風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

水上散歩

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「………あつ」

ほのかな熱気で目を覚ますと、テントの中は白く染め上がっていた。

あれ、寝すぎたか…?とiPadを見ると、まだ6時といつもどおり。そっか、今日は晴れの予報だったな…。

一晩分たまったSNSのメッセージの中には、「頑張れ!」というかつての級友からの励文が。

…こんだけお膳立てしてもらっちゃあ、起きずにはいられないな。

 

幾日かぶりにアンダーウエアを脱ぎ去り前室から抜け出ると、思わず頭を下げてしまうほどの日光が真っ直ぐに突き刺さる。

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「青い空の下の森かぁ…。」

思えば、晴れの青森は初めてだったな。

今日の風呂は雨の明日に預けて、走ってみるか。

 

 

 

竜飛岬から山を越えた、津軽の日本海側は私のお気に入りの道の一つとなった。

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陸奥湾側とはまた違って意味で何もない、自然そのままの岩壁をひたすら辿っていけば、やがて十三湖沿いの森を駆け抜けるワインディングにさしかかり。

 

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それを抜けると、今度は両手を伸ばしながら走りたくなる田園地帯が広がっていた。五所川原だ。

 

 

走っていると、時折道路の横に沼が見えるのに気付く。その沼の岸と岸を橋がつないでいる姿も目に入ると、どうにも渡りたくなってバイクを停めた。

 

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停めたのは芦野湖。湖なんだろうが、透明感のない水面、水草がむき出したその様は、私的にはどう見ても沼だ。

 

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ここ五所川原金木町は、太宰 治が生まれた地でもある。そういえば『斜陽館』なんて看板が見えたな。

やはりというか、その銅像はどこか思いつめたような顔をしていた。


ちなみに津軽三味線発祥の地でもあるそうで、時期になると演奏会とかが行なわれるらしい。

 

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先ほど見えた『桜松橋』を揺らして進むと、水上すれすれの位置にもまた橋が架かっているのが見えた。

 

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『芦野夢の浮橋』という名。水面が手に届きそうなほど近い。

青天をよく写した沼が眼前に臨むと、ちょうど堤防を境に天地のシンメトリーが描かれていて。そこに水草が浮かぶと、なんだか巨大な地球儀を見ている気になった。

 

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これはたしかに、夢でも見ているかのような光景だ。

 

 

 

先日も伺った青森出身の職場仲間のススメで、南下して鶴田町を目指す。そこの橋を見てほしいとのことだった。

 

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あれか。

思いもよらず今日は橋づくしだな。

 

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丁寧に植樹された遊歩道を進みながら、『鶴の舞橋』へと向かう。木の上では蝉や小鳥たちが鳴いていて、まるで夏のような空間に居心地が良くなる。…て夏だったか。

 

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運悪く雲をかぶっている岩木山を眺めつつ、木版を踏みつける気味良い足音を鳴らしながら進む。

全長は300mで、日本一長い三連太鼓橋とのことである。

飾りっ気も何もないが、木製なのだからそれでよい。それが良い。白い木材で形作られた曲線は、確かに鶴を彷彿とさせる。

 

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ここ廻堰大溜池は、もともと自然流水による貯水池であったものを、1660年に用水補給のため堤防を築いて作られたものだそう。

その後元禄、寛政、文政、明治、大正と、自然災害によって堤防が決壊しては大修理を加えられた苦難の溜池であるとのことである。穏やかな湖面からはそんな様子は想像もできない。

が、そうした関係者たちの努力があったからこそ、ここら一帯には美しい田園地帯が広がっているのだろう。ひいては今日の快走も、その方たちあってのものであるわけだ。感謝。

 

 

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橋上の東屋(?)で一息つく。

この湖には、かつて清水城主と恋仲になったが、忘れ去られてしまい悲嘆の末身投げした白上姫の伝説が残っている。このステージの中心で手を鳴らせば、その姫が化けたという白竜の鳴き声が聴こえるとのことだ。

どんなものかは、ぜひおいでくださって試してみてくだされ。

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