風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

バカになる

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…もう10時か………。

 

結局、一昨日に続いて昨日もスパ銭に世話になってしまった。

恐ろしい出費だが、雨だからしょうがない。天のご機嫌ばかりはどうしようもないのだ。

 

リクライニングチェアが並べられた休憩所の窓は開けられていて、時折ピュウピュウと風切り音が聴こえてくる。それに合わせて冷たいと思えるほどの冷気も舞い込んでくるのだが、それが心地よかった。

思えばいつぶりだろう。こうして風を、冷たさを、純粋に心地よく感じられるのは。テントの中では、どちらも恐ろしさでしかない。建物というのは、本当に有難いものなのだ。

眠気が振り払えない。

…ヤバイ。このまま、ここに居続けたくなってしまった。

 

誘惑を振り払うように雨雲レーダーをこまめにチェック。正午ごろ、今だと身支度をした。

幸い泊まった場所は入館から24時間制なので15時ごろまでいられるのだが、ここでわざわざ高い昼飯を食う理由もなかろう。

 

出たくないという体に鞭を打ち、館内着から道着に着替えてチェックアウトを済ませる。いざ、玄関を出てみると……、白い線が眼前に降り注いでいた。

 

 

あれ…? さっき見たときは降ってなかったハズ…。

「ヤバイ、バカだ、バカバカバカ…。」

チェックアウト寸前に、もう一度外を見ておけばよかった。もう館内には戻れない。

なんのために二日もここに居たんだバカヤロウ…!

 

 

~~

やらかした想いを引きずりながら、雨雲を避けて秋田市から南下、由利本荘にやってきた。幸い雨は降っていないが、時間の問題だろう。

さて、ここからどうするか…。

 

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ここから山の方へ入って、小野小町伝説の残る雄勝にはぜひ行ってみたい。だが、雨雲を避けられるのは海沿いの象潟方面だ。

そちらも行く予定ではあるが、どうせなら先日教えていただいた温泉をラストにして、秋田を去りたい気持ちもある…。いっそ、雄勝へ行ってから、また海側へ戻ってくるか。

 

…と海と山を往復する算段は決まったが、結局雨雲があるから今日は山へ行けない。

近場でテントを張ってしまおうかとも考えたが、まだ14時か………。

昨日1mmもスロットルを捻っていない右腕が、なんとも寂しそうであった。

 

 

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「どーせもう濡れてんだ! 雨雲に向けて行っちまおう!」

予報通りなら、100%雨にぶち当たる。日数的に余裕はあるし、ここで無理して前進しても、なんらメリットはない。

だが、雨に左右され続けたここ幾日。そろそろ反抗してみようと心に火が…。いや、心がヤケになってしまったようである。

 

 

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幸い山道で降られることはなかったものの、田園地帯広がる羽後町付近に入ったところで雨が一気に強くなってくる。今日はここまでのようだ。

 

 

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道の駅にバイクを停め、傘を差して羽後町を少しだけ散策する。

少しばかりだが昔風の建物が残っていて、ちょっとした歴史の街並みになっている。

 

そういえば羽後は、先日お話したカフェの女性スタッフが出身地と言っていた場所だ。笠を深くかぶる盆踊りが有名だと言っていたが…。

と思い出していると、ちょうどよく『西馬音内(にしもない)盆踊り会館』が見つかった。

 

 

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烏追い笠という三角の笠と、彦三頭巾という黒子のような頭巾を被り、顔を隠して踊る西馬音内盆踊り。

由来などは謎が多いそうで、なぜ顔を隠すのかなどはわからずじまいだったが。闇の中、灯篭に照らされて踊る彼女らは実に幻想的である。動画じゃなくて、実物を見たかったなぁ。

 

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彼女らは端縫いという踊り装束を着るのだが、それがまた艶やかだった。

絹の晴れ着をつなぎ合わせた衣装となっていて、もともとは身分の高い女性がお洒落を楽しんでいたものだそう。左右対称の衣が、ゆらり、ゆらりと揺れるようすはなんともドキドキするものである。

 

 

展示物以外はホールや稽古場があるだけとすぐ見終わってしまったので、道の駅へと戻る。雨量はいっそう多くなっており、気付けば傘を前に傾け項垂れる姿は、西馬音内踊りのようであった。

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それは道の駅へ着いてからも変わらず。

今晩は、ベンチで寝ることになるだろうか……あ、すると、食料はバイクに積んであるから…。下手したら、相馬さんやカフェにいただいたお菓子が晩飯になるのか………。

 

 

「バカだなぁ…。」

呟いたが、まぁたまには。いいんじゃなかろうか。

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