風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

STAYIN' ALIVE

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結局、雨が降るからともう一泊梅沢温泉に泊めていただき、8日。青森を出る。

「この先辛いこといっぱいあるだろうけど、絶対あきらめちゃダメ。ああ、これがどんな風に良いことに変わってくんだろうなって思わなきゃ。

 暗い先は必ず明るいんだから、ゲーム感覚で楽しみなさい。」

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なかなか子供に恵まれない家だったそうで、これから列を作るよう生まれるようにと名付けられた相馬列子さん。

最期まで洗濯にお茶にとお世話を焼いていただきながら、別れを告げた。

 

 

 

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国道7号を通り、山道を通って秋田に入る。

先ほどまでの田園地帯と打って変わった景色からか、怪しい雲行きからか。なんだか急に心許なくなった。

多分、相馬さんにお世話になったからだろう。神奈川から埼玉に出たときや、実家福島から宮城へ出たときのような、親しんだ地を出る不思議な想いに駆られた。

 

 

さて秋田に入った訳だが、正直困っていた。

今までの人生、秋田と関わったことがあまりない。なにが面白いのか、どこへ行ったら楽しそうなのか、まったくわからない。地形を見ても、男鹿半島が飛び出てるぐらいで…。

そのまま7号線沿いに走り、「おっ秋田犬会館……って、どこにあるのかわかりづらいな。」「ロケット燃焼試験場? …は、道中がロケットⅢじゃ厳しそうか。」と、パッとしない空気のまま北秋田へと入ってしまう。

 

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そこの道の駅『たかのす』では世界一大きい大太鼓を見物できた。他にも世界中の太鼓などが収集されており、ちょっと面白い。

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受付のお姉さんに見せてもらったビデオによると、近くの綴子神社では大昔から雨乞いのためなどに太鼓を使った祭りが行なわれているそうで、町の間で競ったりするうちに太鼓のサイズも異様に大きくなっていったとのことだ。

展示されている太鼓を叩くと、小ぶりなものでも結構な迫力で音が鳴り、皮にビィィィンと耳触りのいい余韻が残る。“天まで願いが届くように、大きな音を”という想いは、伊達ではないのだな。

 

「その綴子神社って、ここから近いんですか?」

「うーん、車で5分ぐらい…、歩くにしても、けっこうな坂がありますよ。」

「(なら、かえってロケットⅢじゃないほうがいいか…)大丈夫です、歩くの慣れてるんで。」

と、お姉さんにカッコつけて館を出てみると。

 

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土砂降り。雨乞いが通じてしまったか…?


くもりの予報はどーした!

「っっとに、アテにならん天気予報だな!」

と思わず悪態をつくが、直後に相馬さんの言葉が頭をよぎった。

辛いことも楽しんで…

………そうだ。怒ったってカッコわりぃ。自然を受け入れるしかないのだ。

頭を冷やし、先ほど叱責した雨雲レーダーを見直す。雨は避けられそうもないが、こちらからも雨雲に突っ込み、海側へ出れば少しはマシになりそうだ。

 

降りが弱くなったのを見計らい、ロケットⅢに飛び乗った。

 

 

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まだしばし山道は続く。タイヤを替えたので北海道ほどスリップの恐怖はないが、慎重にラインを選びつつ走る。雨の日は早く逃れたいと焦ってしまいがちだが、そうするとかえって事故りやすい。雨の時ほどゆっくり走るのがベターだ。

 

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厚い雨雲にぶち当たったのか、雨量が多くなりシールドがあっという間に水玉模様になる。本日はアンダーウエアを着けていないので、むき出しになった胸元や前腕、指先に雨の弾丸が強烈に突き刺さってくる。まるで針を絶え間なく突き立てられているようだ。

 

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3月だった千葉初日ほどではないが、さすがに体が冷え始め、歯が揺れ始める。エンジンの振動で指は痺れ、グリップも滑り始めてきた。

だが不思議と胸中は呑気なもんである。

「いいさ、かかってきやがれ。」

スロットルを握り直し、奥歯を噛みしめ、誰が見てるのか無理やり笑顔を作る。

こんな状況だって楽しんでやればいい。俺はこう見えてももう、散々雨に叩かれてきた男なんだ。今更ギャーピーギャーピー騒ぐほど無垢じゃないんだよ。

 

二度とこない今なんだから

酸いも甘いも受けて立ちましょう

            磯貝サイモン

 

 

 

雨雲を突っ切り、辛うじて大潟の道の駅へ着いた。

ヘルメットを脱ぐと、雨粒が髪を……叩かない。やった。

 

24時間休憩コーナーに入り、遅めの昼食を摂る。

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相馬さんが作ってくれた、パンやらおにぎりやら。

さすがに冷えてしまったが、頬張るとあの鶴田のひとときが蘇る。

 

「…いかんな……、北海道あたりから、涙腺が脆くなってるぞ、俺…。」

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