理人してたおばさんと話したりして、暇をつぶしてた。
夕方はものすごい湿気でシュラフ要らず。寝苦しい夜だったが、日付の変わり目に降った大雨のおかげで気温が一挙に冷え、けっこう心地よく眠れたのである。
雨も困るが、暑いのも困るこの夏。このぐらいの天気がちょうど良いのかもな。
…なんて曇りの有り難さを実感していると、西の方から青空が近づいてくる。ちょうど走り出す時になって晴れだすなんて、今日は不気味なほど親切な天気だ…。
まっこの場所といいこの天気といい、お膳立てしてもらっちゃあ行かない訳にはいかないでしょ。
草原のようにも見える田んぼ地帯を駆け抜け、
段々と増えてくる背高な木々をかすめていけば。
「うおーっ、やっぱ海はいいなぁ!」
山形から世話になっている国道113へと舞い戻り、この絶好のドライブ日和を我が物とした。
113号の海岸線はあまり海が見えないのが残念だったが、それでも潮風を受けつつ松林の間を駆け抜けるのは心地いい。揺れる木々が、まるで小躍りしているかのように思えた。
食材を買うコンビニも、洗濯をするコインランドリーも無視して、走りを貪る。
ガソリンスタンド…は、見逃しちゃいかんな。とエンジンを一時停止。
「ハイオクを10リッターだけお願いします。」
「お支払いは…」
「カードで。」
えぇーっとカードカード、カードカードにカード……カード…と…。
…
……
………。
「すみません、やっぱり現金で1,000円分だけお願いします。」
~~
“———はい、ファミリーマート米沢中田店です~。”
「あのーすみません、クレジットカードの忘れ物ってありませんか?」
「…いつごろでしょうか?」
「おととい…かなぁ。」
「失礼ですが、お名前は…」
「木村峻佑です。」
「ありますよ~! クレジットカード!」
………フーーーーーッ…。
……空が………青いな……。
…………
………………。
「……………………ドライブだっ!」
続け