風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

知らない琴線

「ほお、今月は鳴沢の湯かぁ…。」

2りんかんで無事オイル交換をしていただけたが、相も変わらず雨模様なので近くのスパ銭に避難。月替わりの温泉に、見知った鳴沢の文字があった。

そういえば、宮城は岩出山を出るとき、TMAX乗りのお兄さんに「鳴沢温泉オススメですよ!」っていろいろ教えてもらったのに、結局行かなかったな…。

 

北海道の旅程も見返してみれば、行けなかった場所は多い。

予定通りとはいえ道東には一歩も足を踏み入れていないし、何よりも雨。雨だ。思えば、美瑛あたりからずっと雨に降られ続けている気がする。

後悔といえば後悔だが、苦労したぶん変な思い出にはなった。修行と思えば納得できるだろう。

 

 

 

それでもやっぱり、最後くらいは。

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フェリー乗船は明日の朝。ここにきて、好天に恵まれた。今度は国道36を通る海側経由で、札幌から函館まで一気に下りる。

 

幹線道路を通れば、足元をエンジンが、上体を太陽が暖め、程よく強かな風が着物を揺らす。トラックたちのコンテナが光を反射して、青空にはときたま飛行機が顔を出す。

これは…、この日和はまるで……

「まるでツーリングだな。」

 

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海沿いに出れば、それこそクレヨンで塗りたくったような、単純だが、純粋にきれいだと言える海が眺められ

 

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山あいを走れば、見ているこちらまでエネルギーが漲りそうな、陽光を受けてめきめきと輝く山々が臨める。


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「こんなにきれいだったのか…。」

後悔しないようにと、シールドを上げて、空の端から端まで、山々の隅から隅まで、波の消える刹那まで、目に焼き付けようと瞳を動かす。が、到底見切れるものではなかった。

 

 


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国道5号に差し掛かる交差点。前は、ここをニセコに向けて走っていった。

信号待ちで、山へと向かう自分の残像が見えた気がする。

 

半周だが、ぐるっと回ってきたことになるんだなぁ。

達成感をじわじわと感じ始めると、この晴天はこの雨風の中戦ってきた私への、北海道からの祝福なのでは、と手前勝手に解釈できてきた。

 

 

再びまっすぐな国道5号を走っていると、ランダム再生のウォークマンから例のイージュー★ライダーが流れてきた。今度は奥田民生verだ。

「おっ良い時にかかってきたねぇ。」

思わず、一緒に歌い出す。

 

「何もないな、誰もいないな…快適なスピードで…」

 

「僕らは自由を…、僕らは青春を………」

 

と、サビの辺りで急に目の前に、雫が溜まってきたことに気付く。

「…あっ!?」

 

涙だ。いつの間にか、泣いている。

嘘だぁ。別に言葉にするほど、感動した名シーンやイベントなんかはなかったぞ。

でも、なぜだか下手な歌声は震えて余計下手くそになり、視界の下半分はもう、ゆがんでいた。

 

 

 

泣いた。

走りながら、なぜだかわからないまま。だが、気持ちよく泣いた。

 

多分きっと、これは体が泣いているんだろう。別に心では感動していないが、ここ約二週間、散々苦労した体が、遂にやったぞって、持ち主の意に反して泣いているんだ。

 

胸がスッとした。きっとこれが、嬉し涙っていうんだろうな。人生で初めて流せた。

 

 

 

 

そりゃあ、ラベンダーも見ごろではなかったし。青い池も青天のもとではなかったし。宗谷岬ではずぶ濡れだったけど。

 

「…でも、それもこれもやっぱり。良い思い出。俺だけの、忘れたくない思い出だね。」

 

 

踵を返して、一礼する。

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ありがとう、北海道

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