風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

端の町

7月19日

 

「一人でしょ」「警察とか来ないのかな」

「ガチじゃん」「どっからも見えないっていうね」

「どんな人入ってんだろ」「女だったりして」「女があんなバイク乗る?」「わかんねえよ〜」

 

 

 

「そんで知らないだれかに連れ去られて、殺されちゃったらどうするの!」

「親との縁ってそう簡単にきれないんだからね!」

 

 

 

 

…うるさいなぁ。

テントに対する声ならまだわかる。正直まだ聞き流せず、聞くたびにビクつくが。まだ想定の範囲内だ。

だがまさか、家出少女への折檻まで聞かされるとは…。

 

米沢の道の駅では、道の駅としては初めて「テントを張るな」と言われた。

「車中泊はいいのに?」と私にしては珍しく食い下がったが、「車の人はー、ほら、いつ来ていつ帰るかなんてわかんないからさ」なんて釈然としない答えをそのおっさん職員に言われ。

あえなく近くの公園に来たが、なかなか落ち着かない公園だったというわけである。

これならまだ、トラックのアイドリングのほうがマシだ。

 

 

 

とはいえ、良いこともあった。道の駅では同じくテントを張ろうとしていた若いチャリダー二人と知り合えたからだ。

なかなかこの旅で若者、しかも旅人と話す機会なんてない。聞けば関東一帯周遊の旅のまだ5日目だそうで、テントをいつもどこに張っているかなど尋ねられた。

私とてまだまだ未熟者だが、経験した範囲で助言をさせていただく。

 

偶然にも彼らは、道の駅羽生ーかつて私が旅三日目にテントを張った場所に、同じようにテントを張ったなんて話も飛び出してきて。そんなことを聞いてしまうと、なんだか昔の私を見ている気分になってしまった。

「不安だろうなぁ」「恐い時期だろうなぁ」と察すると、思わず何度も「気を付けて」と言わざるを得なかった。

 

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そのうち"KEI STORIES"youtubeか何かで検索したら、彼らの動画が観られるらしい。楽しみだなぁ〜。

 

 

~~

そんなことがあったからといって、決して米沢に難癖をつける訳ではないが。人間というのは印象に惑わされる生き物だ。

米沢を見る気も失せたので、天童で泉さんにいただいた銭湯の回数券で1日過ごし、飯豊の道の駅で一泊、新潟との県境へ近づいた。

 

721

 

山形は西南の端、小国町へ到着する。

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ここの道の駅はスキー場を併設した珍しいつくりで、建物に反して駐車場は広くとってある。ロケットⅢを停め、端の町を見に歩き始める。

 

この町のあちこちでは、白い森なるキャッチコピーが多く見られた。

 

冬になると、そこはしんしんと降り積もる雪が あたり一面を埋め尽くす 寒さきびしい白い森。

夏になると、そこは白い木肌のブナが涼しげに佇む白い森。

 

…なるほど。たしかに自然豊富で、淀んだ空気がない町である。謳っていることは真実なのだろう。文のリズムも質感もいい。

 

 

…のだが、のだがだ………。

 

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何もない。

歩く人も…、そんなにいない。

 

 

歩き旅というのは疲れるが、何か目が覚めるような発見や、人との会話をするたびにそれが和らぐものなのだが。

こうもなにも、つまみ上げて語るべきものもないと、疲労ばかりが溜まるだけである。

 

ひと昔前の私だったら、

本当の旅人は、どこでも何かを見つけられる筈なのに…。私はまだまだだな。

なんて思うのだろうが、流石に私もそろそろ旅人を名乗らせてもらおう。そして意見させてもらおう。

 

旅には、どうしようもなくつまらない時間もある

 

仕方のないことだ。

確かにこの広い世界、目を凝らして見ればどこにだって発見があることは確かなのだろう。が、それを見るのが人間であることが肝心なのである。広くあまねく世界を見渡す神でも、ありとあらゆる情報を収集して分析する、機械でもない。人間なのだ。

人間なのだから、好き嫌いがある。それは食べ物でも人間でも、場所でも同じだ。

この小国町も、見る人が見ればまばゆく見えるのだろうが。私にとっては、それこそ白く霞んだ味しかしなかった。

そういうものなのだ。と思う。

 

 

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1時間半ほど、駅を回ったりしてみたがやはり味は変化せず。

汗は次々と滴り落ち、カメラを掲げる肩と腕は重く。意図せず足が摺り足気味になってきて、ザッザッ…と音を立て始めた。疲れの兆候だ。

そんな状況でも、機械の如く足を前へと繰り出す我が両脚には尊敬の念を抱くが、そろそろ神経と脳が限界である。幸い見つけたツルハドラッグに入り、一服した。

 

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アイスにドリンクに、ついでに切れてた制汗スプレー。こういう場所では、アイスもドリンクもそれぞれ100円あれば買えるのが有り難い。

 

人目を忍ばず軒先に座り込んで、アイスを口に掻き込む。続いてドリンクを半分ほど一気に飲み、残りは衿元にしまって冷材にした。

「…さて、これからどうしたもんか……。」

予報では雨がふる予定だったが、なかなか降らない。それは代わりに、湿度の高い晴れを意味しているようなもので。環境はどんどん悪化していた。

 

目の前を、荷物を積んだクルーザーが通り過ぎていく。

別にすべてがすべてそうではないのだが、交通の便が悪い山の真ん中、でありながらあまり力を注がれない県の端。

通り過ぎていく人が多いのも無理はないのだろうか。

 

風を切るはずのライダーが、こんなところで汗まみれになっているのも変なハナシである。

…さて、どうするか………。

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