風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

立石寺

IMG_5589.jpg

 

719

 

「じゃー俺は蔵王回って行くから! また!」

昨日の泉さんお手製の朝ご飯もご馳走していただいた後、彼のハイエースは13号線に消えていった。

InkedIMG_5573_LI.jpg

まじめに撮った。

 

劈掛拳の練習をしていると、朝っぱらから強い日差しが降り注いでくる。今日はあの長階段で有名な立石寺だというのに。大丈夫か…?

 

 

 

天童から山寺へはさほど時間をかけずに行ける。山に向かって走り続けると、やがて穏やかな河が顔を出し、その周囲に観光客向けの店舗が多数現れる。

IMG_5581.jpg

泳ぎたい。

 

今日は日曜日だ。観光客でごったがえさない内に、さっさと登ってしまおう。

長羽織はバイクに置いておき、開店準備で忙しい街道を早歩きで抜ける。

 

 

IMG_5594.jpg

山のふもとにある根本中堂にて御朱印帖をいただいて、登山道入り口へ。

 

IMG_5882.jpg

途中にある日枝神社の茶屋にて、旅人と知るや「がんばって」と声をかけていただいた。「なんか買ってく?」とか言われずただ応援されたのが妙に嬉しかったので、下りてきたらまた寄ろう。

 

 

IMG_5612.jpg

登山道入り口。地味に300円かかる

「お荷物預かりましょうか」とご提案いただいたが、こちとらずっとこれを背負って歩いている訳で。手放したら負けな気がしたので遠慮した。

 

IMG_5621.jpg

入り口からしばらくは、比較的傾斜が穏やか。頭上を数多の草木が覆っていることもあり、歩は快調に進んだ。「これぐらいなら、街歩きしてるときよりラクだな…。」

 

IMG_5647.jpg

 

IMG_5648.jpg

閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声

で有名な芭蕉の句をしたためた短冊が埋まっている、せみ塚あたりにて「こっから傾斜がキツいのよ」なんて他の登山者の声が聞こえてくる。確かにそうだが、まだ許容範囲内だ。

 

ちなみに芭蕉と弟子の曽良が登ったのは夕刻とのことで、おくのほそ道によると土石老いて苔滑らかに、岩上の院々扉を閉ぢて物の音聞こえず—"とのことで、まぁ句にあるように静かだったそうである。

だが今は…。正直、観光客の皆さんで騒々しい。

 

IMG_5659.jpg

奥の院までの八百余段は修行者の参道といわれ、ここを開山した慈覚大師の足跡を先祖、そして子孫も踏んでいくことから、親子道とか子孫道とも呼ばれているらしい。

石段を一つ、また二つと登るたび煩悩が消えるそうだが、今の私の煩悩は…。

「人のいない写真を撮りたい」

私もまた観光客の一人なので我儘極まりないのだが、それでもいつも一人で各地をほっつき歩いている身としては、正直鬱陶しく感じてしまうのだった。

 

IMG_5664.jpg

仁王門を抜けると、草の笠がなくなり太陽が一挙に背中を炙り出す。その熱と急を増す階段のおかげで、さすがに息が上がってきた。だが足を止めるほどではない。

 

IMG_5677.jpg

登山開始から約20分後。宝珠山立石寺奥の院へと到着した。

顔をつたう汗に目を細めながら、振り返って見える景色に感嘆する。

 

IMG_5705.jpg

「階段だけでけっこう高くまで来れるもんだねぇ…。」

もう少し上にある五大堂に行けば壮大な展望が見られる、と看板が言っているので、もう少しだけ脚を働かせる。

 

IMG_5723.jpg

おお、これは確かに…。来た甲斐があるな。

岩肌から張り出た木造の小屋から、山寺一帯が見渡せる。

どれ、せっかくだから記念写真を…。と三脚を設置し始めると、いち早く来て撮影していたカップルがそわそわしている。だから、

「あっまだ時間かかるので、どうぞどうぞ。」

 

…その譲り合い精神が、えらい状況を招いてしまった。

けっこうそのカップル、撮影に時間がかかる。「…不慣れなのか?」

こちらはもうとっくにセットアップ完了なのだが。ふと下を見ると、後続の観光客たちがぞろぞろと……。ああ、これはヤバイやつや。

 

あっという間に人混みになる小屋の中。コロナがみんな恐くねーのか。

終いにはシートを敷いて座る老人まで現れて、場はちょっとした混迷を極めていた。

あの時…、あの時、あんなことを言わなければっ………!!”

私の煩悩は、800段の石段では消せなかったようである。

 

 

~~

 

IMG_5732.jpg

30分粘って、なんだかな写真を撮って下山する。

べつに普段だったら急いでいるわけでもないのでいいのだが、今日は訳が違った。もう一ヶ所、行きたい場所があったので心中穏やかではない。

 

「正直、そこまで疲れなかったし…。心中は清々しいとは言えないし……。やはり、もう一歩きしないと気が済まんね。」

 

こちらの立石寺は余興。私らしい修行はここから始まるのだった。

 

 

                                          続く

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する